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09. ペケゾーVSネトウヨ

 20X5/09/25 19:16 ID3165

 あいつらマジで頭悪いんだよ

 日本に長いこと住んでるくせに、日本語下手くそ

 この間も『このテブルいいよ』だってww

 テブルじゃなくてテーブルだよ

 これで販売店の店員やってんだぜw

 シューズのことをシュズとか言うし、伸ばして発音するってのができないんだな

 バカだから



 [もういいよ、インドネシアの話は]


 [お前が偉いのは分かったよ

 とっとと海外板でもどこでも好きなとこいって、好きなだけ愚痴ってくれ]



『マスター、

 インドネシア語は日本語のように、母音の長さで意味が異なる言語が基本ないため、インドネシア人の話す日本語には、発音の長さへの意識が低くなるんです。よって、テーブルをテブルと言ったりするんです』


「なるほど…了解」


 カケル、もといペケゾーがID3165に返信をつける。



 20X5/09/25 19:22 ペケゾー

 インドネシア語は基本的に、母音を長く伸ばして意味を区別するという長母音の概念がないから、そういう発言になるんですよ

 一緒の職場で働いていて、どうして相手の事を理解しようとしないんですか



 ID3165が、ただちに反論する。

 午後7時過ぎ…匿名掲示板マルバナのヒキコモリ板で、カケルことペケゾーと

 外国人排斥派のID3165とのレスバトルが始まった。



 20X5/09/25 19:23 ID3165

 はあ~?

 知らねえよ、そんなもん!

 ここは日本だ 日本に住んで日本で働いてんなら、日本に合わせろ!

 日本語話せ! それができないなら、日本から出てけよ!


 [お、ペケゾーいたのか

 カキコねえから、落ちたかと思ったわ]


 [夕飯食ってたのか?

 おれも食ってくるわ いったん落ちる ノシ]



 タイミングがいいのか悪いのか…階下から父親が声をかける。


翔琉カケル、夕飯だぞ」

 続けて母親の声がする。

「…翔琉、たまには降りてらっしゃい」


 ……母さん、店から帰ってたのか。

 カケルはモニター画面を見つめながら、母親の呼びかけを聞き流す。


 母親は近所の飲食店に手伝いに行っている。

 アルバイトとかではなく、本当にただの手伝いだ。勤務時間も適当で給料もお小遣い程度…だが母親は、それに満足していた。

 父親…夫との仲は冷え切っており、家には居たくない。夫と顔を合わせたくない…外に出ていたい。それだけの理由だったので、友人の飲食店で手伝いという名目で暇を潰せるなら、このうえなかった。


 そして二階の子供部屋。

 両親の不仲を16年間見て育った子供のカケルは、両親の呼びかけには一切反応せず、ペケゾーとして、レスバトルの真っ最中だ。



 20X5/09/25 19:27 ペケゾー

 密入国した外国人に出てけは分かりますが、あなたの会社のインドネシア人は

 正規の手続きで入国した人達なんじゃないですか?



 20X5/09/25 19:30 ID3165

 しるかよ

 この間も東京の在留管理局から、インドネシア人が脱走してニュースになったろ

 オレ、ちょうどその現場にいたんだよねえ~

 さすがに脱走したのは、オレの仕事先の奴らじゃねえけど



 ……この書き込みは、チャンスだな。

 戦国武将が、相手陣地の隙を見つけたかのように、カケルが呟く。



 20X5/09/25 19:31 ペケゾー

 へえ…あなた、東京住みなんですか?

 東京出入国在留管理局の近くかな



 20X5/09/25 19:33 ID3165

 東京住みだが、管理局にはデモ活動で行っただけで、そこ住みじゃねえよ

 管理局って港区にあんだぞ

 そんな金持ちじゃねえわ つうか、オレが東京住みだったらなんだよ



 20X5/09/25 19:34 ペケゾー


 いや、東京でインドネシア人が働いてる職場、割り出せるかなあ~

 と思って

 あなた、インドネシア人の人がテーブルをテブルと言ってるって笑ってましたよね?

 こんなんでよく販売店の店員やってんな、って

 つまり都内でインドネシア人が働いている販売店ってことですね?



 20X5/09/25 19:35 ID3165

 ハッカー気取りかよwww

 そうだよ、都内の販売店に勤めてますけど、なにか?

