表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DEMONSMOB〜勇者に巻き込まれて転移した俺の物語〜  作者: はるりん
第1章 転移、そして目覚め
92/151

九十二・交差する運命

 翌朝──


 昨日の悪夢のせいであまり寝られなかった。あの声、あの影が頭から離れない。

 気づけば、ほとんど寝た気がしないまま朝日を迎えていた。


 そして、追い打ちのように俺を襲う現実。


 なんということでしょう──!


 魔力の回復が、ここまで遅いとは…!

 普段なら一晩寝れば元に戻るはずなのに、昨日の《瞬間転移(ブリンクゲート)》を使った影響だろうか。まるで底の抜けた壺に水を注いでいるような感覚。


 転移のスキルを使えるほどの魔力は……無い。


 はぁ……どうしてこう、毎回こうなるんだろう。


 リリスも「仕方ありませんね〜♪」なんて笑ってるし。


 ──ということで、決定。


 これはもう、歩くしかないか……。


 俺とリリスは、タナトス王国を目指して歩いて行くことにした。


 俺とリリスは、しばらくルゼノアの街中を歩いていた。


 朝の市場は活気に満ちていて、パン屋の香ばしい匂い、路地裏でじゃれ合う子どもたちの声、行き交う商人たちの喧騒──そんな普通の風景の中、俺はとにかく疲れていた。


「まさか…王都に戻るつもりが…徒歩移動になるとはね…」

 肩を落としながら呟く。


 リリスはというと、どこか楽しそうに屋台の食べ物を眺めたり、猫と遊んだりしている。

 …おいおい、俺の心労はガン無視か。


 街外れに差し掛かった時だった。


 ふと前方から、聞き覚えのある声が──


「いや〜やっぱり、この辺は賑やかだね〜!」


 …ん?この声…どこかで…


 すれ違いざま、俺はそちらに目を向けた。


「え…?」


 相手も、こちらを見て──


「え…??」


 声が重なる。


「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」


 俺、リリス、そして相手──


 勇者一行。


 見事なまでに、街中で再会してしまった。


 お互い、目をまんまるくしてフリーズする。


「……佐藤くん?」


 七瀬さんが恐る恐る声をかける。


 俺は慌ててあたりを見回す。

 リリス…どこだ!?

 さっきまで隣にいたのに!


「え、えぇと…お、おはよう……?」


 必死に平静を装う俺。


「おい、そこのヤツ。」

 獅子王が俺を睨みつけてくる。


「誰だァ? 知り合いかァ? こんな一般人、覚えてねェぞォ。」


 おいおいおいおい!!!

 おまえ…!俺、クラスメイトだよ!?

 なんなら何回も同じ授業受けてたよね!?


「え、えぇと…獅子王くん…俺、佐藤ヒナタだけど…」


「さと…? 佐藤? 聞いたことねェなァ。ァ?」


 二階堂さんが慌てて割り込む。

「ちょ、豹牙! 同じクラスだったでしょ!? ヒナタくんだってば!」


「あァ? そんなモブ顔いちいち覚えてらんねェよ!」


 心に突き刺さる…!

 地味に一番効いてるダメージこれじゃない!?

 俺、マジでモブすぎて記憶に無いのかよ…!


 七瀬さんは申し訳なさそうに「ご、ごめんね…」と肩を落とす。


 伊集院は腕を組みながら「ああ…豹牙の記憶力は筋肉量と反比例するからな」と冷静に解説してくれる。


 ────俺、転移魔法とか魔族との戦いとか、色々大変だったのに…

 まさかの「誰?」が一番ショックだった。



「お前…どうしてこんなところに!?」

 獅子王がズカズカと近寄ってくる。


「俺たち、数週間の修行の旅に出たんだぞ!?タナトス王国からここまで、普通の生徒が来るわけないだろ!」


 全くその通り…!

 普通に考えて、一般生徒の俺がこんな場所に居るなんておかしすぎる。どう見ても怪しい。これはまずい…!


 内心で焦りながら、必死に言い訳を考える。けれど気がつけば、リリスの気配は綺麗さっぱり消えていた。

 ……さすがリリス。気配を消してくれるあたり、ほんとに頼りになる。


 俺は勇者たちの視線を受けながら、しどろもどろに口を開く。


「えぇ…と、その……驚くかもしれないけどさ。実は、君たちが旅に出た後…城で魔族の襲撃があってさ……」


「え…!?」


「その時、俺も巻き込まれちゃって……転移魔法をかけられて、気づいたら全然知らない森の中に飛ばされてたんだ。」


 勇者たちは一斉に顔を見合わせ、動揺した様子を見せる。


「ちょ、待て!それ…城は大丈夫なのか!?他の生徒たちは!?」


 神宮寺や一条、獅子王たちが一斉に畳みかけてくる。


「大丈夫、大丈夫!騎士団がすぐに駆けつけて、魔族は倒したらしいよ。俺が聞いた話では、誰も命を落とさなかったって。」


 ……ごめん、それは半分嘘だ。

 ほんとのところは俺とリリスが何とかしたんだけど、そんなこと言えるわけない。


「君がひとりで……ここまで……?」

 伊集院がぽつりと言う。


「す、すごい……」

 二階堂さんはなぜか感心している。


 七瀬さんは、ほっとした表情で小さく胸を撫でおろしている。


「まさか、そんな偶然あるのかよ…」

 一条はまだ少し疑ってる。


「いや…偶然って、あるんだね……!」

 神宮寺は、どこか信じたいような声で呟いた。


 俺は心の中で泣きながら、静かに微笑む。


 ──ごめん。実は偶然じゃないし、俺、めちゃくちゃ隠し事してます。


「とにかく、無事で良かった!僕たち、少し休憩するところだったから、一緒に行こう!詳しい話もしたいし。」


 神宮寺が微笑みかけてくる。


 ああ…やっぱこの主人公、いいヤツすぎるだろ…

 俺はそんなことを思いながら、内心で頭を抱えつつも静かに頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