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ファウスト〜迷惑探偵作家の幻視〜  作者: ヨハン•G•ファウスト


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3/11

第三幕:探偵の目と警察の目

やあ、君。名探偵は現実に必要か、考えた事はある?

すでに法を守る仕組みがあるのに、一般人が首を突っ込んでいいモノだろうか?

たとえ頭が良すぎたとしてもさーー。


第二幕では、気弱なホームズと作家アーサーの関係を説明した。


彼らは事件の匂いを嗅ぎとると、

急いでイギリスのサリー州ハインドヘッドの屋敷をでて、ロンドンへ向かった。そこから長時間の汽車での旅をした。村に到着すると、彼らはスタッフォードシャー警察署にむかった。


いきなりではなかった。

アーサーはホームズを使って、事件担当者に電報を打たせたからだ。

『私はコナンドイルだ。怪事件の情報を求める。警察は協力しろ』

こんな感じの内容だった。

ホームズはアーサーがよこしたメモの内容を見て、苦笑してた。

一瞬だけ嘲笑の影が、彼の顔に横切り消えた。


ーーアーサーには自信があった。

事件を解決する自信と、彼の名声が

警察を跪かせることをーー。

「頭が飾りでなければ、彼らは話を聞いてくれる」と汽車の中でアーサーは何度もホームズに同じ話をした。

アーサーは、不安だったかもしれない。


さて、彼らが案内された部屋は、

警察署の薄暗い取調室だった。

ホームズはアーサーから、

部屋の外で待つように指示された。

ホームズはうなづき、彼の後ろ姿を黙って見送った。


外は霧雨がふっていた。

取り調べ室には暖炉なんてのはなかったから、すごく寒かった。

アーサーは、こんな部屋を用意した男をバカだと思っていた。

「早く情報をよこせ、このマヌケ」と彼は目の前の男に怒鳴りたかった。


男は灰色の短髪に灰色の目をした厳格そうな男だった。警察の制服なのに、彼がきたら軍服に見えた。

これから戦いにくる男の目だった。

彼はアーサーにこう言った。

「私がここで、あなたにあったのは他でもない。あなたに敬意を見せたかった。

事件の情報をお求めのようだが、自分の頭で想像したまえ。

以上だ。次回作を楽しみにしている。

それでは、お引き取り願おうーー。」

アーサーは、口をあんぐり開けた。

次の瞬間、アーサーの顔は赤くなった。

「この事件には、もっと隠された何かがあるーー」と彼はしぼりだすように声をだした。

彼の頭に乗ってる髪がーーパラパラとうごいた。

「君たちの目では気づかないものだーー君たちには分からない探偵の目だーーなにせ、私はコナン・ドイルだ。探偵の生みの親だ。ホームズを作ったーー」

「わかりました、ドイルさん」と男は微笑んだ。少しだけ口調が優しくなった。

「たしかに我々は探偵の目はわかりません。ーーですが、あなたも警察当局の目はご存じないでしょう。

泊まるところがお決まりでしたら、

今から休んだらどうですか?」

男は手帳に何かを書き込んでいた。

たぶん、やる事があるんだ。

この話し合いよりもーー。

「だいぶ疲れているように見える。

あの村には観光と呼べるモノはない。

せいぜい、煙突の煙だけーー」

男は手帳を閉じた。


「休めるとこがなければ、

あなたが横になれる場所を、当局が用意しようーー」

この言葉を聞いて、アーサーは立ち上がると部屋から出ていった。

彼らは大して自己紹介もしなかった。

だって二人とも相手をバカだと思っていたから。


さて、アーサーが取り調べ室から出ると、ホームズがいなかった。

彼は目を見開いて辺りを見回した。

「あのマヌケ!ここにいろと言ったのに!」とアーサーは少し大きな声で文句を言った。

しばらくして、ホームズが縮こまりながら廊下の向こうから歩いてきた。


それから彼は、吃りながらアーサーに話しかけてきた。

「せ、先生。あの休めるところを手配して、お、おきました。

あの、事件関係の、うちに泊まらせてもらいますーー」

「なに?なんだ、そこは?はっきりと言えーー!」とアーサーは怒鳴った。

「もしかして、村にはホテルはないのか?」と彼はホームズにたずねた。

「あ、あの村にーーホテルはありませんーーだ、誰も興味のない村に、宿泊施設は、ひ、必要ないので」

ーーアーサーの顔が引きつった。

ーーもう帰りたかった。


あの太陽の光がいっぱいの、

彼の屋敷の居間にーー。


彼の背後で、取り調べ室から男が出てきた。アーサーをイヤなものでも見るかのような、侮蔑の目で見てから、去っていく。


(こうして、第三幕は侮蔑の目により幕を閉じる。)

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