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春のうたかた  作者: 四季
23/39

記憶:玖

『半次郎に聞いた、追っ手に襲われたそうではないか!無事なのか!?』


城に上がった春隆の元に、橘は閃光の如く駆け寄った。


『血まみれではないか』

『・・・このような姿で申し訳ありません。返り血です、僕は無事に・・・』

『それはよかった!何があったのだ、話してみなさい』


どかと胡座をかいた橘に、春隆は手をついて頭を下げた。額を地面に付けて、はっきりと腹から声を出す。


『・・・橘様、お願いがございます!』

『なんだ、言うてみなさい。顔を上げて』

『ありがとうございます。・・・恐れながら、隣国から逃がしたい家族があるのです』

『・・・ほう。それはまた何故』


春隆は橘の目を見据えて続けた。


『以前お話したように、僕と友は、隣国の暴君によって殺し合いを命じられました』

『・・・そうであったな』

『僕はこの国まで逃げて参りましたが、それを追って友もまた、この国へとやって来ました。かの暴君は、僕が逃げた事により、友に辛い仕打ちを課しました。・・・家族を人質に取られ、僕を斬るまではと最下の位におとしめたのです』

『なんと。そんな事が許されるものか。氏め・・・』

『自然流は殺さずの剣。家族の為とは言え、僕の血で汚すわけにはいかず、・・・友を僕が斬りましたゆえ、知れれば家族もきっとすぐに・・・・・・どうか、その家族をこちらへ逃がす事はできませんでしょうか』

『友とはいえ、そのような目に合わされてなお助けようとするか』

『・・・はい』

『民を国から奪うのは大罪になると知っているな?』

『・・・・・・はい』


橘は、瞬きもせず春隆を見据えていた。あまりの気迫に肩を強張らせる。


『・・・よかろう。その心意気に免じて手を貸そう。そなたには国の命を救われた。命には命で応えようではないか』

『・・・ありがとうございます・・・!』


橘は、ようやくいつも通りの優しげな微笑みを讃えて言った。


『そなたが先導しなさい。人の入らない山を抜けるのだ。護衛をつけよう』

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