二十七・終焉に導く者 弍
「──オレは終焉の魔人……」
低く、重く、響くように。
「この世界を終焉に導く者――」
言い終えた瞬間、風が吹いた。
静寂が訪れる。
敵は息を呑み、僅かに後ずさった。
……決まった。
俺は内心ガッツポーズしながら、フードの奥で不敵に笑う。
これが、”終焉の魔人”の始まりだ。
「終焉の……魔人ン……?(何者だァ……? この威圧感だけで分かる……コイツァ只者じゃねェ……!)」
敵は目を細め、低く呟いた。
どうやら、完全に戸惑っているようだ。
まぁ……無理もないよね。
だって俺、黒いローブに真紅の瞳、さらには得体の知れない雰囲気までまとってるんだ。そんな奴が、突然目の前に降り立って「世界を終焉に導く者」とか言い出したら……そりゃ怖いよ。
でも――
「実際、俺も戸惑ってるし!!」
心の中で全力で叫ぶ。
いや、なんでこんなことになってるんだ俺!? ちょっとしたノリで”終焉の魔人”とか名乗ったけど、ここまで雰囲気が出来上がると後には引けない……!!
「…………」
敵の視線が鋭くなる。
ヤバい。ちょっとでもキャラ崩したら、一瞬でバレるぞ……!
ここまできたら、演じ切るしかない。必ず!!
俺はゆっくりと息を吐き、フードの奥で薄く笑った。
「どうした?」
低く、静かに、威圧感たっぷりに。
……よし、キャラは守れてる。
俺の脳内では警報が鳴り響いているが、とりあえず”終焉の魔人”の格は保ててるはずだ。
問題は、この先どうするか…だな。
それに……こんなことやってるけど、俺にそんな余裕はあるのか?
考えてみろ。目の前のコイツは、勇者一行を瞬殺した猛者だ。
確かにビビらせることには成功してるっぽいけど……俺、勝てんのかな?
いやいや、まずは情報収集が先だな。慎重にいこう。
念のため……
࿓《鑑定眼》࿓ 発動!
目の前の敵――いや、“カイラナ”と表示される女の情報が視界に浮かび上がる。
名前:カイラナ
種族:魔族
魔力量は死暗竜の2倍程か… いや、アレって普通に災厄クラスの存在だったよな?
……結構強くね?
さっきまで余裕ぶってた俺の心臓が、ドクンと跳ねる。
いや、ヤバいだろこれ。俺、今めっちゃ強敵相手にイキってね?
終焉の魔人(演技) vs 魔王軍幹部
……この状況、普通に考えて詰んでね??
俺は静かにフードの奥で冷や汗をかいた。
「終焉の魔人? 聞いた事ねェなァ!!」
カイラナが嘲るように笑いながら言う。
「でも只者じゃねェってことは分かる。なるほどなァ……テメェが部下共を殺ったのかァ……!」
「まァ丁度、消化不良だったところだァ! 楽しませてくれるんだろォ……?!」
カイラナの唇が吊り上がる。目が獲物を見つけた獣のようにギラつき、殺意が濃くなるのが分かる。
……ん? 部下を殺した? 誰が? いつ? 何のこっちゃ……。
俺、そんなことしてないぞ?
でも――
(ここで下手に否定したら、格が下がる……!!)
今の俺は”終焉の魔人”。一貫性を持たせることが大事だ。
ここは……話を合わせるしかない!!
俺は一拍置き、余裕たっぷりにフードを押さえながら答える。
「……そうだとしたら?」
低く、落ち着いた声で。
イケボで、かっこよく。
空気が張り詰める。カイラナの目がさらに細まり、口角が吊り上がる。
「クク……面白ェなァ……!!」
俺は内心、胃が痛くなるのを感じながらも、平然とした態度を崩さなかった。
“終焉の魔人”としての演技は、まだ続く――!!




