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首吊りの家

前作「深夜のスナック」が変化球のホラーでしたので、今回は直球でいこうと思います。


✳残酷な描写等ありますので苦手な方はスルーでお願いします。


 その噂は何時、何処から広がったのか定かではないが、人々の心に恐怖をもたらしていた。

 カーテンが閉ざされたある1軒の家。その家のカーテンの隙間から揺れている物が見えた女は、つい好奇心に駈られてカーテンの隙間から中を覗いてしまう。すると、その部屋の中では何か大きな物が天井から吊るされて揺れていた。それが何か分かった時、女は悲鳴を上げていた。そして、その女の姿は消えた。次に、またカーテンの隙間から別の女が覗いた時、部屋で揺れている物は二つになっていた。その一つは、前にこの部屋を覗いていた女だった。女は全裸にされ、両腕を背中で高手小手に厳重に縛られ、両足首もまとめて縛られ、その足にはいかにも重量のある重りも下げられていた。女は口からだらりと舌を出し苦悶の表情で事切れている。床には失禁してしまった思われる染みが出来ていた。窓からその様子を覗いていた女は悲鳴を上げてしまう。それからその女も姿を消した。そして、数ヶ月後には、その部屋の中で十数人の女が首を吊られて風鈴のように揺れていた……。

 この噂が広がり、行方不明者の多いある町では、町内にその家があるのではと、さらに噂になっていた。悪霊の仕業、サイコキラーの犯罪、自殺の名所など様々な尾ひれがついて噂は大きくなっていく。その家のカーテンの色や柄なども常に変化していた。その町の中学校でも、その噂は生徒の間で知らない者はいない誰でも知る噂になっていた。



 * * *



「委員長、今度の季節号で”あの噂”について特集してみない 」


 市立西中学校の新聞委員で3年生の篠崎和子が提案すると、同じく3年生の遠藤佑真も賛成する。


「あの噂も色々おかしいよな だいたい警察が調べれば一発で分かると思うのにさ だから色々調べると面白いかも 」


「それに吊るされているのが女性ばかりというのも何か理由があるのかしらね 」


 委員長の3年生、葛西麻由子が疑問を言うと、2年生の佐久間幸治がそれはあれですよと解説を始める。


「虫なんかで異性を引き寄せるのにフェロモンを出すでしょう、この噂の家にも人間の女性を惹き付ける何かがあるんじゃないですか 」


「ふーん、成る程ね 捕まったら逃げられない蜘蛛の糸みたいなものなのかしら ようし、じゃあ遠藤と佐久間、二人で取材だ しっかり情報集めてきてよね 」


「えーっ、俺ら二人で? 委員長たちは? 」


「女子は危険なんでしょう、佐久間 ここは男子二人に頑張ってもらわないと 」


「仕方ないですよ、先輩 ここは僕たちでやりましょう 」


「ちぇっ、まったくお前は甘いよな、幸治 」


 結局、新聞委員会の男子生徒二人で噂の情報を集めるために放課後の町に飛び出していく。


「大丈夫ですか委員長、アイツら 」


 和子が心配して言うが、麻由子は笑顔で答える。


「遠藤はあれだけど、佐久間はしっかりしてるから大丈夫だよ 」


 二人が委員会室で他の記事をまとめていると遠藤と佐久間の二人が疲れた顔で戻ってきた。


「たいして収穫はないね みんな噂通りの事しか知らないよ 」


 遠藤が詰まらなそうに言うが佐久間はそれでも一つの傾向が分かりましたという。


「この噂、男性はただの噂としか思っていなくて、逆に女性は信じている人が多いんですよ 犠牲者が女性という事もあるのでしょうけど 」


「お疲れ様 成る程、男女間で噂に対する考えが違う訳ね ちなみに遠藤と佐久間はどう思っているの? 」


「はーっ、俺? 別によくある噂なんじゃないですか 所詮ただの噂ですよ 」


「僕も、この噂を考えた人は少し変わった人かなと思いますけど、噂自体は眉唾だと思いますよ 」


「ふーん、和子は? 」


「私も噂だとは思うけど、この噂の元になった何かが実際にあるんじゃないかと思います 」


「そう、私も和子と同意見 この噂は誰かが創ったんじゃなくて、元になった何かがあると思うの 何処かで自殺した女性を見てしまった人が話した事が、変化していってこの噂になったとかね 」