 ほれ、割り出してみろやヒキコモリww



 20X5/09/25 19:35 ペケゾー

 ここかな?

 リサイクルショップLamaラマBaruバル



 秒と待たずに、カケル…もといペケゾーが返信する。

 ストリートビューで拾った、ラマ・バルの画像も一緒に添える。


 チャット状態で返信していた、ID3165の書き込みが止まる。


 ………………


 階下から再び母親の声。

翔琉カケル、今日はグラタンだから電子レンジで温めて食べなさい。ご飯は食べ終えたら、炊飯器のスイッチ、切っといてね」


「…ああ」


 カケルは、階下まで聞こえるか聞こえないかの声で返事をする。

 父親には一切返事をしなかったが、母親には気が向いた時だけ言葉を返した。


 10分後…ID3165からの返信が来る。



 20X5/09/25 19:45 ID3165

 夕飯の準備してたわ

 お前らヒッキーはいいな、ママがなにからなにまで用意してくれてw


 カケルは、自室にあるミニ冷蔵庫からペットボトルのコーラを取り出し、口に流し込みながらID3165の書き込みを読む。この冷蔵庫は母親が買い与えた物だ。



 20X5/09/25 19:46 ID3165

 ラマ・バルって、なんだい?

 ググるとたしかにインドネシア人が働いてるみたいだけどハズレw

 もうちょっと頑張れよ、スーパーハカーさんwwwwwwww




 20X5/09/25 19:47 ペケゾー


 そいつはおかしいな

 あなた、港区には住んでいないって言ったはずだ

 都内でインドネシア人が日本人と一緒に働いている販売店といったら、

 そこのリサイクルショップしかないんだけど



 嘘である。

 調べたわけではないが、都内でインドネシア人が働いている場所など他にもあるだろう。しかしカケルは、" 鎌をかけた ”

 ソース…情報源を出せよ! と言われたら、返信に困るが、もはや相手にそんな余裕はないと踏んだ。

 なぜなら事実だからだ。

 [ソース出せ!]は、あくまで相手の書き込みを疑ってる場合。

 この場合は、もはや疑いようがない。

 もう一度言うが、事実だから。

 事実を突きつけられた相手が思うのは、驚きと不安…! そして、パニック。

 事実、都内のアパートの一室で43歳独身の宮野 健一は、いいようのないパニックに襲われていた。



 [おいおいペケゾーさんよ、どうした

 急に覚醒してんじゃねえか]


 [魔術師と会ったみたいなこと言ってたけど、なにかに目覚めたか?]


 ヒキコモリ板が活気出す。午後7時過ぎのゴールデンタイム。

 ギャラリーが、ぞろぞろと揃い始める。


 しばらくして…ID3165より返信がある。



 20X5/09/25 19:52 ID3165

 オレが仮に、そこのリサイクルショップで働いてたら、なんだったんてんだよ…!!



 どう返信するかと、あれこれ悩んだ末…宮野 健一は、" 仮に働いていたら… "と、仮をつけて逃げを打った。



 20X5/09/25 19:53 ペケゾー

 ラマ・バルの正社員は二人

 一人は名前からして、日本人とインドネシア人のハーフでしょうね

 あなたじゃないな

 もう一人は日本人の方、R・Sさん

 あなたは、RSさんかな?



 カケルことペケゾーは、あえて正社員二人の名前を出さなかった。

 その気になれば、ID3165の本名、宮野健一の名を書き込み、相手を" 即死 "させる事もできたが、それはしなかった。

 なぜなら個人情報の公開は、重大な違法行為となるからだ。こっちが逆に訴えられてしまう場合だってある。

 相手にボロを出させる、それがペケゾーの作戦だった。



 20X5/09/25 19:53 ID3165

 お前、なんでラマ・バルの従業員、死ってんだよ!



 20X5/09/25 19:54 ペケゾー

 そりゃ、知ってますよ

 いやあ、死ってますよw


 おれはヒキ板の魔法使いだからね




 [ヒキ板の魔法使い、キターーーーーー!]


 [マジで魔術師と会って、覚醒したのか!?]



 外野が騒ぎ始め、ID3165は旋律を覚える。



 なんだ、こいつ…マジでハッカー?

 い、いや……魔法使い!?

 宮野はまさに、魔法にかけれらたかのように、呆然とモニター画面を見つめていた。

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