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DEMONSMOB〜勇者に巻き込まれて転移した俺の物語〜  作者: はるりん
第1章 転移、そして目覚め
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六十三・赫咬決戦 参

「まじかよ……冗談じゃない……!!」


 赫咬獣から溢れ出る威圧感が、肌を刺すように重くのしかかる。呼吸すら圧迫されるような感覚。


 嫌な汗が背中を伝う。手のひらがじっとりと湿っているのがわかる。


 正直――怖い。


 倒したはずの相手が、さらに強くなって甦る。この感覚……過去に何度か経験したことがある。けど、これはそれ以上だ。まるで終わりのない悪夢。


 俺は黒焔刀を握り直し、心の中で必死に叫ぶ。


 リリスさん助けてぇ!!


 ……もちろん、リリスが来るわけもない。


 こんな時だけ都合よく現れてくれたら、どんなにありがたいことか!!


 それにしても……どうしたものか。


 倒しても、周囲の血を吸収して回復されるのならば、削り切ること自体が不可能に近い。 そもそも、どれほどの血を吸収できるのかもわからない。


 考えながら、俺は赫咬獣を睨みつける。どうにかして、この異常な再生能力を封じなければ――。


 “シュルルル……ッ!”


 思考を巡らせている間に、赫咬獣の攻撃が来た。


 さっきまで飛ばしてきた血の刃とは違う。赫咬獣の周囲に浮かぶ赤黒い血が、意思を持つかのように形を変え、無数の**“血の鞭”**となって宙を漂う。


 そして――それが一斉に俺へと襲いかかってきた。


 避けた。だが、今までと違う。鞭は空を裂きながら弧を描き、俺を追いかけてくる。


 ……やばすぎる…!!


 血の鞭はまるで生き物のようにしなり、俺の動きを捉えて容赦なく迫ってくる。俺はさらに身を翻して回避しながら、考える。


 赫咬獣(かっこうじゅう)の血の鞭が、蛇のようにうねりながら俺を追う。


 俺は瞬時に横へ跳び、一本の鞭を紙一重で回避した。だが――


 “シュバッ!!”


 避けたはずの鞭が急旋回し、今度は俺の背後から迫る。


「ッ……しつこいな!!」


 黒焔刀を振るい、血の鞭を弾く。しかし、斬ったそばから血はすぐに形を戻し、また襲いかかってくる。


 俺は連続して飛び回りながら捌き続けるが、赫咬獣はその間にもさらに血を操り、鞭の本数を増やしていく。


 このままだとジリ貧だ……!!


 俺は距離を取ろうと跳躍する。だが、赫咬獣はそれを逃さない。地を蹴り、一瞬で間合いを詰めてくる。


 “ドガァッ!!”


 赫咬獣の爪が俺の黒焔刀とぶつかり、衝撃で弾かれる。


 バランスを崩しかけた俺の隙を狙い、さらに血の鞭が襲いかかる。


 クソ……本当に手数が多い!!


 体勢を立て直しながら、俺は黒焔刀を逆手に持ち替え、鞭を切り払い続ける。


 赫咬獣は余裕を見せるように低く唸り、さらに強烈な攻撃を仕掛けようとしている。


 ――まずいな……このままじゃ、押し切られる!!


 気づいたときには、すでに赫咬獣(かっこうじゅう)が目前まで迫っていた。


 ――速い!!?


 俺の視界いっぱいに、赫咬獣の巨大な爪が広がる。


 回避が間に合わない――


 “ドガァッ!!”


 衝撃が腹部を直撃した瞬間、全身の空気が一気に押し出された。


「やば──────────」


 言葉を最後まで発することもできないまま、俺の身体は吹き飛ばされる。


 “ズガァァッ!!”


 背中から大地に叩きつけられ、激痛が全身を駆け巡る。 衝撃で土煙が舞い上がる。


「……ッ!!」


 熱いものがこみ上げ、口の中に鉄の味が広がった。鮮血が唇を伝い、地面に滴り落ちる。


 立ち上がろうとするが、内臓が軋む感覚に思わず膝をつく。


 ――もし、《漆焔黒服(しえんこくふく)》の防御力がなかったら……間違いなく即死だった。


 痛い……痛い……!


 全身が悲鳴を上げている。


 内臓が焼けるように熱い。肋骨にヒビが入ったか? 呼吸をするたびに鋭い痛みが走る。腕を動かせば関節が軋み、視界は滲んで揺らいでいる。


 地面に倒れたまま、喉の奥で呻く。思考がまとまらない。ただひたすらに、痛みだけが脳を支配する。


 くそ……このままじゃマズい。


 俺は震える手を地面に突き、低級回復を発動させた。


 “シュゥゥン……”


 淡い光が身体を包む。酷く傷んだ内臓が、ほんの少しだけ癒えていく感覚。完全回復にはほど遠いが、少なくとも立ち上がることはできる。


 ――まだ、終われない。

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