五十三・深緑の戦火 参
このまま弓矢で遠距離攻撃した方が得策かな……。
接近戦を挑む必要はない。敵の数が多い以上、遠距離から確実に減らしていくのが最適解だ。
――それに、練習にもなるし!!!
俺は弓を構え、ゆっくりと息を整える。
さっきの3つのスキル、発動!!!
࿓《絶炎焔》(ぜつえんほむら)!
࿓《千里眼》(せんりがん)!
࿓《魔力操作》(まりょくそうさ)!
瞬間、視界が広がり、敵の位置と動きが明確に捉えられる。
同時に、燃え盛る赤き炎が弓を包み、強烈な魔力が矢に込められる。
発射!!!
矢は轟音とともに空を切り裂き、一直線に標的へ――
――からの、《魔力操作》による分散!!
矢は軌道上で分裂し、5つに別れた。
それぞれが異なる角度で飛び、狙いを外さぬまま複数の魔族へと向かっていく。
(……よし!! これなら一気に仕留められる!!!)
さっきまでと違い、威力を抑える必要も無い……!!
“《ゴォォォッ!!》” “《シュバァァァッ!!》”
炎の矢は、狙い違わず魔族たちへと突き進む。
そして――
“《ドガァァァァンッ!!!》”
全弾、命中。 瞬間、爆炎が爆ぜ、轟音とともに大気を揺るがした。 衝撃波が周囲の木々を揺らし、紅蓮の閃光が夜の森を照らし出す。
魔族たちは悲鳴を上げる間もなく、炎の渦に飲み込まれていった。……よし!! これで少しは数を減らせたはずだ!
「ほらほら! まだまだァ!!」
“《ゴォォッ!!》” “《ドガァンッ!!》”
燃え盛る矢が次々と魔族を貫き、爆炎と衝撃波が森を揺るがす。
「もういっちょっ!!」
俺は止まらなかった。矢を番え、次から次へと放つ。狙いは外さない。狩るべき標的は、千里眼の視界にすべて映っている。
(……なんだろうな、この感覚。)
楽しい。無駄に気を張る必要がなく、ただ本能のままに敵を仕留める。
久々の感覚。まるでシューティングゲームをしているみたいだ。
魔族たちの動きは読める。どのルートを通り、どこで動きを止めるのか――まるで、決められたパターンの敵を処理しているかのように、すべてが手に取るように分かる。
過半数はやっただろうか……。これなら、あっさり片付きそうだな。
そう思った瞬間――
ん? 避けられた?
確かに命中するはずだった矢が、わずかに軌道を逸れた。狙いは完璧だったはず。速度も問題ない。なのに、ギリギリのタイミングでかわされた。
まぁ、たまたまだろ。なら、もう1発!
俺はすぐさま次の矢を番え、同じ軌道で放つ。
“《シュバァッ!!》” “《ドォンッ!!》”
しかし――
まただ……!!
今度も、矢が狙いを外れる。違う。外れたんじゃない。避けられた。
反射的な動きじゃない。明らかに俺の攻撃を見切っている……!!
なかなかやるな。単なる雑魚ではない。俺の攻撃に対応できる相手がいる……!!
このまま遠距離戦を続けても、こいつには通じないかもしれない。今までの敵とは違う。少し面倒だな……。
なら、遊びはここまでだ。俺は静かに炎の弓を消した。
そして──────────
封印の跡地。闇に沈む森の奥、かつて”何か”が封じられていた遺跡。砕けた石碑と、漂う魔力の残滓が静かに蠢く。封印はすでに解かれていた。
その場に佇む”影”が、崩れた封印を見下ろし——
「クク……」
低く、愉悦に満ちた笑みを零す。風が吹き抜け、森が軋む。




