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画力Fランクでも創造SSS!自称天才絵師の独創的すぎる異世界ライフ

作者: 朧月るの

 青い空、緑の草原、そして頬を撫でる爽やかな風。


「素晴らしいわ!これぞ芸術家が求めていた理想郷ね!」


 小林あかりは両手を広げて深呼吸した。十八歳、元美術部部長。ついさっきまで日本の高校にいたはずなのに、今は見知らぬ異世界にいる。トラックに轢かれた記憶はあるが、そんな些細なことはどうでもいい。


 重要なのは、愛用のスケッチブックと鉛筆が手元にあることだ。


「きっと神様が私の才能を認めて、この美しい世界で絵を描けと導いてくださったのね」


 あかりは迷いなくスケッチブックを開いた。まずは腹ごしらえが必要だろう。美味しそうなパンを描いてみよう。


 彼女が描いたパンは、楕円というより不定形の物体に近かった。しかし本人は満足そうに頷く。


「うん、躍動感のある前衛的なパンが描けたわ。ピカソも真っ青ね」


 その瞬間、絵がぼんやりと光を放った。次の瞬間、スケッチブックから本物のパンが飛び出してくる。ただし、絵と全く同じ歪んだ形をしたパンが。


「あら」


 あかりは特に驚いた様子もなく、転がったパンを拾い上げた。


「やっぱりね。私ほどの画力になると、絵に魂が宿るのよ。これが本当の芸術というものね」


 彼女はパンを一口かじる。味は普通だったが、見た目は相変わらず謎の物体だった。


「この世界では私の絵が現実になるのね。素晴らしいわ!これでようやく世界が私の才能に追いついたってわけ」


 遠くから人の声が聞こえてくる。あかりは慌てて立ち上がり、声のする方へと歩いていった。


 現れたのは四人組の冒険者パーティだった。金髪の青年が剣を腰に下げ、大柄な戦士が斧を担いでいる。白いローブを着た魔法使いと、美しいエルフの魔法使いも一緒だ。


「あの、こんにちは!」あかりは元気よく手を振る。「私、小林あかり。天才画家よ」


「天才画家?」金髪の青年レオンが首をかしげる。「僕はレオン。こちらは戦士のガルド、魔法使いのマリア、魔法使いのエルフィだ」


「よろしく頼む」ガルドが人懐っこく笑いかける。


「ところで、そのパンは?」マリアが不思議そうに見つめる。


「これ?私の最新作よ」あかりは誇らしげに歪んだパンを掲げた。「見て、この芸術的なフォルム。従来のパンの概念を打ち破る革新的なデザインでしょう?」


 四人は複雑な表情を浮かべた。


「革新的……確かに見たことない形だな」ガルドが困惑気味に呟く。


「それより君、どこから来たんだい?」レオンが話題を変えようとする。


「日本よ。でもそんなことより、見て!私の真の力をお見せするわ!」


 あかりは再びスケッチブックを開き、今度は何かを描き始めた。彼女なりには薔薇のつもりのようだが、客観的に見ると触手のような不気味な物体だった。


「美しい薔薇を描いたわ。愛と情熱の象徴よ」


 絵が光ると、地面から本当に何かが生えてきた。ただし、それが植物なのか、生き物なのか、判別不能な奇怪な物体が。


「うわあ!」マリアが驚いて後ろに下がる。


「なんだこれは!植物か?!」ガルドも武器に手をかけた。


「創造系の魔法ね」エルフィが戦慄しながら観察する。「でも、これは……花なの?」


「ええ、これは薔薇よ」あかりがきっぱりと言い切る。「従来の薔薇に囚われない、自由な表現なの。芸術とはそういうものよ」


「どこが薔薇なんだ……」ガルドが小声で呟く。


「でも、すごい魔力を感じるわ」エルフィが目を見開く。「この魔力量は……世界でも最高レベルじゃないかしら?」


 奇怪な植物は風に揺れて、まるで踊っているように見えた。


「すごい能力だな」レオンが感心したような、困ったような顔をする。「君、冒険者にならないか?」


