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神様コロッセオ  作者: 篤緋皓
1/7

ようこそ、コロッセオへ

プロローグ

 人には裏表が数多く存在していて、それらを隠して穏やかに静かに生きていく者やさらけ出して好きに生きていくもの様々で。

時折、そんな裏表がないのかと疑うくらいに明るい太陽のようなものもいれば裏しか知らない人もいる。

人に思いも言えず、言えても否定され胸の内で秘めたまま消えてしまうものもいれば、あきらめず進むものだっている。


人間は大体そんな感じだろう。

感情も、気持ちも思いもきっと、みんな等しく持っているのだろう


その点、どうだろう俺は異常者なのか?


喜怒哀楽すべてがどんな思いなのかどんな心地でどんな感情なのかわからない俺は、毎日真っ白の空間にいるような気分の毎日は


退屈でも、充実でもなくて…感じることができない


ただ淡々と毎日を生きて感じたこともない感情を雰囲気で感じ取っては表情を作って


―俺は―


空を一瞥した後前を向きまた人に笑うのだ


今日も

「あ、おはよう愛李(あいり)!」

「おはよう、今日もいい天気だね」


いつも通りの日常言語を繰り返してー


     これはそんな俺と、一人の神様が何かを変えていこうとするお話


俺を変えるきっかけとなったほんの些細なそして大きな意味のあるお話だ



一章目・一節「本元(ほんげん)」        意・源・根源


「来たわね、愛李・ディシード君まずはそこに座りなさい」


ある日の放課後、主任の先生からの呼び出しを受けた。理由は何となく察しがついたが、とりあえず職員室へ向かい戸を開けた所だった。

担任からの怒りのこもった声で着席しろと指示されて、言う通りに僕が座ると圧をかけるように言葉を続けた。


「分かっていると思うけど、もうすぐ進路先の紙を提出する期限なのよ。数週間前の時点で既にほかの生徒たちは提出が終わっていて、残るは君だけという状態だった。そして先日、君はぎりぎりにその紙を提出したわけだけど…」


先生は俺の提出した紙を机に置いてため息をついた。

その紙には自分の名前と学年番号以外書かれていないいわば白紙の状態だった。

先生はその紙を指さし俺を見て話を続けていく。


「確かに私は貴方になるべく早く提出するように指示したけれど、白紙っていうのはどう言う心算なのかしら?」


静かに俺に問いかけられた答えに困った顔をしながらも俺は言葉を紡いだ。


「どうしてもやりたいことが多くて…決められなかったんです。」


そんな俺の様子を見てか少し呆れた様に笑みを浮かべた先生、「仕方ないわねぇ」と言いながらもいくつかの大学や専門学校などのパンフレットを持ってきた。


「まだあなたは二年生だから決め手は沢山在るからいいけれど、三年の進路決めにつながるように今のうちに絞っておきなさいね。紙は再提出すること。」


「良いわね?」と先生に問いかけられ笑みを崩さずに素直にうなずいた。


「すみません、先生からのパンフレット見てもう少し考えてみますね」


そう返した俺に少し機嫌を良くしたのだろう、先生は先ほどの雰囲気よりの柔らかい声音で「あなたはこの学校の希望なんだから期待しているわよ」と肩をたたかれた。

お礼を述べ少し話をした後職員室から出ていく。

歩きながらも人がいつ来ても良い様に笑顔を浮かべていたが表情を楽な状態に戻した。

今は下校時間ということもあり、人通りもない廊下だ、“人がいない”のに笑顔を浮かべるのもきっとおかしい事だろう。

そんなことを考えながら、自分の教室のドアを開けて取り残された自分のカバンを持ち直し学校を後にして家への道を歩き始める。


(期待されているなら有名な大学か、専門学校かな。先生から貰ったパンフレットから幾つか探さなくちゃな。)


なんて思いながら行き帰りしている何時もの道を歩く。

学校から徒歩で十五分くらい、近い位置にある自宅の前には小さな森があった

そんな小さな森の中にあるのは小さな神社、そして護り岩という代々この街の言い伝えにある岩がある、その神社が俺の家の前と言う事もあり、よく近所の人たちが集まってはたわいのない会話を繰り広げているのだ。


