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春のうたかた  作者: 四季
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*“おんせん”へ

夕暮れ時になって、春隆は湯屋へと続く坂を登っていた。十数人相手とはいえ子供だ。一太刀もくらってはいないがそれなりに疲れてはいる。というのも、春一番に竹刀を包む布が飛ばされて、子供達と追いかけ回さねばならない事態に陥ったからだ。幸いさほど遠くへは飛ばされずにすんだが、中には川の中間まで取りに行かねばならぬ子も出て、まだ冷たい川の水にどっぷり浸かり込んだ次第である。


「川に浸かった後にあの湯に入るのは二度目か・・・。ふっ、これは染みるだろうな」


半次郎と知り合った時を思い出して春隆はひとりごちた。


「?先生、どうかしましたか」


気が付いた慎太郎が横から覗き込むように見上げてくる。


「べつに・・・」

「先生っ先行ってもいいかっ!?」


春隆の声を遮るように吉之助が甲高い声を上げて、少し前へと駆け抜けた。


「足元に気をつけなさい。半次郎にきちんと挨拶するんだぞ」

「はいはーい!」

「返事は短く一回でよろしい」

「はいっ!ほらっ、行くぞっ」


吉之助が年下の少年達を引き連れて駆けていく。


「元気なものですね」

「・・・お前は、もう少しああいうところがあっても良いと思うぞ」


親のように見守る慎太郎の頭に手を乗せて春隆は言った。


「想い人とかもな」

「べ、べつに僕にはそんな人は・・・」


あからさまに慌てる慎太郎を見てふっと笑って春隆は手を離した。


「あれ、先生?」


突如背後からした声に、二人揃って振り向く。


「ハルさんっ。お仕事お疲れさまです」


ぺこりと下げられる銀白色の髪。春隆の知り合いには一人しかいない。


「天青」

「噂の娘さん、ですか」


慎太郎の探るような眼差しに、千代が笑いながら首を振った。


「天姉やんやで、慎太郎さ。可愛らしい姉さまやろ」

「何で千代さんが誇らしげなんだ」


呆れたように慎太郎に言われ、千代はひとしきり笑うと、目尻を拭ってから言った。


「まあまあ。まずはお湯貰ってきやれな。二人ともさっき川にいてたしょ?」

「確かに、入ってたな。ではお言葉に甘えて温泉に向かうとするか。慎太郎」

「はい」


千代に言われたとおり、大人しく湯殿に足を向ける。


「・・・そうだ。千代」

「なんしょか、先生」

「天青と湯に行ってやってくれるか。温泉、多分初めてなんだ」

「おん、せん?」


隣で首を傾げる天青を見て、千代は合点したように首を振った。


「わかりました、あたしが教えときやしょ」

「頼むよ。じゃあ、行ってくる」


春隆はくるりと背を向けると、ひらひらと手をふってその場を去った。



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