「冒険者?」


「その能力があれば、きっと役に立つ」


 あかりの目が輝いた。「素晴らしい提案ね!私の芸術を世界に広めるチャンスだわ」


「この魔力量は尋常じゃない」エルフィが震える。「創造系の魔法でここまでの魔力を感じるなんて」


「魔法使い?」あかりが首をかしげる。「私は画家よ。でも確かに、私の芸術には特別な力が宿っているの」


 こうして、あかりは冒険者として登録することになった。


 翌日、パーティは森の奥にあるゴブリンの巣を攻略していた。


「いいこと、アカリ」マリアが心配そうに忠告する。「戦闘中は安全な場所にいて、絵は描かないでちょうだい」


「大丈夫よ。私の芸術は平和的だから」


 戦闘が始まると、レオンたちは手慣れた連携でゴブリンたちと戦い始めた。あかりは後方から戦闘の様子を眺めていたが、一匹のゴブリンが彼女に向かってくるのに気づく。


「あら、モデルが来てくれたのね」


 あかりは慌てることなくスケッチブックを開いた。


「ゴブリンさん、少し待ってちょうだい。今、あなたを捕まえる美しい罠を描いているから」


 鉛筆を走らせながら、あかりは集中する。「優雅な落とし穴」のイメージで線を引いていくが、客観的に見れば、穴なのか溝なのか、それとも全く別の何かなのか、まったく判別できない謎の図形が紙面に現れていく。


「できたわ!」


 絵が光ると、ゴブリンの足元に本当に何かが出現した。地面に現れたそれは、やはり穴とも溝ともつかない、説明不可能な空間だった。ゴブリンは「ゴブ?」と困惑の声を上げながら、その謎の空間に足を取られ、身動きが取れなくなってしまう。


「やったわ!完璧な芸術的罠ね」


「アカリ!今のは何だ!」レオンが戦いながら振り返る。


「芸術よ。私の絵に込められた美意識が現実となったの」


「美意識って、あの穴が?」ガルドが信じられない様子だ。


 戦闘後、パーティは円陣を組んで座り込んだ。汗を拭いながら、みんなであかりを囲んで話し合いを始める。


「つまり」レオンが息を整えながら確認する。「君の絵は全部現実になるということかい?」


「そうよ」あかりは涼しい顔で答える。「私の芸術的感性が具現化されるの。でも誰でもできるわけじゃないのよ。高度な画力と豊かな想像力が必要なの」


 四人は互いに視線を交わした。彼らの頭の中には、先ほど見た「優雅な落とし穴」の記憶が鮮明に残っている。あれを高度な画力と呼んでいいものかどうか……。


「なあアカリ」ガルドが遠慮がちに口を開く。汗で濡れた髪を掻きながら、慎重に言葉を選ぶ。「その、君の絵って……」


「どう?素晴らしいでしょう?」あかりの目が期待に輝く。


「ああ、うん……とても個性的だな」ガルドは優しい笑顔を浮かべた。


「でも効果は確実ね」エルフィが杖を膝に置きながら冷静に分析する。「あの罠は確実にゴブリンを無力化した」


「そうでしょう?」あかりが嬉しそうに手を叩く。「芸術の力は偉大なのよ。そうだわ!」


 突然、あかりが立ち上がった。


「みんなの装備を新調してあげる!私の芸術で、最高にカッコいい武器と防具を作ってあげるわ」


 四人は互いに顔を見合わせた。あかりの絵がどんなものか、彼らは既に知っている。


「え、えーっと……」レオンが困ったような笑顔を浮かべる。


「装備って、その……」ガルドも言葉を濁す。


「大丈夫よ!私の芸術的センスに任せて」あかりの目が輝いている。「きっと素晴らしい作品ができるわ」


「あ、ありがとう……」マリアが苦笑いを浮かべながら答える。


 陽が傾き始めた頃、あかりは既に制作意欲に燃えていた。


 その夜、宿屋の一室で、あかりは夜通し絵を描き続けた。ろうそくの灯りの下、彼女は集中して鉛筆を走らせる。レオンの剣、ガルドの斧、マリアの杖、エルフィのローブ。一つ一つに彼女なりの美意識を込めて、丁寧に仕上げていく。


