表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DEMONSMOB〜勇者に巻き込まれて転移した俺の物語〜  作者: はるりん
第1章 転移、そして目覚め
76/151

七十六・空裂の刻 弍

竜人族のリーダー格が剣を振りかぶると、空気が震えた。鋭い一閃が夜空を裂き、圧縮された衝撃波がこちらへ向かってくる。


リリスは軽く宙を舞い、余裕の表情で避ける。俺も身を捻って回避――しようとしたが、そうだった。俺は今、リリスに抱えられている。


避けるというより、避けてもらう側だ。


刹那、リリスの魔力が展開され、不可視の障壁が衝撃波をかき消した。空間が揺らぎ、魔力の残滓が消えていく。


竜人族の一撃は重い。だが、それだけならまだ対処できる範囲だ。問題は、相手が三人いるということ。そして、俺が自由に動けないということ。


黒焔刀を振るおうにも、この体勢では剣を振るスペースが限られる。飛び道具を使うにも、リリスに抱えられているこの状況では照準を定めるのが難しい。


敵の二人が側面から回り込み、狭撃態勢に入った。動きに無駄がない。俺たちの動きを見極め、確実に仕留めようとしている。


リリスは俺を抱えたまま、急降下する。風の抵抗が身体にまとわりつき、息が詰まる。真横を竜人族の爪がかすめた。今のは危なかった。


彼らはただの剣士ではない。飛行能力を活かし、空間を自在に使う戦闘を得意としている。 上下左右、どこからでも攻撃できる立場にあるのだ。


一人が急旋回し、俺たちの真正面へと回り込む。高速で繰り出された連撃。剣が光を反射し、刃の軌跡が視界を埋め尽くす。


リリスが優雅に回避しながら、俺の耳元で囁く。


「ヒナタ様、このままだとやりづらいでしょう?」


「当たり前だ……!」


俺がそう返した瞬間、リリスが手を放した。


俺の身体が宙に投げ出される。


当然、落ちる――はずだった。


だが、次の瞬間、俺の背中に強烈な圧が走る。


リリスが俺の背中を蹴り上げ、空中へと跳ね上げたのだ。


バランスを崩したまま、俺はとっさに黒焔刀を振るう。


刃が竜人族の一人とぶつかり合い、金属音が鳴り響く。火花が散る。剣圧がぶつかり合い、互いの力がせめぎ合う。


宙を舞う感覚の中で、俺はやっと理解した。


――これは、“俺の力を試す”ための戦いなのかもしれない。


なら、乗ってやる。


俺は静かに、黒焔刀を構え直した。その瞬間、戦況は一気に変わった。


竜人族の一人が斬りかかってくる。動きは速い。だが、俺の目はすでにその軌道を完全に捉えていた。


黒焔刀を振るい、相手の剣を弾き飛ばす。衝撃でバランスを崩した相手の隙を逃さず、胴へと蹴りを叩き込んだ。


竜人族の戦士は空中で弧を描きながら吹き飛ばされる。だが、俺は追撃はしない。


俺の目的は”勝つこと”であって、殺すことではない。


次の瞬間、別の一人が俺の死角から爪を振りかぶる。しかし、俺は背後に目をつけているわけじゃない。


――なら、感じ取ればいい。


瞬間、俺は体をひねり、刃を後方に突き出した。


振るう必要すらなかった。俺の黒焔刀の刀身に、相手の爪が触れた瞬間、そのまま衝撃で吹き飛ぶ。


「……二人目。」


静かに呟きながら、俺は黒焔刀を肩に乗せる。


残るは一人――最初に俺たちを”敵”と断言したリーダー格の男。


そいつは明らかに焦っていた。さっきまで余裕の表情を浮かべていたが、今では汗を滲ませ、剣を握る手に迷いが見える。


「どうした? まだやるか?」


余裕の笑みを浮かべながら問いかける。


相手は答えなかった。だが、その表情がすべてを物語っていた。


「……これで終わりだ。」


黒焔刀をゆっくりと下ろし、戦闘態勢を解く。


その瞬間、俺の体がぐらついた。


――あれ?


視界が傾く。


――そういえば、俺……飛行能力……無い……!?


「ちょっ……!!? うわああぁぁぁぁ!!!!」


気づいた時には、すでに俺は空へと落下していた。


「ヒナタ様ぁぁぁぁ!!!!」


リリスの叫びが響く。


やばい。マジでやばい。さっきまであんなに余裕ぶってたのに、まさか自分が落下するとは思ってなかった。カッコつけた直後にこれはキツい……!!


「リリスーーー!!!早く受け止めてぇぇぇ!!!マジで死ぬぅぅぅ!!!」


「えぇぇぇ!?」


「悩むなぁぁぁ!!!」


バッサァッ!! という羽音とともに、リリスが全速力で飛び込んでくる。


……が、ギリギリ間に合わず。


ドォォォォンッ!!!!


俺は盛大に地面に激突した。


静寂。


「……ヒナタ様!? ご無事ですか!?」


「……いたい……」


「間に合いませんでした……!」


「知ってる……!」


「すみません……!!」


「いいから引っ張ってくれぇぇぇ!!!」


リリスに引きずり出されながら、俺は心に誓った。


――今度こそ、飛行能力を手に入れよう、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