表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘密  作者: 佐々木叶
15/17

虚無 【響子】

 

 遺影の中で優しく微笑む滝真奈子。


 線香の臭いが鼻につく。響子は幼い頃からこの臭いが嫌いだ。呼吸を繰り返すたびに、不快感がたまっていく。


 早くこの場所から離れたい。線香の臭いよりも、罪悪感で押しつぶされてしまいそうだ。


 私はとりかえしのつかないことをしてしまった。


 許されることのない罪。償うことの出来ない罪。


「裕樹、少し外の空気を吸ってくるね」


 隣にいた裕樹に声をかけると、ついにこの空気に耐え切れなくなった響子は動き出す。


 外に出ると、少し気分が楽になった気がした。線香の臭いがしないからだろうか。


 入り口のすぐ横にあるベンチに腰を下ろし、地面を見つめる。これからのことを考えた。だが、考えても答えが見つからない。


 滝さんの死が、事故死じゃないと知られたら……。いや、警察は言わないだけで、他殺と考えて捜査を進めているだろう。学校側が、勝手に事故死と言っているだけだ。第一、滝さんがあの倉庫に行く理由がない。疑われるのは、第一発見者となっている私だ。


 マスコミでは、滝さんの事故死について大きく取り上げられていた。同じ学校、同じ時期に二人もの死者。そして、同じクラスの人間となれば、その二つをつなげたがる。マスコミにとっては、所詮ただの面白いネタなんだ。


 この罪悪感から解放され、マスコミのネタになるか。一生、罪悪感と罪を背負って生きていくか。この二択しかない。


 私は一体、どうしたらいいんだろう。


「どうしたの? 片岡さん」


 心臓がドキリと跳ね上がる。顔を見なくても、この声が誰のものなかすぐに分った。


 後ろを振り向く。それが間違っていることを祈って。


「……菅原さん」


 祈りは天に届かなかった。あたり前だ。たとえ神がいたとしても、絶対に神は私の願いなんか叶えようともしない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