開幕#3
それから三日後。
響子とは、屋上で話したきりだった。目があってもあわててそらす。
裕樹はそんな響子にどんどん嫌気がさしてきていた。
一限目の授業が終わると、裕樹の席に松村弘幸が近寄る。
「裕、お前片岡と喧嘩したんだ。ついに破局……!」
まるでこの状況を楽しんでいるようだ。
お気楽な性格は、うらやましい。コイツは自分さえよければそれでいいんだ。
「破局じゃねーし」
弘幸も知っている。木町雪穂が死んだのはいじめが原因だと。ただ、弘幸も裕樹達と同じように見ている側の人間だった。
傍観側は関係ない。弘幸のことだから今もそう思っているのだろう。
「お前ら短かったな。まあ、裕にしたら頑張った方だ」
「だから別れてないから。ただの喧嘩」
「なんで喧嘩したんだよ。裕は毒舌だから、もう裕ちゃんなんて嫌いって言われたんでしょ、どうせ」
「お前どんなけ俺に別れてほしいんだよ」
付き合いきれないと、裕樹は席を立つ。
親友とはいえ、なるべく弘幸には喧嘩した理由を話したくなかった。
その様子をみて弘幸が訊く。
「どこ行くの?」
「トイレ」
教室を出る際に、響子の机の前を通る。裕樹は響子の事など気にもとめなかったが、響子の視線を感じたのだった。