第五幕:名探偵の再起動
やあ、君。自分のプライドを考えた事はあるかい?これだけは負けないというものがあれば、どんな時にもマウントがとれる。ホームズにとっては観察と推理だ。それじゃあーー君は?
第四幕では、休める場所を求めて村の中に入ったら、そこでも侮辱されたアーサーを見た。
ーー彼の神経質で繊細な部分は耐えられるのだろうか。
物語は進んでいく。
ーー時間は三日すぎていた。
牧師の逮捕された息子の部屋は、二階にあった。
鉄製ベッドと小さな机が並ぶ簡素な空間だ。窓からは牧場が見えた。
ベッドの上では、アーサーが顔を青白くさせて仰向けに横たわっていた。
部屋には暖炉はない。
彼はヒゲを震わせて、怒りの爆発をおさえていた。
部屋の扉が軽く開けられて、黒髪短髪の男が顔だけを覗かせていた。
「ーーせ、先生、あ、お身体は大丈夫ですか?」と吃りながらホームズは言った。
「大丈夫だ、ホームズ。私の知性は揺らぐことはない。それよりも、現場の観察はどうしたーー?」
「え、ええ。先生が、に、睨んだとおり、じ、地面を見に行きましたーー」
「見たのは地面だけか?他は?」
「え、ええ?そのあまり、見れてなかったかもーーすみませんーー」
「なんて事だーー私がいたら、ちゃんと指示をだすのに。このマヌケに任せなきゃいけないなんて!」
アーサーは掛け布団を両手で掴んだ。
「ああ、私はこのまま死ぬかもしれん。
ちょうど、神の家もあるーーホームズ!まさに劇的な終わりだ。事件を追って、ここで終わるーー」
アーサーは、咳き込んだ。
「もしかして、結核かもしれないーー」
アーサーは呟く。それを聞いてホームズは引きつった顔をした。
彼はゆっくりと扉を閉めた。
アーサーは、それすらムカついた。
それから、三日すぎてアーサーの体調は戻った。だが、彼がこの村で侮辱された事実は拭えなかった。
アーサーは牧師館のダイニングルームで席に座り、パンを何個も食べていた。なぜかって?
食べる事しかやる事がなかったからだ。
「ーーホームズ。事件について確認したい。この呪われた村で何が起こったのか、君の口から聞きたい。
これは、君がちゃんと事件を理解しているかの確認でもあるーー」
アーサーの向かいあうように、
彼の前には牧師とホームズがいた。
牧師とホームズは互いに顔を見回した。二人ともアーサーが家に帰ると思ってたんだ。
「君たち、事件を解決する準備はできてるか?ーー私はできてるぞ!」
(こうして、第五幕は探偵の宣言で幕を閉じる。)




