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秘密  作者: 佐々木叶
11/17

衝突


 それは木町雪穂が死ぬ、ほんの少し前のこと。


「いったあ……」


 菅原奈都が手に持っていた山積のプリントを床に散らかす。


「ちょっと何するのよ! プリントが落ちたじゃん」


 奈都はすかさず木町雪穂に文句を言う。


 雪穂は冷たい視線で奈都を見る。


「何するのって、菅原さんが勝手にぶつかってきたんでしょ。あたしに害はないよ」


「はあ? ふざけないでよ」


 クラスの視線が、二人に注目される。


 奈都は偉そうに腕組をしながら睨みつける。


「拾いなさいよ」


「どうして?」


 そこで、二人の間に松村弘幸が口をはさむ。


「木町も菅原も仲良くしろよな。お前らガキか。木町も拾ってやれよ」


「ガキにさせるほど、菅原さんが嫌いだから仕様がないよ」


 ひとり言のように呟く雪穂。もちろんそれは、奈都の耳にも届いている。


 二人が揉め事をするのは、これが初めてではなかった。何が気に食わないのか、雪穂は奈都を毛嫌い、軽蔑する。奈都もそんな雪穂が気に食わない。二人は些細なことでも、もめることが多かった。


「なめてんの?」


 怒りに震える奈都が、拳を強く握り締める。


「あたり前じゃない」


 あからさまに、雪穂はバカにしたように鼻で笑う。


「この!」


 奈都は怒りのあまり、雪穂の頬にビンタを食らわせた。


 ざわめく教室。中には、そこまでもしなくても、という声がささやかれる。


 屈辱に顔をゆがめる奈都。手を出してしまったことにも、悪くは思わない。


「暴力に走るなんて、菅原さんって弱い人間ね」


 ぶたれた本人は、平気なようで、冷たい視線を送り続けている。ただ、左頬が、うっすらと赤い。


「うるさい……!」


 奈都はそのまま教室を出て行く。


 雪穂は何も言わず、ただ黙って床に散らかったプリントをひろうと、それを奈都の席に置いた。


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