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DEMONSMOB〜勇者に巻き込まれて転移した俺の物語〜  作者: はるりん
第1章 転移、そして目覚め
35/151

三十五・後始末 参

俺は腕を組みながら、リリスの話を聞いた。


どうやら、リリスは俺や勇者たちよりも早く、あの森にいたらしい。


「……は?」


話を聞き進めるうちに、俺の眉間のシワが深くなる。


リリスは、森でカイラナを見かけた瞬間に、俺に倒してほしいと思ったらしい。


「……いやいや、おかしくね?」


俺は思わずツッコむ。


「お前が戦えばいいじゃん!! 瞬殺じゃん!!」


リリスの実力なら、カイラナなんて秒で片付くはずだ。


なのに、なぜか俺にやらせた。


……理由を聞いて、さらに衝撃を受ける。


「ヒナタ様の存在を、世界中に知らしめたいんです♡」


……いやいやいや、俺、そんなこと望んでないんだけど!?


マジかよ……そんな理由のために、俺はあんな恥ずかしい”終焉の魔人”ロールプレイをやらされてたのか!?


俺の中で怒りが込み上げる。


……が、リリスの話はまだ終わっていなかった。


「それでまぁ、ヒナタ様の邪魔にならないように……」


「カイラナの部下共は、森に侵入する前に倒しておきました♡」


「…………」


え、何それ。


俺が”終焉の魔人”としてド派手に戦ってる間、

リリスは裏でカイラナの部下を皆殺しにしてたってこと……?


俺の戦い、最初から最後まで完全にリリスの掌の上だったんじゃ……??


「…………」


俺は無言のまま、空を見上げた。


やっぱり、こいつが一番ヤバいんじゃね……?


「何はともあれ……! これで世界中の強者共にヒナタ様の存在が知れ渡ることでしょう!!」


リリスが満面の笑みで宣言する。



俺の思考が一瞬止まる。おいおい、マジかよ……?


それってつまり――俺、もう平和に暮らせないじゃん!!!


ただでさえ、“終焉の魔人”なんてヤバいキャラを演じたばっかりなのに……


世界中の強者たちに俺の存在が知れ渡ったら、絶対ヤバいことになるじゃん!!


しかも、俺は**“終焉の魔人”(あれ)**をまたやらなきゃいけないのか……!?


「……勘弁してくれ……」


俺はその場に崩れ落ちそうになった。


だが、リリスはそんな俺の気持ちなど知る由もなく、満足げに微笑んでいた――。


俺の安息の日々は、もう戻ってこないのかもしれない……。


まぁ……リリスと出会った時点で、俺の安息の日々なんて終わってたんだろうな……。


今さら嘆いても仕方ない。


「……はぁ。」


俺は深いため息をつき、空を仰ぐ。


――諦めよう。


何をどう足掻いたところで、リリスがいる限り平穏な人生は二度と訪れないのだから。







場面は変わり、俺は紫苑の部屋まで来ていた。


「……さて、こいつの様子でも見ておくか。」


昨日、俺が背負って帰ってきた時は完全に気絶していたけど、今はどうなっているのやら。


ノックもせずにドアを開け、俺は紫苑の部屋へと足を踏み入れた――。



“ゴゴゴォ”




え……?


部屋に入った瞬間、異様な空気を感じた。


「……ヒナタァ……くん??」


紫苑がベッドからゆっくりと起き上がり、こちらを見ている。


だが、その表情が……


ヤバい。


怒りを押し殺したような半笑いの、不気味な顔。


「あれ……?」


俺は違和感を覚えた。


この状況、どこかで……


「……あ。」


まるでさっきの俺とリリスのやり取りみたいじゃね!?


もしかして俺、リリスに怒った直後に、紫苑から同じことされる流れ!?


「え、ちょっと待っ――」


言い終わる前に、紫苑がベッドから立ち上がった。


この状況――絶対ヤバいやつじゃん!!!



