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05. 名前はペケゾー

 20X5/09/25 16:45 ×


 おじいさんに、声かけてみます!

 玄関の扉を開け、外に出ます

 骨は拾っておいてください、先輩方!



 [おい!

 ヒッキーが外に出るとか、正気か!?]


 [よくいった、バッテン!

 お前の偉業はヒキ板の伝説になるだろう]


 [だからバッテンでもバツでもねえぞ

 カケルだってよ 計算式の×

 おい×さんよ、コテをバツ男にでも変えろや

 みんなが間違い杉]





 20X5/09/25 16:49 ペケゾー


 変えました

 間違えられても嫌ではないんですが、いちいち訂正するの面倒なので…

 これからはペケゾーでお願いします



 [バツ男って言われたのに、なんでペケゾーなんだよw]



 20X5/09/25 16:52 ペケゾー


 いや、バツもペケも意味一緒だし…

 こっちの方がいいかなあ~~と思って



 [>意味一緒だし…


 ADHDっぽいな

 上司から指示されても、「意味同じじゃないですか」と

 別の事して怒られるタイプ]


 [ペケゾーは集団生活苦手そう

 まあ、ヒキ板にくるヒキコモリだしな]



 20X5/09/25 16:57 ペケゾー


 たしかに人とのコミュニケーション駄目ですね

 では、ペケゾー二等兵

 行って来ます!


 そう書き込むとペケゾー…もとい神楽坂翔琉カグラザカカケル

 自室を出、階段を下りる。

 降りた先にあるのは、異世界への入り口となる扉…。


 GENKAN


 一般的に言うところの玄関である。


 ……最後に外に出たのは…8月の深夜だったろうか。

 夜中だから誰にも会わないだろうと思って、深夜の散歩に出かけたが

 世間では夏休み。

 クラスメイト…それもリア充の男女数人と偶然出会ってしまい、大慌てで逃げ帰った夏の日……。

 自宅に向かって走る後ろでクラスメイト達の話し声が聞こえたが、なにを喋っていたのかは聞き取れないまま家に駆けこんだ。

 それ以来、カケルの中に" 外に出る "という選択肢は無くなっていた。


「にゃ~~」


 一階に降りてきたカケルに、神楽坂家の飼い猫、ナツがすり寄ってくる。

 黒い毛並みの日本猫…ようするに黒猫だ。

 カケルは、「よしよし」とナツの頭を撫でる。

 家を空けている父親や母親より、引きこもっているカケルのほうが

 ナツと一緒にいる時間が多かった。

 懐いてくるナツを可愛がりたかったが、今はそうしてる場合ではない。

 老人を助けに外に出なければいけないわけだが……。



 ひょっとして今は…下校時間?

 やべえ、バッティングしないだろうなあ…。

 そんな不安な感情を抱きながら、サンダルを履く…はいいが、身だしなみは大丈夫かと

 サンダルを脱いで廊下に戻り、鏡を見る。

 そこにいるのは、伸びまくった長い髪の思春期の少年の顔。

 デート前の女の子のように、髪を何度も触って確認し、GENMANへと舞い戻る。


 再びサンダルを履き、GENMANへの扉をそっと開ける…。

 隙間から、倒れている老人の姿が見えた。


 ………あれ…?

 あのおじいさんって……。



 ヴウウゥーーーン!



 スマホが震えた。 バイブ機能が発動したようだ。

 返信がある。



 [おいペケゾー、書き込みねえぞ

 外出るの、怖気づいたか?]


 [無理しなくていいよ 外出れないなら電話するとか、それも無理なら親に言うとかでもいいと思う]



 20X5/09/25 17:16 ペケゾー


 みんなありがと

 大丈夫、頑張る!

 今玄関で外を見てるけど、なんか倒れてる人

 外国人っぽい

 帽子被ってるから顔はわかんないけど、肌が黒っぽい



 [まさかの外人w

 日本語喋れなかったら、やばいですね]


 [だからさっきの軽自動車、見て見ぬふりしたんじゃね?]



 20X5/09/25 17:20 ペケゾー


 ああああああ、そうか

 やばい! 言葉通じなかったら詰む!

 どうしよ



 [外国人なんてほっとけよ

 肌の色が黒いとか、どうせ不法移民だろ

 助けなくていいわ]


 [不法移民かどうかなんて、まだ決まっていないのにそれは酷い

 そもそも肌が黒いから不法移民って、普通に差別ですね

 というか、たとえ不法移民でもここは助けるべきだと思う

 外、雨降ってるっていうし]


 [はあ?なんで犯罪者を助けなきゃいけないんだよ!

 日本の治安、見出しまくってんのによお

 プロ左翼は引っ込んでろ!]


 [別に左翼じゃないし…

 政治的思想は関係ないですよ

 足ケガしてる老人を助けましょうって言ってるだけです

 あと見出しまくるってなんですか?乱しまくるでしょう?

 自分の文章よく確認してから登校してください]


「おめえも誤変換してんじゃねえか!!wwwwww

 なにが登校だwww

 ランドセル背負って、ひまわり学級にでも登校しろや!]



 やべえ…なんか荒れてきた……。



 20X5/09/25 17:32 ペケゾー


 とりあえず、声かけてみます!

 言葉通じなかったら、AI翻訳とか使ってみます



 [頑張れ]


 [いいよ、外人なんてほっとけ!

 あいつら、なにかっつうと差別差別って、うぜえし]



 カケルは扉を開け、外へと一歩踏み出す…。

 黒猫のナツが、いってらっしゃいとばかりに

「にゃ~~」とカケルに向かって鳴く。


 ……が、傘を取りにまた玄関に戻った。

 鏡の前に戻った時といい、玄関周辺で行ったり来たり……。

 第三者が見ていたら、なにやってんだと思うだろう。

 半年近く引きこもった人間のおかしな行動…。

 そんなカケルを黒猫のナツが不思議そうに見上げる。


 傘を手に取ると、今度こそ外へと足を踏み出し、老人に声をかける。



「あ、あの…こんにちは

 …雨ですね」


 カケルは玄関前に倒れこんでいる老人に声をかける。

 そして声をかけた後、自分が言った言葉がどれだけおかしいか察してしまう。


 雨ですねって、そりゃ子供でも分かるだろう…。


 2X25年の5月から引きこもり生活を始めて、約4ヶ月。

 その間…父親とは口を利かず、母親とも「うん」「ああ…」と返答のみ。

 人とまともに会話しなければ、一年も経たずにここまで会話が不器用になるのかと

 カケルは絶望した。


 老人が顔をあげる。

 一目で彼が黒人だと分かった。



 やばい…日本語、通じるのか?



「ああ…君、ここの家の人?

 すまんね、こんなところで倒れちゃって…。

 足を挫いたみたいだ」


 …なんだ、普通に日本語喋れる人じゃん。

 っていうか、全然違和感ない発音。

 黒人だけど、日本生まれの日本人なんだろうか。


 普通にコミュニケーションが取れる事にカケルは安堵した。


 お…落ち着け、おれ。

 大丈夫、数か月前までは学校でみんなと話せてたんだ。

 おじいさんと会話する事だってできるさ…!



「えっと…お名前は……。

 どこに住んでる方でしょうか?

 ご、ごご家族に連絡しましょうか?」


「ん…?

 名前は、カマリ・橋本。


 魔術師だ」



 ……………………は!?

 ま…魔術師……?



 やばい………日本語のコミュニケーションが取れない人だ、これ…。

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