九十三・英雄食卓
俺たちは、ルゼノアの街中にある小さな食堂……いや、正確には「屋台風ごはん処・ルディ亭」に座っていた。
カウンター席と木製のテーブルだけの、どこにでもありそうな大衆食堂。
異世界とはいえ、こういう店は存在するんだなぁ…とかどうでもいいことを考えていた。
いやいや!
そんなことより──
気まずすぎるんだけどぉぉぉ!!!
見ろ、このメンツ。
目の前にいるのは、異世界の希望・勇者一行6名。
そして、なぜかその中に一人だけ、異世界の「その他大勢」代表の俺、佐藤ヒナタ。
こんなのおかしいでしょ!?
大谷○平と野球やってたら急に近所のおっちゃん混ざってるくらいの違和感!!
「いやぁ〜〜まさか佐藤くんにここで会うなんてね!!」
二階堂がテンション高めに串をほおばりながら言う。
やめて…その朗らかさが逆に胃にくる…
「それにしても不可解だ。確率論的に、お前がここで我々と遭遇するなど……」
伊集院が腕を組みながら、難しい顔でガチ考察しはじめる。
いや、やめろって。数学持ち出すなって。
俺の存在が確率で消されそう。
「でも…無事で良かった。」
七瀬さんは優しく微笑んでくれる。
ぐぅ…その優しさが胸に刺さるぅ!
「おいィ……つーか、マジでなんでここにいんだよ、テメェ」
獅子王が睨みながら串をもぎ取る。
ヒィ!!
その目!怒られてる犬の気分になるからやめて!!
俺はもう、目の前の飯を食べるフリしながら、頭の中は大パニック。
どうしてこうなった……!?
「それにしても佐藤くん、すごい偶然だよねぇ〜!」
二階堂がニコニコしながら俺の隣にぴょこっと座ってくる。
「そ、そうかな…?」
俺は引きつった笑顔を浮かべる。
偶然じゃないんだよなぁ!!
俺が転移魔法で吹き飛ばされたせいで、この地にいるだけで…
「でもさ!佐藤くんが無事でよかったよ!私たち、すっごく心配してたんだから!」
二階堂さんは嬉しそうに串を頬張る。
「しかし、本当に不自然だ。」
伊集院が急に真顔になって、テーブルを指でトントン叩く。
やめて…その分析顔やめてくれ…!!
「城に居たはずの一般生徒が、偶然、俺たちと同じルートで旅路を交差させる確率は……0.00034%」
「確率出すなぁぁ!!!」
俺は心の中で叫ぶ。
「まぁ、細かいことは置いとこう!無事だったから良かった!」
神宮寺が苦笑いしながらフォローしてくれる。
流石、勇者。器が違う。
「そうだよ!佐藤くん!このまま私たちと一緒に旅しよっ!」
二階堂さんがノリノリで言ってくる。
「えぇ!?いや、僕は…その…」
頼む…やめてくれ…!
俺は内心で天を仰ぐ。
「ァ?戦えんのかァ?この前、俺らマジで死にかけたんだぞォ?」
獅子王が串を噛み砕きながらジト目で睨む。
いや、実際あの時お前らの裏で俺が“終焉の魔人”やってたんだけどな…
とは言えない。
「そ、それは…うん、まぁ…」
ヤバい、このままだと完全に勇者一行に同行させられる流れだ。
そして、ふと周囲を見渡す。
リリス…どこいった…?
まだ戻ってこない。
俺はふと周りを見渡す。
ん…?
……いる。
い、居たァァァァーーーーー!!!!!!
全力で目立ってる不審者がァァァ!!
黒いローブ、サングラス、フード、マスク、手袋、何故か手に持ったバナナ。
完全装備の怪しさMAX!!!
リリスじゃねぇかァァァ!!!
しかもこっち見ながら──
メニューの影から顔チラ見せ
→すぐに引っ込む
→またチラ見せ
→そして手の中のバナナをモソモソ……
なにしてんだ、あの女。
当然、勇者たちも気づく。
二階堂は飲みかけのスープを吹き出しそうになりながら
「ねぇ……あの人……めっちゃ目合ってない?」
伊集院は冷静に
「いや、そもそもずっとこっち見てるし。90度で首曲げてるし。あれは狙ってる。」
七瀬さんはおどおど
「ひょ、ひょっとして佐藤くん…ストーカーされてる…?」
獅子王は立ち上がり
「ァ?アレ…どっからどう見てもヤベェ奴じゃねぇかァ!!」
蓮が少し引き気味で
「え、佐藤くん……あれ知り合いじゃないよね?」
やばい…!完全にマークされてる…!!
俺は急いで以心伝心を飛ばす。
《リリス!!!おい!!!何やってんだよ!!!》
《えへへ…ヒナタ様が女の子とお食事してたから…気になって…》
完全に監視じゃん!!恋愛リアリティ番組か!!
リリスはメニューから目だけ出しながら
「チラッ……ヒナタサマ……」
やめろおおおおお!!!!
俺は笑顔を張り付けて勇者たちに言う。
「いや〜〜〜なんかこう、旅芸人っていうか!異世界ストリートパフォーマーっていうか!偶然こっち見てただけじゃないかなぁ!!ハハ!!」
全員の目が「ウソつけ」になってる。
獅子王が椅子を蹴って立ち上がる。
「ォイ!あの怪しい奴ァ……今、こっち見ながらバナナ握り潰したぞォ!!」
え、リリス!?
嫉妬でバナナ握り潰すな!!!
俺の心は叫んでいた。




