四十七・避けられぬ選択
「ここが…ウッドエルフの集落…!!」
目の前に広がるのは、まるで絵本の中のような幻想的な景色。
木々の間に家々が建ち並び、それぞれが木の幹や太い枝に寄り添うように作られている。家の壁は苔やツタに覆われ、自然と一体化しており、木の上にも吊り橋のような通路が張り巡らされている。
夜空には無数の光が舞い、宙に浮かぶような青白い花が優しく光を灯している。 川の水面には淡い光の粒が流れ、風が吹くたびに葉がささやくような音を奏でる――まるで、森そのものが生きているかのような場所だった。
(……すげぇ。)
思わず息を呑む。こんな幻想的な場所、俺の世界にはなかった。
「はい…! こちらへどうぞ!」
長女ラミアが俺を案内し、とある家の前で立ち止まる。目の前に現れたのは、集落の中でもひときわ大きな屋敷。
他の家々が自然と一体化したような造りなのに対し、ここはどっしりとした威厳を感じさせる建物だった。
俺は彼女の言葉に従い、ゆっくりと扉の前に立った。
(さて……ここで何を聞かされるのやら。)
少し緊張しながら、俺は扉の向こうに意識を向けた。
「ちょっと待っててね! …じゃなくて、待っててください!」
三女のルルンが慌てて言い直しながら、姉たちと一緒に家の中へ入っていく。
……俺一人を残して。
周囲を見渡すと、集落のあちこちからウッドエルフたちが不思議そうにこちらを見ている。
(そんなに見ないで……。)
なんとも言えない視線が突き刺さる。
俺はなんとか平静を装いながら、適当に視線を逸らした。くそ……めちゃくちゃ居心地が悪い。
「どうぞ〜!!」
三女のルルンが元気よく顔を出す。
俺は案内に従い、彼女の後をついていった。
扉をくぐると、すでに数人の人物が待っていた。
そこにいたのは――
さっきの三姉妹と、老人、女の老人、そして若い男が二人。
(なんだ……? まぁ、この雰囲気……この人が長老ってやつだろう。)
中央に座る老人の目は鋭く、それでいてどこか穏やかな光を宿していた。
「こ…こんにちは…」
俺は勇気を出して挨拶をする。
でも、怖いなぁ……この雰囲気。
この場にいる全員が俺をじっと見つめ、なんとも言えない沈黙が漂う。
(やっぱり、場違いなところに来ちゃったかな……。)
そう思った瞬間――
「ありがとうございます……!!!」
突然、長老が深々と頭を下げた。
(……え?)
思わず固まる。さっきまでの緊張感はどこへやら、空気が一気に変わった。
(俺、何かしたっけ……?)
困惑しながら、俺は長老を見つめた。
長老は深く頭を下げたまま、感謝の言葉を口にする。
「三姉妹から聞きました! 貴方様がこの村を救ってくださると……!!」
えぇ……待て待て。
なんか決まってるみたいな言い方してるけど、俺、そんなこと言ってないよ!?
ハメやがったな! 三姉妹……!!
俺はじっと彼女たちを睨む。
すると――
三姉妹は、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべた。
(……いやいや、可愛く誤魔化そうとしてもダメだからな!?)
俺は頭を抱えながら、ため息をついた。
まぁでも……今日はもう疲れてるし、ここで休めるってのはこっちにとっても好都合だ。
それに、今すぐ断ったところでどうにもならなそうだしな……。
仕方ない。人助けも“情けは人のためならず”って言うしな……。
俺はひとつ息をつき、長老をまっすぐ見た。
「詳しく話を聞かせてください。」
すると、長老は深く頷き、他の者たちもほっとしたような表情を浮かべる。
……まぁ、どう転んでも楽な道じゃなさそうだけど、とりあえず話くらいは聞いてやるか。