俺は殴られるかと身構えた。


だが――違った。


「怖かったんだからねぇぇ!!?」


「……え?」


「ほんとに……グスン……死ぬかと……思ったんだからねぇ!!?」


紫苑は俺の下半身に抱きつき、号泣していた。


「……え?」


俺は完全に呆気にとられる。


「お、おい……?」


「お前が助けを呼びに行ったあと……すぐに力尽きたんだぁ……グスン……」


「……あー……うん。」


「薄れゆく意識の中で……俺は悟ったんだ……ここが俺の死に場所なんだなって……」


「…………。」


いやぁ……まぁ……確かに、悪いことをしたとは思う。


俺が助けを呼びに行った(実際はカイラナと戦ってた)せいで、紫苑は極限状態で放置されてたわけだし。


「……ご、ごめん……?」


俺は恐る恐る謝る。


が――


「それで済むかァァ!!!」


紫苑が俺の足にしがみついたまま、叫ぶ。


「そもそもお前が俺を誘わなきゃ、こんなことにはならなかったし…………」


「…………。」


いや……ほんとにごめん……。


俺は何も言えず、ただ静かに謝るしかなかった。


数分後――


少し落ち着きを取り戻した紫苑と、ようやくまともに話ができる状態になった。


俺は椅子に座り、紫苑に向き直る。


「いいか、紫苑。昨日のことは絶対に! 他の人には言っちゃダメだよ! 絶対に!!」


念を押すように強調する。


「……は?」


紫苑が怪訝そうな顔をする。


だが、これは絶対に譲れない。頼むぞ、ほんとに。俺の存在が怪しまれる可能性があるんだ。


カイラナとの戦闘、“終焉の魔人”の名乗り、すべてがバレたらとんでもないことになる。


ここは絶対に口止めしなきゃ――そう思った矢先、


紫苑が突然勢いよく立ち上がった。


「待て……! 俺は誰よりも……!! 活躍しただろう!!?」


「……え?」


「あの”勇者”たちを助けたんだぞ……!! 俺が!! 俺の能力があったからこそ!!」


「…………。」


「賞賛されてもいいんじゃないか!!?」


「…………。」


……まぁ、それはそうだけど!!


でも……でもな!?


俺は必死に頭を回転させる。


どうする……!? どう納得させる……!?


考えろ、考えろ……!!!






閃いた!! その名も……影の英雄プラン!!

俺は拳を握りしめ、紫苑に向かって真剣な表情を作った。


「……紫苑、お前さ……気づいてないのか?」


「は? 何が?」


「お前は今、“英雄”を超えた存在になったんだよ。」


「…………は?」


「そう……それが、影の英雄――!!」


「影の英雄……?」


紫苑が俺の言葉を復唱し、眉をひそめる。


よし、食いついたな。ここから一気に押し切る!


俺は大げさに腕を広げ、堂々と宣言した。


「表で活躍し、称賛される勇者たち……。だが、本当に世界を救うのは、彼らの**“影”**で動く存在だ!」


「…………」


「そう、お前はただの助け役じゃない! 影で勇者たちを支え、世界を守った“本当の英雄”なんだよ!!」


「……本当の英雄……。」


紫苑が小さく呟く。


よし、このままいけば……!!


俺はさらに熱く語る。


「考えてみろ! 世の中には表に出て評価される奴と、裏で本当に活躍する奴がいる。お前はその後者――影の支配者なんだ!!!」


「……影の、支配者……!!!」


紫苑の目がキラリと光る。


いける!!! これは確実に刺さった!!!


「だから、このことは誰にも言わず、静かにその力を蓄えろ……!」


「……そうか……俺は影の英雄……!! そうだよな……!!」


「ふっ……なら、影の英雄として、俺はこの秘密を墓場まで持っていくぜ!!!」


作戦成功!!!!!


俺は心の中でガッツポーズを決めながら、ホッと胸を撫で下ろした。


これで紫苑が余計なことを喋ることはない……!


──はずだった。


「でもさ……やっぱり表の英雄のほうが、メシとかモテとか考えると美味しくね?」


「お前ぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


俺の影の英雄プラン、危機的状況!!!


仕方ない……こうなったら使うしかないか……!!


“切り札を”!!


