十七・驟雨
『構わん…!人々を救けてくれたのだ…!
これから先…魔物や魔王のような強大すぎる敵がこの国を…世界を破滅に導く時が来るやもしれん……勇者・神宮寺蓮よ…貴様はその時、世界を救ってくれるか……!!』
「勿論です…!僕達はその為に異世界に来た…!!」
国王との謁見を終え、王宮から外に向かう蓮達。ネチェルは国王と話があるそうで生徒達だけで行動していた。緊張の解れた蓮達は肩の荷が降りたように力が抜けていた。
「いやぁ…怖ぇぇ…国王様のあの迫力…あんな厳つい爺さん、漫画の中だけだと思っていたよ…」
「駿…!国王様にそんな事を言ってはいけないよ!それに…優しいそうな方だったじゃないか」
「そうよ!もし今の聞かれたら打首になるかもね…ウフフ…」
「ま、魔女め……!!」
駿の無礼な発言に注意する蓮や朱里。そのやり取りで和む生徒達。王宮の建物を出ようとした際、ある人物に声を掛けられる。
”君達か…召喚された勇者ってのは…!!“
そこに居たのは…紅い髪をした誠実そうな青年だった。
「あ、あなたは……?」
「あぁ〜ごめんごめん!名乗ってなかったね。
オレはアレックス…!巷ではアレスと呼ばれてる。」
「アレス…さん…」
「なにあのお兄さん…イケメン…!!」
蓮や他のクラスメイトが困惑している中、朱里や一部の女子はアレスの整った顔に夢中だった。蓮は困惑こそしていたがアレスが悪い人では無いことは分かっていた。何故ならアレスは騎士のような正装をしており、そして全くの敵意が感じられ無かったからだ。
「な〜に…怖がらなくていいよ!オレはただ君達に挨拶しに来ただけだからね。へぇ……蓮達が勇者とその仲間か…」
「は…はい。僕は神宮寺 蓮です。そして───」
蓮はアレスに他の勇者達を紹介した。
「なるほど…六人パーティーか…!そうか……」
「アレスさん……?」
「ん……いや…!そろそろ行かないと…!いやぁ〜君達に会えて良かったよ。また近いうちに会う日が来ると思うけどね…!それじゃあ…!」
「近い…うちに…?」
アレスは颯爽と立ち去ろうとする。だが数秒後アレスは足を止め、振り返る。
「そうだ…人生の先輩からのアドバイス…!!
““これから先…どんな困難や絶望が君達を待ち受けているかは分からない…ただ…逃げたっていい…諦めたっていい…死ぬな……!!生きてさえいれば必ず希望の光は照らしてくれる……!!!””
な〜んて…!簡潔に言うと勇者という名の重荷に潰されてはいけないってことかな!おっと…ほんとに時間が迫ってる…それじゃあまた会おう…!」
アレスはその場から立ち去る…蓮達はアレスの迫力に圧倒されていた。
「凄い…人だった…なんというか…掴みどころのない人だね…」
「うん…かっこいい人だった…!未来もそう思うでしょ?」
「ちょっと朱里ちゃん…!!」
アレスの言葉を胸に…蓮達は帰路に着く。
─────時は遡り、数時間前
陽向達は王宮へ辿り着いていた。
「─────棚やら壺やら全て高価すぎるだろ…」
一条が王宮内の豪華すぎる装飾に驚いている…
確かに元の世界ではこんなファンタジー溢れる場所なんてそうそう無いから驚くのも無理は無い…!それにしても今から王様に会うのか…異世界ファンタジーの物語には必ずと言っていいほど登場する王様…白髭を生やした高貴な様な姿…?それとも意地が悪そうな威厳ある様な姿…?いや、思ったより若い中年の王様ってのも有りうる…!!
「皆様…準備が整いました。
それでは参りましょう…王の元へ…!」
お…!早速始まるか!王様イベント…!一体どんな王様が出てくるんだ…?
「国王様…!!かの者達を連れて参りました…!」
『“入れ…”』
王様の声か…!?渋い声だな…
「陽向…やべぇちょっと俺怖くなってきたかも…」
「大丈夫だよ。王様の目当てはおれ達じゃない!」
紫苑が王様の威圧感に当てられたらしい…紫苑だけじゃない。他の生徒達もみんな緊張しているようだ…不思議とおれは全く緊張しなかった。王様と言ってもリリスよりは可愛いものだろう。
扉はゆっくりっ開きおれ達は王の間の中へ入っていく。中には護衛人や大臣と思われる人…そして玉座に座っている老人が居た…
あの人が王様…長い白髪に白髭を生やしている威厳ある姿だった。おぉ…!!既視感のあるこの姿!まさに異世界王道の王様って感じだ…!