 レオンの剣は刀身がくねくねと波打っていた。あかり曰く「流麗な波を表現した芸術的な剣」らしい。


 ガルドの斧は刃の部分が三つに分かれて、まるで花のような形をしていた。「力強さの中にも優美さを」というコンセプトだそうだ。


 マリアの杖は先端が螺旋状にねじれて、見る者を目眩させる複雑な形だった。「神秘的な美しさを追求したの」とあかりは説明する。


 エルフィのローブは、虹色のパッチワークのような派手な色合いになっていた。「自然の多様性を表現したのよ」


「これで……戦えるのか?」ガルドが自分の花斧を見つめて呟く。


「大丈夫よ!私の芸術に込められた情熱が、きっとあなたたちを勝利に導くわ」


 翌日の戦闘で、四人は驚愕することになった。見た目はともかく、あかりの描いた装備は従来のものより遥かに高性能だったのだ。


「軽い!そして切れ味も抜群だ!」レオンが波打つ剣を振り回す。「この波形が空気抵抗を減らしてるのか?」


「この花型の刃、複数の角度から攻撃できるぞ」ガルドも花斧に満足している。「三方向同時攻撃が可能だ」


「杖の螺旋構造が魔力を増幅してるわ」エルフィが驚く。「こんな理論、魔法学校で習ったことないけど、実際に効果が出てる」


「ローブの色彩パターンが魔法防御の波長を乱してるのね」マリアも感心していた。「多重防御効果が生まれてる」


「でしょう?」あかりが得意げに胸を張る。「私の独創的なデザインが、従来の武器防具の限界を超えたのよ。誰も思いつかない形だからこそ、新しい可能性が生まれるの」


 数週間が経ち、パーティは急速に有名になっていた。「異世界最強の芸術絵師パーティ」として、冒険者ギルドでも話題になっている。


「アカリの装備で勝てない敵はいないな」ある日の夕食時、ガルドが満足そうに言った。


「彼女の独創的な発想は、既存の戦術を根底から覆すわ」エルフィも認めざるを得ない。


「でも」マリアが声を潜めて付け加える。「あの子、自分の絵が実際どう見えてるか、全然気づいてないわよね」


「しーっ」レオンが慌てて制止する。「本人が幸せそうだから、それでいいじゃないか」


 そんなある日、ギルドの掲示板に一枚の依頼書が張り出された。それを見たギルドマスターの顔が青ざめる。


「魔王討伐……ついに来たか」


 依頼の報酬は莫大だった。しかし、これまで挑戦した冒険者は誰一人として帰ってきていない。


「魔王か……」レオンが依頼書を見つめながら呟く。


「やるのか?」ガルドが重々しく問いかける。


 四人が迷っていると、あかりがひょっこりと現れた。


「何を見てるの?」


「魔王討伐の依頼だよ」レオンが説明する。


 あかりの目が輝いた。


「素晴らしいじゃない!私の芸術を最大レベルの敵に披露する絶好の機会ね」


「でもアカリ、魔王は危険すぎる」マリアが心配そうに言う。


「大丈夫よ!」あかりが自信満々に宣言する。「私が魔王を倒す最高の芸術作品を描いてあげるわ。きっと魔王も私の芸術の美しさに感動して、改心してくれるはずよ」


 四人は顔を見合わせた。あかりの能力は確かに強力だが、相手は魔王である。しかし、彼女の自信に満ちた笑顔を見ていると、なんとなく大丈夫な気がしてくるから不思議だった。


「分かった」レオンが決意を固める。「やってみよう」


 三日後、一行は魔王城へと向かった。


 城への道のりは険しく、数々の魔物が待ち受けていたが、あかりの「芸術的な罠」と改良装備のおかげで、比較的スムーズに進むことができた。ただし、あかりが描く罠はその都度予想外の形状をしており、時には敵だけでなく味方も困惑させることがあった。