俺は軽くため息をつき、紫苑にゆっくりと近づいた。


紫苑はまだ、「やっぱり表の英雄のほうが……」とかブツブツ言っている。


……チッ、面倒くせぇ。


ならば――ここは、確実に奴を黙らせる一手を打つしかない。


俺は紫苑の肩に手を置き、耳元で静かに囁いた。


「なぁ……紫苑。」


「……ん?」


「黙っててくれたら、七瀬さんとのデート……取り付けてやるよ?」


「!!??」


紫苑の全身がピクリと震えた。


「お、お前……マジで!?」


俺はフードを軽く直し、余裕の笑みを浮かべる。


「……もちろん。」


この場を乗り切るためなら、多少の犠牲は仕方ない。


すると――


「うん! 分かった!! 黙ってる!! 親友の頼みだからね!!!」


即答。俺は思わず口を開けたまま固まる。


……なんて奴だ。こうもあっさり。


さっきまでの影の英雄理論は何だったんだ……?


「ま、まぁ……ならいいんだけど……」


紫苑はすっかりご機嫌になり、鼻歌まで歌い始めた。


……七瀬さんには悪いが、犠牲になってもらおう。


こうなったら、後で土下座してでも「紫苑とご飯行ってきて」って頼むしかないか……。


「はぁ……俺の胃が痛くなりそうだ……」


俺は頭を抱えながら、これでようやく問題が解決したことを実感した。


……いや、別の問題が生まれた気がするけど。


こうして、紫苑の口封じは完了した――!!


……はずだった。


「よぉし!! 俺、七瀬さんとのデートに向けて準備するわ!!」


「……え?」


紫苑が突然、キラキラと輝いた目で俺の肩を掴んできた。


「な、何を言って――」


「ヒナタ!! どんな服がいいと思う!? いや、まずは髪型か!? やっぱりセットしたほうがいいよな!?」


「お、おい落ち着け――」


「あと、デートプラン!! どこに行けば七瀬さんは喜ぶ!? お前、女の好み詳しいだろ!? いや、お前が考えろ!!」


「えぇぇ……」


なんだこのテンションの高さは。


完全に舞い上がってる。


ていうか、デートとか言ったけど、俺は「一緒にご飯行ってくれ」くらいの軽い意味だったのに!?


「ちょ、ちょっと待て紫苑。そもそもまだ七瀬さんに話してないし――」


「問題ない!! お前が約束したんだから、責任を持って話を通せ!!!」


「……はぁ?」


俺が言葉を失っている間に、紫苑はベッドから勢いよく立ち上がる。


「うおおおぉぉぉ!! 俺の時代がきたァァァ!!!」


「……ちょっと待て、勝手に時代作るな。」


完全に調子に乗っている紫苑を前に、俺は頭を抱えた。


……いや、待て。


これはまずい。


冷静になれ、俺。


もし七瀬さんが「は?」って顔をして拒否したら、紫苑の機嫌が悪くなるどころか……「じゃあやっぱり口を開こうかな~」とか言い出す可能性がある!!


「……くそっ、完全に墓穴掘った……!」


俺の中で、次なる**ミッション『七瀬さんを説得する』**が確定した瞬間だった。



こうして、紫苑の口封じは完了した――!!


……が、今度は七瀬さんという新たな試練が俺を待ち受けていた。


「……そもそも無理じゃね?」


紫苑のテンションは最高潮。


だが、俺はすでに悟っていた。


「というか……今の七瀬さんの精神状態じゃ、デートどころじゃないんだよなぁ……」


昨日の戦いで、勇者たちは死にかけた。


七瀬さんも例外じゃない。

ようやく回復したばかりの彼女に、いきなり**「デートしよう!」**なんて言ったら、どうなるか――


確実にドン引きされる。


さらに――


「そもそも、俺みたいなモブが、勇者のヒロインである彼女を誘えるのかって話だし……」


俺の立場を考えろ。


俺=ただの一般生徒。

七瀬=勇者一行の主要メンバー。


この時点で、もう無理ゲーだろ。


「……ハァ。」


俺はため息をつく。


紫苑は相変わらず**「どうやって告白しようか」とか「プレゼントは必要か?」**とか、一人で盛り上がっている。


俺のことなんか、もう見えてすらいない。


「……まぁ、考えるのはまた今度にしよう。」


俺は軽く伸びをして、現実逃避を決めた。


とりあえず、今は休ませてくれ……。


七瀬の説得という爆弾は、後回しだ。


俺の頭痛は、しばらく収まりそうになかった――。

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