種まきの結果
その場にいる誰もが、ウィロンを期待の眼差しで見ている。
「ここ20年ほど、大魔法使いになる可能性のある女子が出てきていない…リント王国の奇跡の妹君であるウィロン様こそ…その女子であってほしい」
神官たちの縋るような呟きを背に、ウィロンは種を手に取り、鉢に植えた。
そして水をやり、祈りを捧げるーー
10秒、20秒、30秒。
普段は意識することもないような秒数の時間が、
この時だけはとても長く感じる。
花が咲くまでの平均時間は20秒。1分が経過すると、「可能性なし」と判断される。
(「どうか、花嫁さんになれますように…」)
ウィロンが心の中でつぶやいた瞬間、
「1分経過です。お疲れさまでした」
と言う声が、神殿に響き渡った。
(「やった…!魔力なしと判断されたわ!私はお嫁さんになれるのよね?!)
「魔力なし」の判定を受けたウィロンの顔には、喜びの表情が浮かんでいる。
反対に、神官たちからは
「兄妹でひとりだけ魔力がないなんてことが…」
「高熱は魔力暴走ではなかったのか…?」
といった、ため息と落胆の混ざった言葉が飛び交う。
トリニティ家の面々は、周囲に怪しまれないよう「少しがっかりしながら」ウィロンの手を引き、神殿を後にした。