五十一・深緑の戦火 壱
「そ、そうだな〜……一番年上で経験の多い……ラミアさんかな〜……?」
俺は適当に言ってみる。
ただの**“感”だ。いや、全く役に立たない俺の“感”**だが!!!
すると、ラミアが微笑みながら頷いた。
「ふふっ。ヒナタさんは見る目がありますね!」
嬉しそうな表情を浮かべるラミア。
(よし、なんかいい感じに収まった……?)
そう思ったのも束の間――
俺はふと、隣にいる二人の視線に気づく。
……次女・リーリャと三女・ルルンが、静かに怒りを滲ませていた。
目が据わってる。めっちゃ睨んでる。
(やばい、これ……勝負の火、完全に着いちゃったやつだ……!!)
リーリャはニコニコしながらも、どこか冷たい笑みを浮かべているし、ルルンは**「むぅー!!」**と頬を膨らませて怒っている。
いや……これ、どう答えても――
“詰んでるんですけど──────────”
俺たちは、《常葉の庵》を離れ、深緑の森奥地まで来ていた。
そして――遊び、もとい勝負が始まる。
凄まじい速度で森を翔ける三姉妹。
枝から枝へと飛び移り、木々を縦横無尽に駆け抜けながら、弓を引き絞る。
“シュバッ!” “ヒュンッ!!”
矢が風を切り裂き、標的を正確に射抜いていく。
“ドスッ!” “ズバンッ!”
獲物が次々と仕留められ、森に静かな余韻が残る。
「やった! これで5匹目……!!」
三女・ルルンが嬉しそうに飛び跳ねる。
「ふっ! 私はこれで8匹目よ……!」
長女・ラミアが挑発的に笑う。
「これで11体目……。」
次女・リーリャがニヤリと口角を上げる。
「ずるぅい……!! リーリャお姉ちゃん、ズルしてるでしょ!!」
ルルンが悔しそうに叫ぶ。
「ふん……ズルも実力のうち。」
リーリャは涼しい顔で言い放つ。
どうやら、彼女は索敵や追尾系の魔法を駆使していたらしい。
(……というか俺、何見せられてんだ?)
完全に蚊帳の外の俺。そんな中、ルルンが俺の方を振り向き、詰め寄ってくる。
「審判……! これは不正ではないですかぁ?」
そう、どうやら俺は審判らしい。
「まぁ……でも……確かに魔法の使用制限は決めてないからなぁ……それも実力のうちってことで……。」
「むきっっー!!」
ルルンが怒りのあまり地団駄を踏む。
「私たちがそういう魔法を使えないことをいいことに……!!」
そう言いながらも、すぐに再び勝負へと意識を戻す三姉妹。
俺はそんな彼女たちを見ながら、ふと思う。
(それにしても……リーリャのあの魔法と弓、だいぶ厄介そうだな。)
純粋な弓の技術だけでなく、魔法によるサポートまで組み合わせている。
(意外だな……次女が一番の弓使いだったなんて。)
俺は腕を組みながら、彼女たちの戦いを見守るのだった。
──時が流れた。
森の静寂の中、勝負が終わりに近づこうとしていた、その時――
“ザッ……!”
(ん……!?)
何かが引っかかる。
急に、異様な気配を感じた。
しかも……一体じゃない。複数体いる。
(まさか……魔族か……!?)
俺は感覚を研ぎ澄まし、周囲を探る。
そのうちの一体が、猛スピードでこっちに向かってくる。
(……俺たちの存在に気づいたのか……!?)
距離はまだ離れている。それでも、この速度と正確さ――ただの偶然とは思えない。
だが、一体だけが向かってきているということは、他の魔族たちはまだ気づいていない。
(……ってことは、今ならまだ対処できる!!)
しかし――
三姉妹はまだ気づいていない!!
(まずい……! このままだと、あと数十秒でここに到達する!!)
仕方ない……俺の得意な遠距離能力で迎撃するしか――
(……いや、ダメだ。)
俺の攻撃は、どれも威力が大きすぎる。
ここでド派手な一撃を放てば、確実に他の魔族にも気づかれる……!
(ならば……ここのやり方でやらせてもらおう!!)
俺はすぐに魔力を練り、形を変える。
࿓《絶炎焔》を弓形態に変更!!
容量は、以前剣を作り出した時と同じ。
燃え盛る赤い炎が形を変え、俺の手の中で深紅の弓となる。
次に――
࿓《鑑定眼》を使用し、相手の距離を……!!
……ダメだ!!
鑑定眼では、把握しきれない……!!
(クソッ……!! これじゃ、正確に狙えない!!)
その時、視界の端に突如として文字が浮かび上がる。
――《࿓鑑定眼ノ変異進化ヲ実行シマス……》
(……なに!?)
脳内に流れるように現れる、冷たく無機質な文字列。
――《࿓鑑定眼ヲ……》
――《࿓千里眼ニ変異進化シマシタ──────────》
一瞬、視界がぶれる。
次の瞬間――
俺の目は、すべてを見通す力を得た。




