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秘密  作者: 佐々木叶
12/17

激怒 【奈都】


 許さない。生まれて初めて人を思いっきり殴った。


 あれから教室を出た奈都は、三限目までサボり、鞄を手に持ちかえろうと廊下を歩いていると、授業中にも関わらず、前方に男子生徒が歩いている。


「連夜―」


 奈都は、茶髪頭の杉宮連夜に声をかける。


 後ろを振り向いた連夜は右手を上げる。


「おー。奈都、帰るの?」


「うん。馬鹿らしいもん。やってられない。本当に許さない、あの女」


「奈都がマジギレしたところ、俺はじめて見たわ」


 笑う連夜の隣で、奈都がムッとする。


 すると、突然「あ……」と思い出したかのように奈都が声を出す。


「いいこと考えた。ねえ、連夜。ちょっと手伝ってよ」


 連夜の顔を見て、怪しく笑う。


「なんだよ、気持ちわりーな」


「あの女を痛めつけるの。連夜もやろうよ」


 連夜はどうでもよさそうに返事をする。奈都の頼みは断ることはしない。


「じゃあ、渉のところ行こう。渉も誘うの」


「あいつなら、また保健室だろ。学校は寝るために来てるもんな」


 奈都は笑いながら相槌を打つと、二人は保健室に向かった。


 予想通り、カーテンの締め切られたベッドに藤川渉が寝ていた。


「おい。起きろよ、渉」


 気持ちよさそうに寝ている渉に声をかけた。


 寝返りをうちながら、ゆっくりと目を開けた。


「誰……?」


 寝ぼけたようにボソリと呟く。


「起きろって」


 渉は、「うるさいな……」としぶしぶ体を起こし、枕の横にあった黒渕の眼鏡を手に取ると、それをかけた。


「何の用?」


 寝ているところを起こされ、不満の色をかかげているご様子。


 はたから見れば彼は、真面目そうに見える。だが、授業は普段、出ることもなく保健室で寝ている。たまに出てると思えば、机に顔を埋めて寝るだけ。人はみかけによらずとは、まさしくこのこと。


「早くすませて」


 無愛想、クール、顔も良し、授業はほとんど出ないくせに成績も良し。女子が騒ぎ立てる物を、彼は揃い持っている。ただ、彼は他人には興味がないようで、むしろ嫌っているようにも見える。彼女がいるだなんて、奈都はそんな噂は一度だって聞いた事はなかった。


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