四十一・襲撃 弍
「……いやぁ……終焉の魔人は、正直使いたくねぇんだよな……。」
俺は額を押さえながら、ため息をついた。
あのキャラ設定をもう一度やるのかと思うと、色んな意味で胃が痛くなる。
だが、状況によっては……いざとなったら仕方ない。
……まぁ、とりあえず、今考えるべきはそこじゃねぇな。
今、俺が最優先すべきこと――
それは、他の生徒たちを守ることだ。
「……」
俺たち一般生徒は、勇者ではない。
でも、“一般”とはいえ、こっちの世界に飛ばされてきた時点で特殊な能力を持つ者たちでもある。
戦えないわけじゃない。
むしろ普通の人間よりはよっぽど手強いはずだ。
だが――
……相手は、本業の殺し屋かもしれない。
この状況、向こうが単なる賊とは思えない。
もし、本気で仕留めにきているなら……
俺たちは、無傷では済まない。
「……さてと。」
「……はぁ。」
俺は深く息を吐き、重い腰を上げる。
考えてばかりいても、状況は変わらない。
「リリス、俺も様子を見に行く。」
「ふふっ、ようやくですね♪」
なんか楽しそうな声が返ってきたが、今は気にしている場合じゃない。
城内に”賊”が侵入している。
相手の目的も、戦力も分からない。
下手に動くのは危険だが……情報なしで何もしないのも、もっと危険だ。
俺は静かに部屋の扉を開ける。
「リリスは城の外を頼む! 味方にも気づかれないように!!」
俺は短く指示を出す。
「了解しました♡ では私は、影よりヒナタ様を見守っておりますね……♪」
リリスの楽しげな声が頭に響く。
こいつ……やっぱりこの状況を楽しんでるよな……?
とはいえ、今はリリスに構っている場合じゃない。
俺は静かに廊下へ踏み出し、城内の様子を探ろうとした――
“ドォォォン!!”
突如、外から激しい衝撃音が響いた。
「……っ!」
ただの小競り合いなんてもんじゃない。
城の壁にまで振動が伝わるほどの大規模な戦闘が始まっている。
「……外も荒れてるな……!」
どうやら、リリスの方もすでに交戦状態に入っているらしい。
そして――
城内でも気配が変わった。今の爆発音で、さすがに他の生徒たちも異変に気づいたはずだ。
すでに廊下の奥から、誰かのざわめきや足音が聞こえてくる。
「……マズいな。」
こうなると、余計な混乱が広がる。
その時だった。
“きゃぁぁぁ!!”
「!!?」
どこかで、悲鳴が響く。
「おいおい、マジかよ……。」
もう襲われてるのか!?
このままだと、被害が広がる可能性がある!!
「……急がなきゃ!!」
俺は一気に駆け出した。
悲鳴の聞こえた方へ――!
悲鳴の聞こえた部屋――それは談話室だった。
どうやら、外の異変に気づいた何人かの生徒が集まっていたらしい。
しかし、そこには――
「や……やめろぉ!!」
床に倒れ込む、一人の生徒。
そして、そいつに剣を向ける黒装束の賊。
さらに、今まさに三浦さんへと刃を振り下ろそうとしている――!!
「……!!」
やばい!!
今すぐ止めないと、三浦さんが危ない!!
だが、ここで俺が普通に飛び出していけば、余計な注目を集める。
(……仕方ない! 誰にもバレるなよ!!)
俺は素早く指を相手に向ける。
༄《焉怒雷》༄・超極小!!
指先から、細い糸のような雷が疾走する。
ピシッ……!!
「――!!?」
雷が静かに炸裂し、賊の体が一瞬硬直する。
その直後――
バタンッ!!
「……え?」
三浦さんの目の前で、賊は崩れ落ち、そのまま気絶した。
「な、何が……?」
談話室に集まった生徒たちは、突然の出来事に唖然としている。
俺は静かに息を潜めながら、次の展開を見守った。
誰にも、俺の仕業だとは気づかれるなよ――。
「な、どうして……急に倒れたんだ!?」
誰かが混乱した声を上げる。
「分からない! 毒でも盛られてたのかも……」
俺は苦し紛れの説明をした。
いや、実際は**俺の《焉怒雷》**なんだけどな。
「理由は何にしろ、助かった……。」
三浦さんが崩れるように腰を抜かす。
ほっと息をつく生徒たち。
だが、安心するのはまだ早い。
「なにはともあれ! 早く他のみんなと合流した方がいい!!」
そう言ったのは、頼りになる存在――
五十嵐 努。
まぁ、悪い奴じゃない。
しっかり者だし、クラスでもまとめ役をやってる。
……ただ、少し暑苦しいんだよね。
「よし! 皆、二人一組になって全部屋を周り、ここに集合だ!!」
五十嵐が手早く指示を出す。
「了解!!」
生徒たちはすぐに動き出し、俺も彼の提案に乗ることにした。
数分後――
無事、生徒全員が談話室に集まっていた。
「……さて、次はどうする?」
状況は落ち着いたように見えるが、まだ賊の脅威が去ったわけじゃない。
それにしても……おかしいな。
談話室に集まった生徒たちを見渡しながら、俺はふと違和感を覚えた。
(族共は知能が低いのか……?)
もし俺たちの暗殺が目的だったなら、もっと確実な方法があったはずだ。
例えば、俺たちが寝静まっている時に奇襲をかければ、ほぼ抵抗できずにやられていた可能性が高い。
なのに、わざわざ城内に侵入し、派手に騒ぎを起こしている――
(これは……何かがおかしい。)
……まぁ、単純に俺たちが思ったより強かったってのもあるかもしれないが。
談話室の隅で、俺は壁にもたれながら、周囲の会話に耳を澄ませた。
「俺たちの班で二人仕留めた。」
「こっちも一人……でも、なんか妙だったよ。」
「妙?」
「うん……なんていうか、動きが変だった。異質っていうか……。」
「異質?」
「うまく説明できないけど……普通の戦い方じゃなかったっていうか……。」
俺は目を閉じたまま静かに考える。
(……異質な動き……か。)
ただの賊なら、戦い慣れているはずだ。
それなのに、生徒たちが”普通の戦い方じゃなかった”と感じるほどの違和感――
(まるで、戦闘そのものに違和感があるみたいな言い方だな……。)
戦闘が目的ではない? それとも、何か別の要因が……?
俺は何も言わず、ただ黙って思考を巡らせる。
(……まだ、何か起こるかもしれないな。)
俺は静かに息を吐いた。
談話室の空気が、少しずつ緊張感を帯びていく――。
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