「あら、愛李ちゃんおかえりなさい」


そういって笑顔を向けてくれる近所のおばあさんに笑顔で会釈しその場を不快にさせないようにゆっくりと歩き去っていく。

不興を買ってしまえば母親にも敵意が向けられてしまうから、その問題で過去に母親に怒られてしまったからこそ毎日の行動になった。

神社の入り口あたりに差し掛かり、家が目の前に迫っていく。


「学校からもらったパンフレット調べていかないと」


今日は母親も夜勤だから家には帰ってこないだろう。

安堵かため息か分からない息を吐きながら一軒家の自分の家へとたどり着いた。

何時ものようにカギを開け中へ入ろうとした時だった。


「あ、愛李君ごめん、待ってくれないかしら…」


聞き覚えのある声に振り替えると一つにまとめた黒髪をぼさぼさにして息を切らしながら立ち尽くす隣人であり担任の神野生花先生が立っていた。


「先生?どうかしたんですか」


慌ててかばんを降ろし先生のそばへと近寄るとうなだれた様子で先生は口を開いた


「そ、それが、今日は早番だったから早く帰れると思って君との面談後に私も帰ってきていたんだけれど…」


俺の目の前にカバンを広げれば今にも泣きそうな声で「鍵がないのよぉ…」とつぶやく先生まぁ、先生はドジだから何時もの事で


「業者がスペアーを持ってくるまでおうちに入れてほしいなぁっと…」


「いつもの事じゃないですか…いいですよ」

毎度毎度本当にごめんねと言いながら俺にお詫びの品だと高そうなお菓子を差し入れしてくれた。

今回はどうやら下水路に落としてしまったらしく業者も立て込んでいるため時間がかかってしまうらしい。

何時ものように、先生を家の中に入れリビングのソファへと招いた後ココアと先生の分のコーヒーを淹れ差し出した。


「ありがとうね…もうほんとにドジで。」


何度も謝る先生に苦笑して首を振る、こういう時は人助けが大事だろうから


「あ、そう言えば、愛李君進路のパンフレット良ければ一緒に見てみない?手助け全力でしちゃうから」


任せてっとガッツポーズでいう先生に「助かります」とうなずいて僕は今日もらったパンフレットを机に広げていく。


「うわぁ…主任の先生出しすぎじゃない?これなんて、先生の願望にしか見えないわよ」


そういって冷や汗を流しながらいくつかパンフレットをとってめくってはうめき声をあげる先生に素直にうなずく。


「俺も真っ白で出したのは悪かったですけど…本当に何も浮かばないんですよ」


この先生が担任になってからはお隣という縁もあるのだろうがあまりとりつくろわず素直に物事が言える関係になっていた。

不思議とこの人には本心が伝えられて、心地が良かったからだろうか。


「私も説得はしたけどねぇ…あ、歴史研究分野か…愛李君、部活はどっちかというと神話研究会に入っているから違う気がする」


「どれです?それ適当に書きます」


そう言った途端、自身の銀髪の髪をがしりと掴まれてしまった


「書かないの。ちゃんと見てから決めなさい」


そう言って握る手に力を籠める先生に「分かりましたから!」と声をあげたのだった。

軽口をたたきながら数分、俺たちは一心に目の前の大量にあるパンフレットを見通していったもののなかなか有力な候補は見つからずにいた。


「はぁ…中々ないわねぇ。あ、そういえば愛李君はさっきも思ったけど何で神話研究会に入っているの?」


パンフレットを読んでいた手が止まり先生の方を見つめ目を泳がせながらも口を開いた


「あまり、乗り気ではなかったんですけど…その、なぜだかどうしても知りたくて」


神話を紐解いて知っていくたびに感じる違和感を、そして何よりわだかまりができる正体を知りたかったのだ。


「じゃあ、愛李君は神って信じる?」


次に問いかけられた質問によく分からないと首を傾げしばらく考え込んでいく


「神がいるか、と聞かれてしまうと信じています、ね。」

信じていればこの俺の感情もわかると信じているのか、はたまた別の理由かなんて俺自身も分からないけど。


「不思議ね。今どきの子なんて神なんていないっていうのが末なのに」


興味深そうに俺を見る先生にを一瞥し俯く。


「信じていた方が、俺は不思議と落ち着くんです、こう、忘れた何かが思い出す気がして」


その言葉にしばしの沈黙が流れたと思えば先生は俺を見つめ「それじゃあ」と口を開いた


「君は神にあってみたい?」


「神に、会う…」


予想外の質問だった、この質問はなぜだが間違えてはいけない、警鐘が鳴っていた。


「あって、会ってみたいです。」


その言葉に先生は怪しげな笑顔を浮かべ立ち上がったかと思いきや淡い光と共に姿が変貌していく。

突然どうしたのかと疑問に思った瞬間

何時もの淡い紺色のスーツは丈の長い巫女服へと変化し、ベールをかぶり、その中で先生は妖艶にほほ笑んだ。

少しオレンジ色の色味を帯びた長いサイドテールの髪が揺れる


「驚かせてごめんなさい、私は天照、この姿では初めましてだね。愛李君」


先生の、俺と同じ空色の目が近づいた

あまりに唐突なことで言葉が出ず目の前で起こった現状について行けず固まっていた俺の

手を掴み、先生否、天照は俺の腕をつかんだ。


「早速だけれど時間がないんだ。説明は追々聞かせてあげるから、早く行こうか」


そういってすさまじい爆風と共に俺の意識は遠ざかっていったのだった。

これが俺の運命が変わる始まりだともこの時の俺は思ってはいなかった。

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