激怒#2
「お前ほんと、無愛想だよな。もっと愛想良くにこやかに過ごせよ」
「うるさい。余計なお世話だし。用がないなら早く帰って。こっちは眠いんですけど」
「渉に面白い話を持ってきてあげたの」
連夜の横にいた、奈都がちょこんと頭を出し、ポニーテールに結ばれた長い髪の毛を揺らす。
「面白い話? 遠慮するよ」
いかにも嫌そうな顔をつくると、またベッドに横になり、毛布の中に隠れた。
「おい、話くらい聞けって」
連夜は、無理やり渉を起こす。
「同じクラスの木町雪穂って分るでしょ。ちょっと懲らしめたいと思ってさ。渉も手伝ってよ」
「やだ。意味わからないし。てか、それ僕関係ないじゃん」
「お願い! あたしら幼馴染じゃん。それくらい手伝ってくれてもいいじゃん」
奈都は両手を合わせ、渉にお願いする。
「なんでも幼馴染って使うのやめてよ」
困ったように、視線を泳がせたあと、小さなため息をついた。
「一緒にいるだけね。僕は何もしないよ」
呆れたように渉は二人を見る。その答えを聞いた奈都は、飛び上がって喜ぶ。
「ありがとう、渉! じゃあ、私帰るね」
用が済むと、奈都は二人に別れを告げ、保健室を出て行った。
「我がまま女王様……」
そんな奈都を見て、渉はボソッと呟いた。連夜に聞こえないように言ったつもりだったが、それはちゃんと連夜の耳に届いてしまったらしい。
「そんなこと言うなよ。あれでも俺の彼女様」
「そうだね……」
あくびをしながら渉は相槌を打った。
「俺も教室戻るわ。じゃーな」
連夜も奈都に続き、保健室を出て行った。
渉はやっと寝れると、眼鏡を外すとベッドに横になった。