王の前まで来たネチェルさんは膝まついた。それを見本におれ達も同じ格好をする。
『よくぞ来た…勇者よ…余は其方と会うのを心待ちにしておった…!』
「御…御尊顔を拝し、恐悦至極に存じ奉ります。」
『そう畏まらんで良い…異世界の地から来たのだ。作法などまだままならないだろう。そんな事よりもまだ、余の名を名乗っていなかったな。余はタナトス王国・国王アバドン=ファウストである…!!』
王様の名前はアバドン=ファウストって言うのか。それにしても、やはりおれ達は勇者達の飾りか…
王様は勇者一行にしか目を暮れていなかった。
どうやら王様は勇者達に死暗竜と死行進団の件で褒美を与えるらしい…神宮寺は武器や防具を褒美に選んだ。やはり勇者なだけある。普通の人なら金やら特別な物を望むだろう…
王様は勇者以外のおれ達の分までの装備一式もを与えてくれるらしい…太っ腹だ…!
『─────がこの国を…世界を破滅に導く時が来るやもしれん……勇者・神宮寺蓮よ…貴様はその時、世界を救ってくれるか……!!』
「勿論です…!僕達はその為に異世界に来た…!!」
世界を破滅…か…なんだかよく分からないけど…世界の危機が近づているのかな?
王様との謁見が終わり、おれ達は王の間から出る。
「それでは…皆様…!私はこれから王に伝達することがあるので先に宿に戻っていてください。」
「分かりました!みんな、行こう!」
ネチェルさんを残し、俺達は出口に向かう。
それにしても、勇者たちと一緒で無ければ拝むことの出来ない王に会えたんだ。想像どおりと言えばその通りの王様だったな。
「ひなた…なんか王様の威厳っていうのか…?凄かったな。」
「確かに…まさに王って感じだね。」
紫苑は張り詰めた緊張を解し、ため息を着いていた。
〝君達か…召喚された勇者ってのは…!!〟
「え…………」
なんだ…!?なんだ!!?身体が…動かない…!!誰も…気付いていないのか…!!?
「あぁ〜ごめんごめん!名乗ってなかったね。
オレはアレックス…!巷ではアレスと呼ばれてる。」
俺はアレスと名乗る男の圧倒的なオーラの強さに身動きを取れずにいた。
何者なんだ…!?使ってみるか……
࿓《鑑定眼》࿓!!
んッ!?弾かれた……!?
おれの鑑定眼は格上のアレスには通用しなかった。
なんだ…この魔力!?このオーラ!?立ってるだけで意識が朦朧としてくる…
この感じ…身覚えがある…この、どうやっても勝てないような…この人の強さは俺達と次元が違う…!!まるで、初めてリリスに会った時と同じ様な威圧感だ…!!!
「な〜に…怖がらなくていいよ!オレはただ君達に挨拶しに来ただけだからね。へぇ─────」
なんだ!?今…目が合った…?気の…せいかな。
「───また近いうちに会う日が来ると思うけどね…!それじゃあ…!」
なんなんだ一体…!こんな化け物がこんな街中に居るなんて…
「そうだ…人生の先輩からのアドバイス…!!
““これから先…どんな困難や絶望が君達を待ち受けているかは分からない…ただ…逃げたっていい…諦めたっていい…死ぬな……!!生きてさえいれば必ず希望の光は照らしてくれる……!!!””
な〜んて…!簡潔に言うと勇者という名の重荷に潰されてはいけないってことかな!おっと…ほんとに時間が迫ってる…それじゃあまた会おう…!」
なんなんだ…あの人は…
アレスと名乗る男は颯爽と消えていった。
「どうした…ひなた?顔色悪いぞ。」
「……あ、ああ大丈夫…大丈夫。」
紫苑に心配されてしまった。まずいな動揺が隠せない…
あの人は……一体………
────── その頃、
隣国【グリムラッド王国】・王室
「─────どういうことだ……!!?何故だ…!?何故……」
「国王様…これは宣戦布告に過ぎません……!!」
「我等が何か過ちを犯したとでも言うのか……!!迅速に…騎士団をラテルスへ!!一人でも多くの命を救うのだ…!!!」
「報告します……!!!ハァ…ハァ…ラテルス含め、その周辺の街の崩壊を確認…しました!!
犠牲者数は………約…十万……!!!」
「じ…十万……!!!?(何故だ……!!何が目的だ……!!我等と戦争でもしたいというのか……!!!!)」
そして、グリムラッド王国外れにある街 《ラテルス》
ラテルスは無惨な悲鳴と死体の山で溢れかえっていた。魔族や魔物が人や建物を破壊していた。
「グホッ……どう…じで…ここに、貴様がいる……!!?」
「アァ…つまらねぇナ。騎士って名乗るぐらいだからどんな強え奴らが来ると思ってたら…これじゃあ拍子抜けってもんだ。」
「答えろォ……!!どうしてここに貴様が居る…!!!
魔王バフォメットの配下…【三昏畢】の一人…!
カイラ──────」
“ズサッ”
「うるせぇなァ…フッ…ハッハッハ!思い知れェ!人間共…!!魔王の恐怖をォ……!!!」
その日…ラテルスは紅い驟雨に包まれた。




