王妃の恐嘆
ロブルタ王妃としての、私の役目は終わったようね。隣の帝国を支配していた邪神が倒され、支配の軛が外れたのを感じた。
きっと私は裏切り者の王妃として断罪される。優しい夫と違い、王女は母親の首を切ることを躊躇わない。
これはあの娘を男装の王子として利用したり、帝国へ生贄に差し出した報いね。それとあの娘が拾った、恐ろしく頭のキレる錬生術師の罠だ。
私は密かに逃げるつもりだった。背中には、誰にも知らせていない魔力の翼があるから。しかし翼は消えてなくなっていた。
「⋯⋯あの錬生術師め!」
私はギリギリと歯噛みする。消失の原因は錬生術師の少女に、美肌の施術を薦められた時だ。スマイリー君とやらに魔力の翼が喰らい尽くされていたのだ。
悔しいくらい効果は抜群だ。何も知らない国王に毎晩求められたわ。子まで授かったのに、あの少女は悪辣だ。人の心を‥‥魂を弄ぶ悪魔よ。
少女は私の正体に前から気づき、ほくそ笑んでいたのだ。
私は見たわ。彼女を裏切ったギルドマスターの末路を。毛の一本すら残さない、不毛の頭にされ泣き叫んでいたのだ。
あんな惨めな⋯⋯不毛の生き物にはなりたくないわ!
私は愛する幼子まで捨て、身一つで逃げ出すしかなかった。
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