三十・終焉に導く者 伍
俺はカイラナの猛攻を、余裕のふりをしてギリギリで避け続けた。
やべぇ……!
マジで速い。さっきより確実にスピードが上がってる。しかも、間合いを詰める動きが巧妙すぎて、回避のタイミングを少しでも誤ったら確実に斬られる。
正直…考える余裕なんてない!
歯を食いしばりながら、俺は最小限の動きで回避を続ける。
だが、カイラナの方も違和感を感じ始めたようだ。
(ちッ……コイツ……一体いつまで余裕なんだァ?)
(底が見えねぇな……!)
鋭い爪を振るいながらも、カイラナの表情にわずかに焦りが見え始める。
――よし、こっちのペースに引き込めてる。
内心はめちゃくちゃキツいが、“終焉の魔人”としての余裕は崩さない。
俺はフードの奥で薄く笑いながら、静かに呟いた。
「……その程度か?」
カイラナの動きが、一瞬だけ硬直する。
――今だ!!
俺は黒焔刀を強く握りしめ、次の一手に出る準備を整えた。
俺は黒焔刀を大きく振り下ろした。
ゴォォッ!!
炎の渦が炸裂し、その場を圧倒する。
「チッ……!」
カイラナは即座に後方へ跳び、攻撃を中断した。
――よし、攻撃が止んだ……!
だが、問題はここからだ。
また近距離戦に持ち込まれたら――次こそは危険だ……!!
俺の回避も限界に近い。何か、もっと確実に形勢をひっくり返せる方法はないのか……?
考えろ……もっと速く……もっと強くなる方法は……!!
その瞬間――
────《身体強化》ヲ進化シマス
……え?
共通能力《身体強化》ヲ
特上能力࿓《身体超化》࿓ニ進化シマシタ
……マジかよ。
俺は自分の身体にみなぎる圧倒的な力の変化を感じた。
これは――ただの強化じゃない。
“超化”。
まるで、自分の肉体そのものが別の存在に進化したような感覚。これで俺も戦える……!
身体が軽い。筋肉がしなやかに動き、圧倒的な力が全身に漲る。
もう、さっきまでの俺じゃない――
今度はこっちの番だ……!!
俺はフードの奥で不敵に笑う。
「お前の動きも悪くはないが……そろそろ飽きてきた。」
ゆっくりと、余裕たっぷりに告げる。
カイラナの表情がわずかに歪む。
「なん──────────」
“ドォォン!!”
カイラナの言葉を遮るように、俺は瞬時に背後へ回り込み、蹴り飛ばした。
バギィッ!!
衝撃が走る。カイラナの身体が弾かれ、地面を転がる。
……すげぇな、身体超化。
俺は自分の拳を握りしめながら、感動すら覚えていた。身体が軽い。速い。そして、威力も半端じゃない。さっきまでとは明らかに違う。
俺は間違いなく、“次の領域”に踏み込んだ……!!
「(な、何がァ……起こりやがった……?! 痛えェ……!!)」
蹴られたカイラナは、信じられないというような表情で、腹を押さえながらゆっくりと立ち上がる。
カイラナの余裕が、わずかに崩れた――
俺はゆっくりと黒焔刀を構え、静かに笑った。
「テメェ……一体何を──────────」
カイラナが言いかけた瞬間――
俺は再び発言を遮り、一瞬で十数発の打撃を叩き込んだ。
バギッ! ドゴッ! ズガァッ!!
拳が、膝が、肘が――次々とカイラナの身体を捉える。反応する暇なんて、与えない。
「グッは……!!」
カイラナが血を吐き、よろめく。
(やべェ……なんなんだ……この魔人は……!!)
