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アカ色に染まれ  作者: Suna-chan
第1章 『僕の普段の日常が終わる。』
3/3

3話 僕の普段の日常が終わる。③

3話 僕の普段の日常が終わる。③

 「それで先生、本題は・・・?」

 そう、鰭ヶ崎は本題を切り出した。白井先生が真面目な表情で話しだした。

 「実はだな・・・。鰭ヶ崎、お前に頼みたいことがある。」

 何だろう。本当に何を頼まれるのか。不安でしかない。

 「稲毛は、実はこの学校に転校してくるんだ」

 「そこで、お前に稲毛の面倒を見てもらいたい」

 ・・・え?

 稲毛って、今までこの学校の生徒じゃなかったのか?

 てか、面倒を見るって何?何をするんだ?

 こんな真面目そうな生徒の面倒を見る必要はあるのか?

 「先生。俺が稲毛さんの面倒を見るって・・・?」

 鰭ヶ崎が疑問を払拭(ふっしょく)するように質問した。

 白井先生は少し黙りつつも、覚悟を決めたような趣でゆっくりと口を開いた。

 「実は、稲毛は前の学校でいじめにあっていたんだ・・・」

 「いじめ・・・」

 聞いてはいけない領域の話を掘ってしまったような気がした。

 胸の中で何かがざわつく。今まで知らなかった現実が目の前に突きつけられるような、そんな感覚に襲われた。

 誰からも言葉が出ない静かな空気の中で、稲毛がゆっくり口を開けた。

 「先生、私のことは何も気にしないでください。」

 「私。一人でも大丈夫だから。」

 「なので、先生。鰭ヶ崎君の件は大丈夫です・・・」

 稲毛 好羽からの言葉はどこからか寂しそうで、悲しそうで。

 その言葉は、無力感を抱えた夕暮れのように感じた。

 目の前にいるのは、ただの転校生ではない。

 どこか稲毛は誰かに助けを求めているような気がした。

 それは近しい友人などではなく、この状況を打開できる人間に・・・。

 これは何故、僕なのか分からないがもし、稲毛 好羽は誰かに助けを本当に求めていたら?

 今でも稲毛の目の奥に宿る、何かを隠すような痛み。どこか苦しそうで・・・。

 そう考えながら、鰭ヶ崎はふと自分の中で何かが無意識のうちに動き出すのを感じた。

 「分かった・・・」

 思わず口を開いた自分に驚きながらも、鰭ヶ崎は続けた。

 「俺が面倒を見るって、どうすればいいのか分からないけど、できる限りのことはしたいと思う・・・」

 稲毛は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに小さくうなずいた。

 その顔には、ほんの少しだけ安堵したような表情が浮かび、うっすらと笑みが見えたように感じた。

 「ありがとう。鰭ヶ崎君。」

 稲毛の声は、どこかほっとしたような響きを帯び、同時に少しだけ力強さも感じられた。

 なんだろう。胸の奥に広がる、微かな温かさと、これから何かが始まるような曖昧な気持ちは。

 自分の言葉が、ほんの少しでも彼女の力になれたのだろうか。

 そう思うと、不思議と嬉しさが込み上げてきた。

 それは、彼の心の奥の片隅に小さな光が差し込んだ瞬間のようだった。

 そう、鰭ヶ崎が余韻に浸っていると、白井先生がまるで温かな眼差しでこっちを見ていた。

 「さて、これからどうする?一旦話は終わったが・・・。」

 白井先生は少し困ったような表情を見せ考え込むような素振りを見せた。

 「んー・・・」

 しばらく沈黙した後、先生はぽんと手を打ち、満足げに言った。

 その顔には、わずかにニヤリとした笑みが浮かび、何を言い出すのかと思うと、嫌な予感がした。

 「では、あれだ。この際、君たちで部活動を作って活動しなさい。」

 「え・・・?」

 鰭ヶ崎と稲毛は唖然とした。なぜ先生がそんな考えに至ったのか、まるで理解できなかった。

 白井先生はまるで二人の反応を楽しむように、さらに口元を緩めた。

 「ほら、せっかく二人でいる機会ができたんだ。だったら、せっかくのことだ。形にしないとな。活動内容は・・・そうだな、まあ何でもいい。生徒会に提出するための書類も手伝ってやるから、安心しなさい。」

 白井先生は勝手に話を進めながら、これを言う予定だったかのように、部活動申請書をファイルから取り出しこちらに差し出して楽しそうな表情で腕を組んだ。

 「いや、先生。ちょっと待ってください。」

 鰭ヶ崎は慌てて言葉を挟んだが、白井先生は軽く流すように手をひらひらさせた。

 「待たない。ほら、こんなのめったにないチャンスだ。部活ってのは楽しいぞ? そうだろう、稲毛?」

 突然話を振られた稲毛は、目を瞬かせながら戸惑いの表情を浮かべた。

 「えっと・・・その・・・」

 完全に困惑している。

 鰭ヶ崎も同じだった。なぜ話の流れがこんなことになったのか、全く理解できない。

 稲毛 好羽の世話と言い。この部活動のことと言い。確実に白井先生の手のひらで踊らされている・・・。

 「じゃ、決まりな」

 鰭ヶ崎は何かを思いつき、ニヤリとした表情で口を開いた。

 「先生。顧問はどうするんですか?」

 「え?顧問か?」

 鰭ヶ崎は白井先生に形成逆転を狙う勢いで話を進めた。

 「顧問がいなかったら、部活として成り立たないじゃないですか。」

 「いやー。部活やりたかったなー。本当に惜しいことをした。うんうん。」

 ――これは僕の完全勝利だな。

 白井先生は吹奏楽部の副顧問。必ず吹奏楽を優先させるはずだ。つまり、この新しい部活の顧問は不在。

 我ながらいい戦いをした。これが思いついて良かった。本当に助かった・・・。

 そう、鰭ヶ崎が勝者の余韻に浸っていたその時だった。

暇つぶしで書いてます。

気が向いたらまた、更新します。


色々、下手だったらすみません・・・。

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