「あかり、今度はもう少し分かりやすい罠を……」


「芸術に妥協は禁物よ、レオン」


 そんな会話を繰り返しながら、ついに魔王城の門前に到達した。


 巨大な黒い城が、不気味にそびえ立っている。城門は既に開かれており、まるで彼らを招き入れるかのようだった。


「罠かもしれない」エルフィが警戒する。


「でも、引き返すわけにはいかないわね」マリアが杖を握り直す。


「行こう」レオンが剣の柄に手を置く。


 城の中は予想以上に静かだった。廊下を歩く足音だけが、石の壁に反響している。魔物の気配もなく、まるで彼らを玉座の間へと誘導しているかのようだった。


 そして遂に、彼らは最深部の玉座の間へと辿り着く。


 巨大な扉がゆっくりと開かれると、そこには魔王が座っていた。身長は三メートルを超え、漆黒の鎧に身を包んでいる。頭には禍々しい角が生え、赤い目が不気味に光っていた。


「ふははは」魔王の笑い声が玉座の間に響く。「また愚かな人間どもが来たか。今度は何人だ?」


「魔王よ!」


 突然、あかりが前に出た。四人が慌てて止めようとしたが、彼女は構わず魔王の前まで歩いていく。


「私は天才画家、田中あかりよ。あなたに芸術の素晴らしさを教えてあげるわ」


「芸術だと?」魔王が玉座から身を乗り出す。「馬鹿馬鹿しい。貴様らも他の冒険者と同じく、この場で……」


「待って!」あかりが手を上げる。「まずは私の作品を見てからでも遅くないでしょう?芸術を理解すれば、きっとあなたの心も変わるはずよ」


 魔王は興味深そうにあかりを見下ろした。


「ほう……面白い小娘だ。では見せてみろ、その『芸術』とやらを」


 あかりは嬉しそうにスケッチブックを開いた。彼女は一心不乱に鉛筆を走らせ始める。今度は「魔王を倒す究極の武器」をイメージしていた。彼女の頭の中では、神々しい光を放つ聖剣が浮かんでいる。


 しかし、紙の上に現れていくのは、直線とも曲線ともつかない謎の線の集合体だった。どこが刀身で、どこが柄なのか、そもそも剣なのかどうかさえ判別できない。


「できたわ!」あかりが満足そうに言う。「究極の聖剣よ!神々しいまでに美しいでしょう?」


 魔王は首を伸ばしてその絵を見た。そして、その瞬間……。


「これは……」


 魔王の表情が固まった。千年以上生きてきた魔王でも、これまでに見たことのない物体がそこに描かれていたのだ。


「聖剣よ、現れなさい!」


 あかりが絵を掲げると、いつものように光が放たれた。そして空中に、巨大な何かが出現する。


 それは確かに武器らしきものだった。しかし、聖剣と呼ぶには余りにも独創的すぎる形状をしていた。刀身らしき部分はくねくねと曲がり、柄らしき部分は螺旋を描いている。全体が虹色に輝いており、見る角度によって形が変わって見える不思議な物体だった。


「これは……何だ?」魔王が呟く。


「究極の聖剣よ」あかりが誇らしげに答える。「どう?美しいでしょう?」


 魔王は謎の武器を見つめながら、完全に思考停止していた。千年以上の長い間、数多くの勇者たちと戦ってきた。剣、槍、斧、弓矢、あらゆる武器を見てきたが、これほど理解不能な物体は初めてだった。


