五十五・深緑の戦火 伍
あぁ……もう面倒だ……!!
この森じゃ、無闇に炎を放てば全てを焼き尽くしてしまう。 敵だけでなく、この森に住む者たちの命も奪いかねない。
なら――別の手で制圧する!!
༄《焉怒雷》・乱舞……!!
“《バチバチバチバチッ!!》”
轟音とともに雷が弾け、俺の周囲を覆い尽くす。瞬時に放たれた無数の雷撃が空間を貫き、俺を中心に巨大な雷の輪を描きながら荒れ狂う。
“《ズガァァン!!》”
稲妻の嵐が敵を次々と呑み込み、魔族たちの悲鳴が雷鳴にかき消される。
過半数は仕留めた……! だが、まだ終わらない。いくら数を減らそうと、あの転移魔法の使い手を倒さなければ意味が無い……!
どれだけ魔族を蹴散らしても、次から次へと新たな個体が現れる限り、この戦いは終わらない。まるで無限に湧き出す泥沼に足を取られているような感覚。
やはり、先に……そいつを潰す……!!
俺は迷いなく地を蹴り、稲妻の残光を背に爆発的な加速で標的へと跳ぶ。 風を切る音が耳元を裂き、狙いを定めた魔力の流れへ一直線に突っ込む。
――だが、その瞬間。
「すごぃなぁ……今の雷……」
“ガキィン!!”
鋭い爪が俺の軌道を塞ぐ。咄嗟に体勢を崩し、回避しながら着地する。
“カルラ……!”
このままじゃ、ジリ貧だ……!
カルラと戦えば、その隙に魔族が増え続ける。かといって、転移魔法の使い手を狙えば、カルラが必ず立ちはだかる。
どちらを優先しても、もう一方が邪魔をしてくる。まるで、巧妙に仕組まれた袋小路。このまま正攻法で挑んでいては、いずれ押し切られる……!!
しかも、時間が経つほど魔族の数は増え、俺の消耗も激しくなる。持久戦に持ち込まれるのは最悪の展開だ。
ならば――今この場で決着をつけるしかない。
……先にこいつを仕留める。
迷いはない。ここで足止めされ続けるわけにはいかない。
俺は一気に踏み込み、カルラと魔族たちを同時に相手取る。
爪が唸り、牙が閃き、魔力が炸裂する。 次々と襲いかかる猛攻を捌きながら、俺は隙を見つけて反撃を繰り出す。
まるで嵐のような攻防。
だが――
──────────と、見せかけて!!
俺は一瞬、体勢を崩した“フリ”をする。
カルラの目がわずかに細められ、魔族たちの動きが一瞬乱れる。
その瞬間――俺は全力で狙いを切り替えた。
「本命は……おまぇだぁぁ!!!!」
俺の右手を中心に、魔力の圧が風となり、荒れ狂うように渦を巻く。 空気が震え、地面がひび割れる。
「࿓《神薙》!!!!」
“《ズガァァァァンッ!!》”
俺の右手から放たれた斬撃――赤黒い稲妻をまとった黄金の刃が、空間ごと引き裂くように疾走する。
逃げる暇なんてない。回避なんて許さない。
――その一閃は、転移魔法の使い手の身体を真っ二つに切り裂いた。
“《ギャアアアアアッ!!》”
魔族の断末魔が青空の下に響き渡る。
黄金の軌跡が消えた瞬間、転移魔法の魔力の流れが途絶えたのがはっきりと分かった。
──────────
その瞬間――
空気を裂く鋭い殺気。
カルラの予測不能な剣先が、まるで影のように俺の懐へ滑り込んできた。
軌道を読ませない、不規則で狂気じみた一撃。避ける隙も、受け止める余裕もない。
しまった……油断した──────────