「じゃあ、もしかして委員長はその大元を探れと…… 」


 遠藤と佐久間がうんざりした顔で言うが、麻由子は興奮していた。


「それが分かれば大スクープじゃない 噂の真相、ここにありって 」


「そういう事で二人ともファイト 」


 和子も二人を焚き付ける。


「まあ、今日はもう遅いから明日からお願いね 」


「スクープものに出来たら、きっと委員長がたこ焼きのパーティーセット奢ってくれるよ あんたたちの好きなたこ焼き、たらふく食べられるよ 」


 勝手に和子が言うが、遠藤と佐久間はうおーっと盛り上がり、麻由子は苦笑いしていた。



 * * *



・・・少し遅くなったな ・・・


 篠崎和子は広報誌のレイアウトをPCで作成していて学校を出たのが遅くなっていた。委員長の葛西真由子は、今日は塾があるからごめんねと先に帰っていた。遅いといっても夏のこの時間はまだ明るく和子は何の不安もなかった。


・・・そうそう、でもこの時間帯は”逢魔ヶ時”って云うんだよね ・・・


 和子は嫌なことを思い出したと思った。それから、ことさら関係ない事を考える。


・・・まったく、あの二人を釣るには食べ物に限るね これで私もたこ焼きのご相伴にあずかれるし ・・・


 委員長の麻由子には悪いけど、我ながら良い考えだったと笑みを浮かべた時、何かの薫りを嗅いだ気がした。


・・・何だろう? ・・・


 和子は立ち止まり、周囲の匂いをクンクンと嗅いでみる。確かに何かの匂いがする。和子はその匂いに誘われるように歩いて行った。そして、その先には1軒の家が建っていた。2階建ての大きな洋館だった。窓にはカーテンが引かれているが、1階の窓の一つのカーテンに隙間があった。和子は息を呑む。


・・・ここが噂の首吊りの家なの? ・・・


 和子は町内にこんな屋敷があったかなと不信に思うが、カーテンの隙間を覗いてみたい誘惑に囚われていた。


・・・噂に決まっている 本当なら警察がとっくに捜査してるよ ・・・


 和子は恐る恐る芝の上を歩き窓に近付いていく。そして、窓に顔を付けて屋敷の中を覗く。そこには……。



 * * *



 篠崎和子が姿を消して1週間が経過していたが、依然として彼女の行方は分からなかった。家族からの捜索願を受け警察でも捜査していたが、一向に行方が分からず手がかり一つ見つからなかった。


「あの噂の特集、もう止めましょう 」


 麻由子の言葉に遠藤と佐久間も頷いた。考えたくないが、あの噂に関わってから和子が消えたような気がしていた。それなら、和子が消えてしまった事に自分たちにも責任があるのではと、どうしても考えてしまう。

 この日は他の特集の試案を各自考えてくる事という話し合いで解散した。

 そして、葛西麻由子は校門を出て自宅までの道を歩いていた。


・・・私があの日塾に行かずに一緒に帰っていれば ・・・


 後悔が頭のなかをよぎる。その時、ふと何かの薫りを嗅いだ。


・・・何だろう? 何処かで嗅いだ匂いのような気がする ・・・


 麻由子は匂いにつられて歩いて行った。そのうちに1軒の洋館に突き当たった。その洋館の窓にはカーテンがかかっているが、1ヶ所まるで覗いてくれと云うように少し開いている。


・・・まさか、この洋館が…… ・・・


 麻由子は周囲を見回したが人の姿は見えない。麻由子は体を屈めながら一歩ずつ芝の上を進み窓の下に辿り着く。そして、ゆっくりと音をたてないように立ち上がり、カーテンの隙間から中を覗いた。中では天井から吊るされた物が揺れていた。


「ひっ 」


 思わず小さく声を上げてしまい麻由子は慌てて口を押さえる。眼はその揺れている物から離すことが出来なかった。吊るされているのは噂通り裸の女性だった。何人なのか数えるのも大変な数の女性が首を吊られている。全員、腕は背中に回され高手小手に縛られ、足も縛られ重りが下げられている。その一番手前に吊るされている生々しい小柄な女性の顔を見上げた時、麻由子は大声で絶叫してしまっていた。口から舌を突き出し苦悶の表情で吊るされているのは同級生の篠崎和子だった……。




A、麻由子はスマートフォンを取り出し警察に電話した。



B、麻由子はそのまま気絶した。



C、麻由子は腰が抜けて動けなくなっていた。



D、麻由子は吊るされて揺れる和子から目が離せなくなっていた。


E、麻由子は窓を割り、窓枠に足をかけ室内に飛び込んだ。



麻由子の運命は、あなたの選択肢にかかっている……。




✳次回、各選択肢を同時に投稿します。あなたの選んだ選択肢のお話しをお読み下さい。


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