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目撃 【裕樹】
裕樹の目の前には、顔面蒼白の響子と、頭から血を流した真奈子。真奈子に関しては、
横たわったまま動かない。
「響子……?」
放心状態の響子に声をかけると、我に返ったように響子は裕樹の方をみる。
「な、何?」
「俺、先生呼んでくるよ」
今は、驚いたり泣いたりしている場合じゃないんだ。こういう時こそしっかりしなくちゃいけないんだ。
裕樹は、胸のシャツを強く握り締めると学校の玄関へ走り出す。
玄関に向かう先、裕樹はフッと思う。
滝の話って一体何だったんだろうか。告白とかそういう感じじゃなかったように思う。ただ、なんとなく。
なぜだか、胸いっぱいに広がっていく嫌な予感。胸騒ぎが収まらないのだ。
悪夢はまだ、始まったばかりだった。