1話 僕の普段の日常が終わる。①
1話 僕の普段の日常が終わる。①
登校中の駅のホームに見覚えのある、まるで百合のような女性が立っていた。だけどその人がどんな人だったのかが分からない。きっと過去の僕に何らかの関わりがあった女性だったのかもしれない。
これは、今から3年前の出来事だ。高校の入学式が終わり、2ヶ月もの月日が流れ、そろそろ夏を迎える季節。僕の高校生活は、変化のない日々の繰り返しだった。
しかし、そんな平凡な毎日が、終わりを迎えようとしていた。
学校終わりに親友の鞘野 准から担任の白井 葵が呼んでいる事を知った。胸の奥がざわつく。
まさか、何か悪いことをしただろうか。
記憶をたどるが、思い当たることがない。だが、担任に呼ばれるというのは、何かしら理由があるはずだ。
とはいえ、考えても仕方がない。とりあえず、白井先生のいる職員室へ向かうことにした。
廊下を歩きながらも、自分が何をしてしまったのかが、ただ気になる。
すれ違う人たちの視線さえも、まるでこちらを見ているような気がする。
普段は穏やかな心臓の鼓動も、今日ばかりは妙に速く感じる。
そしてついに、職員室の前にたどり着いてしまった。
恐る恐るドアをノックし、ゆっくりと開けた。
「しっしゅつ礼しましゅ!! 1年Ⅽ組の鰭ヶ崎 祐樹ですっ!!」
しまった。緊張のあまり噛んでしまった。
職員室の空気が一瞬にして凍りつく。
次の瞬間、先生たちがこっちを見ながらニヤつく顔が一斉に目に入った。
もう無理だ。帰りたい。いや、いっそ消え去りたい。
そう、憂鬱な気分と恥ずかしさに頭がいっぱいになっていると、目の前にいた白井先生が深々とため息をついた。
「はぁ・・・」
「鰭ヶ崎。ちょっとこっちに来なさい」
「は、はい・・・。先生、何か僕、やらかしましたか?」
「いいから、付いてきなさい」
そんなにヤバいことをした覚えはない。いや、まったく見に覚えがない。
なのに、この空気は絶対にただ事ではない。
白井先生に流されるまま歩いていくと、着いたのは応接室の前だった。
白井先生がドアノブに手をかけ、静かに開けた。
「さぁ、入りなさい」
正直、足がすくむ。本当に入りたくない。なんなら帰りたい。いや、いっそこのまま時が止まってくれたらいいのに。
これから何が起こるんだ・・・?もしかして、拷問でも始まるのか・・・?
頼む、助けてくれ。准――。
心の中で精一杯叫んだ。
そんな不安をよそに、白井先生がまるで何かを楽しみにしているかのような、不可思議な笑みを浮かべながら、じっとこちらを見つめていた。
「何をしているんだ。早く入りなさい」
「はい・・・」
いや、怖い、怖い・・・。白井先生、その笑顔はさすがに怖い。
「し、失礼します・・・」
恐る恐る応接室の扉を開け、一歩足を踏み入れる。ゆっくりと顔を上げると、そこには一人の女の子が座っていた。
・・・誰だ? この子は。
この人は全くと言ってもいい程見覚えがない。だが、第一印象として感じたのは、その静かで大人しそうな雰囲気だった。まるで、一輪の百合のように――凛としていて、儚げで、どこか神秘的な美しさを持っている。思わず言葉を失うほどだった。
「先生。この人は?」
暇つぶしで書いてます。
気が向いたらまた、更新します。
色々、下手だったらすみません・・・。