目を見開きながら、カイラナは理解が追いつかないといった様子で俺を見つめた。
――間違いなく、俺は圧倒していた。
カイラナの動きにキレがない。先ほどまでの猛攻が嘘のように、攻撃に対応できていない。
恐らく、さっきの絶炎焔のダメージも響いているんだろう。確かにコイツは強い。速さもあるし、攻撃の威力も高い。タフさも尋常じゃない。
でも……
あの洞窟で戦ったゴーレムほどじゃないな。
俺は黒焔刀を軽く回しながら、カイラナを見下ろす。
今の俺なら、こうして圧倒できている。だが、あのゴーレムが相手なら……?
多分、身体超化を使っても通用しない。
いや、それどころか、今の俺でも勝てる気がしない。
……てか、魔王軍の幹部より強いって……
考えれば考えるほど、あのゴーレムの異常さが浮き彫りになる。
”あのゴーレム、ほんとに何者?“
改めて、背筋がゾクリとする。
カイラナですらこの強さなのに、あのゴーレムはそれを遥かに凌駕する圧倒的な存在だった。
リリスがいなかったら、ほんとにあの洞窟で死んでたな……。
……ま、今はそんなこと考えてる場合じゃないか。
今は目の前の敵――カイラナとの戦いに集中しないと。
そう思った瞬間――
「……んん?!」
背筋にゾクリと走る違和感。
次の瞬間――
「まだだァ……!!!!」
カイラナの全身から、凄まじい圧が放たれる。
ゴゴゴゴゴ……!!
空気が震え、地面が微かに軋む。
まるで、さっきまでとは別格の存在になったかのような、異様な気配。
……マジかよ。
俺は思わず黒焔刀を握り直した。
カイラナはまだ終わっていなかった。
恐らく、これが最後の抵抗だろう。
カイラナの気迫は凄まじい。だが、ここまでのダメージを考えれば、もう長くはもたないはず。
ならば――
「─────────ならば……オレも魅せてやろう。“終焉の力”を。」
フードの奥で薄く笑いながら、俺はゆっくりと手を掲げる。俺の十八番をくらうがいい!
カイラナの目が警戒に細められる。
だが――もう遅い。
俺の手のひらに、青黒い光が集まり始める。
空が鳴る。
風が止む。
圧倒的な魔力が収束し、夜の闇が深く沈み込む。
「༄《焉怒雷》༄!!」
バチバチバチッ!!!
蒼黒い雷が天を裂き、瞬く間に膨れ上がる。
そして――
“ドガァァァァン!!”
雷撃が、カイラナの頭上に直撃する。
轟音とともに、大地が揺れる。衝撃波が森を駆け抜け、辺り一帯を閃光が包み込んだ。
「グアァァァァァッ!!!」
カイラナの絶叫が響く。
「………う……うァ……(い……痛え……はやく……逃げ……ないと……)」
カイラナの姿は、もはや見るに耐えなかった。
ボロボロの体、焼け焦げた皮膚、震える脚。
だが、まだ完全には意識を失っていない。
……ならば。
俺は静かに息を吐き、フードの奥から冷ややかに告げた。
「終焉だ……༄《焉怒雷》༄……」
囁くように、2発目の焉怒雷を放つ。
“ドガァァン”
雷撃が再び天を裂き、爆発音が森に轟く。
……終わった。
俺は黒焔刀を収め、静かに立ち尽くした。
「ふぅ……何とかやりきったぞ……!」
終焉の魔人としての初戦闘――完璧に演じ切った!
……そう思った、その時だった。
砂煙がゆっくりと晴れていく。
そして――
「あ……れ?」
俺の目が、思わず見開かれる。
そこに、カイラナの姿は無かった。
「……え?」
状況を整理する。
さっきまで、確かに目の前にいたはずの敵が、いない。
つまり……
「……もしかして、俺……」
“逃げられた”!!!??
なんてこった──────────
俺の勝利ムード、完全にぶち壊し。
こうして――
終焉の魔人の初戦闘は、幕を閉じた。
……まさかの結末とともに。
初!終焉の魔人戦!決着!!
ついにこの瞬間が…! でも、ここからが本当の始まりかも!?
ドキドキワクワクが止まらない展開、ぜひ見届けてください!
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