「わ、わからん……」魔王が震え声で呟く。「これは一体……武器なのか?装飾品なのか?それとも……」


「芸術よ」あかりがきっぱりと言い切る。「純粋なる芸術の結晶なの」


「芸術……」魔王がその言葉を反復する。


 その時、謎の武器がゆっくりと回転を始めた。虹色の光がキラキラと反射し、玉座の間全体を幻想的に照らし出す。


「うつくしい……」


 思わず魔王の口から言葉が漏れた。確かにそれは美しかった。意味不明で、理解不能で、前例のない物体だったが、不思議な魅力があった。


「でしょう?」あかりが嬉しそうに微笑む。「芸術に悪も善もないの。ただ美しいものは美しい。それだけよ」


 魔王は魔王城を築いて以来、初めて心が動かされていた。これまでの人生で感じたことのない、新しい感情が胸の奥から湧き上がってくる。


「これが……芸術なのか……」


「そうよ。あなたも悪事なんてやめて、芸術の道に進みなさい」あかりが優しく提案する。


「芸術……」魔王が謎の武器を見つめ続ける。「私も……このような美しいものを創れるのか?」


「もちろんよ。芸術に才能は関係ないの」あかりが胸を張る。「まあ、私レベルの天才的センスは滅多にいないけれど、努力すれば私の次くらいの画力にはなれるはずよ。大切なのは、美しいものを美しいと感じる心よ」


 レオンたちは、この予想外の展開に呆然としていた。まさか魔王が芸術談議を始めるとは思わなかった。


「よし」エルフィが小声で仲間たちに囁く。「この隙に封印魔法を……」


「ダメよ!」あかりが振り返って制止する。「芸術に感動してくださってるのに、そんなことしちゃダメ」


「でもアカリ、相手は魔王よ」


「芸術に悪も善もないの」あかりがきっぱりと言う。「美しいものに感動する心があるなら、きっと分かり合えるわ」


 魔王はゆっくりと玉座から立ち上がった。そして、あかりの前にひざまずく。


「教えてくれ」魔王が頭を下げる。「私にも、そのような美しいものが創れるのか?」


 あかりは嬉しそうに微笑んだ。


「もちろんよ!芸術は誰でも始められるの。大切なのは美しいものを美しいと感じる心よ。あなたにはその心があるもの」


「本当か……」魔王の声に希望が宿る。


「でも」あかりが指を立てる。「一つだけお願いがあるの。今度から、もっと建設的なことに時間を使いましょう?破壊より創造の方が、ずっと素晴らしいものよ」


「約束する」魔王が即答する。「この感動を忘れることはできない」


 こうして、史上初めて「芸術」によって改心した魔王が誕生した。


「やったわ!私の芸術が世界を救ったのね」あかりが満足そうに言う。


「ああ、君の『芸術』のおかげだよ」レオンが複雑な笑みを浮かべる。


 帰り道、エルフィがあかりに話しかけた。


「アカリ、一つ聞きたいことがあるの」


「何かしら?」


「君は自分の絵が……その、少し独創的すぎるとは思わない?」


「独創的?当然よ」あかりがキラキラした目で答える。「芸術家は常に新しい表現を追求するものよ。みんなと同じものを描いていては、芸術とは言えないわ」


「そう……うん、確かにそうね」


 エルフィは苦笑いを浮かべた。あかりの絵が客観的には下手だということを、本人に伝える勇気は誰にもなかった。


 しかし、彼女の「独創性」が数々の奇跡を起こしてきたのも事実だ。そして何より、あかりの絵に込められた純粋な情熱が、確実に仲間たちの心を温めていた。


「次は何を描こうかしら」あかりがスケッチブックを見つめる。「今度は平和の象徴として、美しい鳩を描きましょう」


 四人は一瞬青ざめた。あかりの描く鳩がどんな姿になるか、想像するのも恐ろしい。


「あ、アカリ」マリアが慌てて止める。「鳩はまた今度にしましょう?」


「そうね。まずは新しい冒険の準備をしなくちゃ」


 あかりは嬉しそうにスケッチブックを閉じた。彼女の異世界での冒険は、まだまだ始まったばかりだ。


 そして今日も、世界のどこかで彼女の「芸術作品」が新たな奇跡を起こしている。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

面白かったら☆評価してくださると、作者が喜びの舞を踊ります。

読者の皆様、本当にありがとうございました!!!!!!

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