事故#2
血などの表現が含まれています。苦手な方は、読まないで下さい。
響子はわざと人気のない、倉庫に真奈子を連れて行った。外部でもこの倉庫はサッカー部と、陸上部。たまにテニス部が使うくらいで、使用者は限られていた。しかも今日はサッカー部の部活は休み。陸上部は競技場で練習。テニス部もたにまにつかうくらい。つまり、今日倉庫をつかう部活はない。グラウンドからも、テニスコートからもこの倉庫は校舎の影になって見えない。生徒や先生も用がなければ近寄ることもないのだ。
殺すなら今日しかないと思った。まずは、裕樹のことについて文句を言ってやろう。
それに文句を言ってからと響子は思った。
「裕樹に何の用があんのよ」
響子は真奈子を睨む。
「あなたが知ってどうするの」
真奈子は冷めた口調で、鼻で笑う。表では大人しい性格をしていたが、本性が現れたのだ。
響子は産まれて初めてこんなにイラだった。頭の血管が切れそうなくらい力をため、強く拳を握った。
「ふざけないでよ!」
響子はそう叫び、力いっぱい真奈子を突き飛ばした。
不意打ちにも、突き飛ばされた真奈子は後方に飛んでいく。力いっぱい突き飛ばされた真奈子は倉庫の中まで行き、今にも転びそうな体制になる。
真奈子が体制を崩すと、ゴン! という何か硬いものと硬いものがぶつかる音がした。
真奈子は、倒れたまま起き上がらない。起き上がるどころか、ピクリとも動かない。
「……滝さん?」
声をかけても反応がない。
「やだ……。ねぇ、滝さん。ちょっと!」
慌てて駆け寄る響子。そこには、大きく目を見開いた真奈子の姿があった。
「何で……? 死んでる……」
私が……殺したの……?
突然のことで、状況を上手く把握できない響子。
真奈子の頭部からは、血が流れ出ている。よく見ると、サッカーボールの入った鉄のゴールの、上の部分にも血がついていた。
真奈子は、不運にもそこに高等部をぶつけてしまったのだ。
「ど、どうしよう……!」