七十四・再び歩む旅路
ガルヴォルグの巨体が地に伏し、辺りには静寂が訪れた。
乾いた風が吹き抜ける。砂塵がゆっくりと落ちていく中、勇者たちはその場に立ち尽くしていた。
「はぁ……っ、はぁ……っ……終わった……?」
駿が肩で息をしながら剣を地面に突き立てる。
朱莉は弓を握る手を震わせながら、荒い息を整えていた。和真も膝に手をつき、疲労困憊の様子だった。
未来は額の汗を拭いながら、蓮を見つめる。
「みんな……無事、だよね……?」
安堵の言葉。しかし、誰もすぐには返事ができないほど、疲れ果てていた。
蓮もまた、剣をゆっくりと下ろし、深く息をついた。
「……強かったな……」
倒したという実感よりも、戦い抜いたという疲労のほうが圧倒的に勝る。
しかし、その中で——朱莉がふと顔を上げた。
「……ねぇ、私たち……強くなってない?!」
その言葉に、全員が息を呑む。
駿が驚いたように拳を握りしめた。
「……確かに……」
和真もメガネを押し上げ、実感する。
「俺たち……あのとんでもない魔獣相手に、“戦えた”んだ……」
最初は押されるばかりだった。
だが、戦うたびに動きが研ぎ澄まされ、攻撃が通じるようになった。
死線を越えるたび、確実に己の力が高まっている。
「……戦いの中で、成長している……!」
蓮の言葉に、全員が力強く頷く。
死線を超え、極限の中で力を磨く——これこそが、“本当の修行”なのだと。
戦いを終え、勇者たちは短い休息を取っていた。
焼けるような陽の光が降り注ぎ、荒野の乾いた大地を照らしている。風が吹き抜け、先ほどまで戦っていた場所の砂塵をゆっくりと巻き上げた。
蓮は剣を鞘に収めながら、仲間たちの顔を見渡す。皆、疲労の色は濃いものの、その表情には確かな自信が宿っていた。
「そろそろ行こうか。」
柔らかい声で告げると、全員が頷いた。
駿が剣を肩に担ぎ、和真はメガネを押し上げながら地図を広げる。
「次の街までは……あと三日はかかるな。」
「まじかよ……また野宿か。」
駿がため息をつくと、朱莉が苦笑する。
「でも、こうやって旅を続けるたびに、私たち強くなってるよね?」
「……まあな。」
豹牙が拳を握りしめる。まだ戦いの余韻が残る手のひらに、先ほどまで感じていた痺れはもうない。
未来は小さく微笑みながら、そっと頷いた。
「うん……確かに、そうかも。」
静かに、それでいて確かな成長を感じながら、勇者たちは再び歩き出した。
広大な荒野を抜け、次の目的地へと向かう。
空は青く澄み渡り、遥か遠くにそびえる山々が陽に照らされている。
地平線の彼方には、新たな試練が待っているのかもしれない。
それでも、彼らは進む。
己の力を確かめるために。さらなる成長を求めて。
勇者たちの旅は、まだ始まったばかりだった。




