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DEMONSMOB〜勇者に巻き込まれて転移した俺の物語〜  作者: はるりん
第1章 転移、そして目覚め
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六十四・赫咬決戦 肆

 ちくしょう……どうしたものか……。


 低級回復で多少はマシになったとはいえ、ダメージはまだ深刻だ。深く息を吸うたびに肋骨が軋む感覚がある。


 それでも、立ち止まるわけにはいかない。


 赫咬獣(かっこうじゅう)はなおも血のオーラを纏い、俺を睨んでいる。さっきよりもさらに力を増したこいつを相手にするには、もう”様子見”なんて言ってられない。


「――これでもくらえぇぇ!!」


 俺は叫び、黒焔刀を振るう。


 その瞬間、俺の身体が自然と動いた。


 黒焔の刃から溢れ出る魔力が周囲の空気を震わせる。足元を蹴り、赫咬獣へ向かって猛突進。右手から漆黒の焔を纏った刃を叩きつけ、左手で瞬時に**༄《焉怒雷》༄**を発動。雷の槍が赫咬獣の身体を貫こうとする。


 赫咬獣もそれを察知し、血の鞭を操り防御を試みるが――


 俺の動きは、さっきまでとは明らかに違っていた。


 ――速い。力が湧き出る。思考よりも先に、身体が攻撃の最適解を導き出し、赫咬獣を圧倒するように攻め続けていた。


 こいつに……半端な攻撃は通用しない。


 赫咬獣の再生能力は異常だ。どれほどの傷を負わせても、周囲の血を吸収することで即座に回復する。まるで無限に蘇る悪夢のように。


 だったら……!!


 その血ごと“消して”しまえばいい。


 だが、どうやって?


 俺は一瞬思考を巡らせる。血を操るということは、それ自体が奴の力の源になっているはず。単純に攻撃するだけではダメだ。根本的に――


 ――燃やし尽くせばいい。


 血の再生が間に合わないほどの圧倒的な炎で、赫咬獣の根源ごと焼き尽くせば……!!


 もう……深緑の森(しんりょくのもり) を巻き込まないなんて言ってる余裕は無い……!!!


 ここで赫咬獣(かっこうじゅう)を仕留めなければ、この森どころか、すべてが奴の餌場になる。


 ならば――


 “燃やし尽くす”しかない。


 その瞬間、空気が揺らいだ。


 足元から紅蓮の焔が立ち昇り、渦を巻くように俺の周囲を包み込む。熱が一気に広がり、大気が焼け焦げる音が響く。赫咬獣が本能的な警戒心を抱いたのか、一瞬身を引いた。


 だが、もう遅い――


 特異能力(ユニークスキル)――


 俺は両手を広げ、魔力を限界まで解放する。


「༄《絶炎焔(ぜつえんほむら)》༄!!!」


 紅蓮の灼熱が爆発的に広がる。


 これはただの炎じゃない。赫咬獣の血すら蒸発させる、“終焉の焔”。


 炎が荒れ狂い、赫咬獣を包み込む。


「最大──────────火力──────────だァ…………!!!!」


 轟音とともに紅蓮の波動が周囲を飲み込み、赫咬獣の咆哮がかき消される。

 地を焦がし、空気を灼く”絶対の焔”が、赫咬獣のすべてを焼き払わんとしていた――!!


 “ゴォォォォォォッ!!!!”


 紅蓮の焔が爆ぜ、轟音とともに周囲の空気を焦がす。赫咬獣の咆哮も、燃え盛る灼熱の奔流にかき消された。


 だが――


 まだだ……まだ……足りない……!!


 俺はさらに両手を突き出し、全身から魔力を放出する。


「もっと熱く……!! もっと強く……!!!」


 焔の渦がさらに巨大化し、紅蓮の光が視界を埋め尽くす。大気が焼け、地面がひび割れ、燃え盛る炎があらゆるものを灰へと変えていく。


 “シュゥゥ……”


 赫咬獣に纏わりついていた紅蓮の焔が、ゆっくりと霧散していく。


 焼け爛れた大地の上に、黒焦げの巨体が沈黙していた。先ほどまでの圧倒的な威圧感も、もう感じられない。


 俺は肩で息をしながら、ゆっくりと膝をつく。


「はァ……はァ……勝てた……」


 全身に襲いかかる疲労と、まだ微かに残る戦闘の余韻。


「……はやく炎を鎮火しなきゃ……!」


 俺は燃え盛る森を見渡す。赫咬獣を倒すことに全力を注ぎすぎた……! このままじゃ、深緑の森(しんりょくのもり) そのものが灰になる!!


「でも……どうやって……?」


 炎を操ることはできても、消す手段は持ち合わせていない。まずい、どうする!?


 その瞬間――


「【氷造形(アイス・モールド)】!!」


 “バキィィィン!!”


 突如として、冷気が辺りを包み込む。猛る炎に白い霜が広がり、瞬く間に氷の壁が形成されていく。俺の視界の先、そこには――


 三姉妹……!?!!どうしてここに……!?


  三姉妹の視線は冷たかった。


 長女・ラミアは剣を抜き、次女・リーリャは弓を番え、三女・ルルンは氷魔法を展開したまま、警戒するように俺を睨んでいる。


 まるで――敵を見るような目で。


「……何者ですか?」


 ラミアの声は微かに震えていたが、確かに敵意を含んでいた。


 忘れてた…!…今の俺は”終焉の魔人”だった…!


「安心しろ……敵では無い。」


 俺は低く静かな声で言う。声色を意識して、“終焉の魔人”としての威厳を保ちつつも、余計な警戒を与えないように――バレるなよ……!!


 三姉妹は依然として俺に警戒を向けたままだ。


 そんな中、次女・リーリャが周囲の焼け焦げた大地と、赫咬獣の無残な残骸を見渡し、呆然と呟いた。


「これを……貴方一人で……?」


 長女・ラミアも驚きを隠せない様子で、黒く焦げた赫咬獣の亡骸を見つめる。三女・ルルンに至っては、信じられないものを見たように口をぽかんと開けていた。


 俺は彼女たちの反応を見ながら、静かに答えた。


「……ああ。」


 頼む……このまま”終焉の魔人”として通せ……!!

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