三十四・後始末 弍
それから数時間後――
俺はようやく、王都の宿までたどり着いた。
「……はぁ、着いた……。」
全身がズシリと重い。
紫苑をおぶりながら、フラフラの身体でなるべく急いで走ってきた。
戻りが遅くなりすぎると怪しまれるからな……。
それにしても――
「……おい。」
俺は背中の紫苑をチラッと見た。
気絶中のアホヅラ。
口が半開きで、なんとも間抜けな表情をしている。
「……俺が必死に頑張ってんのに、なんかムカつく!!」
思わず軽く揺さぶりたくなったが、さすがに疲れすぎてそんな気力もなかった。
「はぁ……とにかく、寝よ。」
俺は紫苑を適当な場所に下ろし、大きく息を吐いた。
長かった……でも、なんとかやりきった。
翌日――
俺は目を覚ました。
「……よく寝た……。」
昨日は疲れたからな。色んな意味で。
戦闘、演技、撤退、気絶しそうになるのを耐えての帰還――
まぁ、無事に乗り切ったんだから良しとしよう。
そして、俺は勇者たちのその後について、他の生徒から話を聞いた。
内容はこうだ。
勇者たちは、気絶から目を覚ました七瀬さんが即座に治療し、全員が回復。
その後、全員で王都へ帰還。
……やっぱり、俺の作戦は完璧だった!!
……はずだった。
「……ん?」
話を聞いていると、どうも妙な点がある。
どうやら、元々一緒にいたはずの馬車の運転手がいなかったらしい。
その結果、勇者たちは徒歩で王都まで戻ってきたらしい。
……5時間かけて。
「……えっ。」
ちょっと待て。
確かに、俺もあの戦いの最中で馬車の運転手のことなんて完全に忘れてた。
「……あの馬車の人、そういえばいつの間にかいなくなってたよな?」
となると、可能性は――
「……逃げたのか?」
もしそうだとしたら……
俺の作戦、完璧どころか普通に苦行を強いたことになってないか……?
……なんてこった。
俺は額を押さえながら、深くため息をついた。
まぁ……なにはともあれ、全員無事で一件落着だね!
うんうん、俺のお・か・げ! で助かったわけだし!!
計画通り、七瀬さんが回復して、勇者たちは帰還。
……徒歩で5時間 かかったらしいけど、それくらいの苦行は……
「……まぁ、勘弁してね!」
俺は軽く肩をすくめ、気楽に流すことにした。
だって俺、ちゃんと”終焉の魔人”としての役割を全うしたし?
敵も撃退したし?
気絶してた勇者たちを助けたのも、全部俺!!
「うん、やっぱり俺の作戦は完璧だったな!」
俺は満足げに頷いた。
細かいことは気にしない。大事なのは――俺はバレずにやり遂げたってこと!
さてと……勇者たちのことも分かったし。
次に確認すべき、一番気になることがある。
俺が気になること――それは──────────
「ねぇ……リリスさんや……」
「昨日は一体……どこに行ってたのかな……??」
ごごごごぉぉぉ……!!
俺は怒りのオーラを纏いながら、街外でリリスと向かい合っていた。
リリスは俺の表情を見て、明らかに焦っている。
「ち、違うんですよッ!! ヒナタ様……!!」
「私は、ヒナタ様のことを想って……それで! それで……!!」
「リ・リ・スゥゥゥ!!」
「ご、ごめんなさァい!!!!!」
リリスが全力で謝罪モードに突入。
しかし俺の怒りは収まらない。
なぜなら――
昨日のあの地獄を、俺はたった一人で乗り越えたのだから!!!
さて……じっくりと話を聞かせてもらおうか――!?




