十五・下位悪魔
ゴルディーは教会の戸を開けると言葉を詰まらせた。教会の中は血の跡がそこら中に飛び散って居た。
そして...教会の中心には...
「馬鹿なァ...……この世に暗黒を齎す……
””悪魔““だぞォ……...……!!!」
それから数十分前──────
神宮寺達が囚われてる奴らを助けに行ってから数分...
ここに残っている”俺達“の空気は重苦しかった。
そう…本来、”勇者の友人“としてこの世界に来た俺達には何かを護ったり救けたりする力は無いのだ。
どうしてか…俺には何か普通では無い力を持っているが…
――主様…!奴らのアジトを見つけました…――
リリスからの念話か…
――ほんと!囚われてる人達は見える?――
――いいえ…確認できません…恐らく何処かの建物の中でしょう――
建物の中か…神宮寺達も向かったことだし…囚われてる奴らはそっちに任せるか…
――それで…死行進団とやらは強そう?――
――ふふっ…息を吹きかければ消し飛ぶ存在に過ぎません…勇者共に任せて問題無いでしょう――
――そっか…――
敵はそんなに強くなさそうだな…
今回は俺の出番は無いかな。
――ただ……一箇所、
何やら怪しい魔力を感じます――
怪しい魔力か…
俺はリリスにその魔力の正体を調べるように頼んだ。
それからほんの数秒で折り返しの連絡がきた。全く…優秀なことだ。報告によると怪しい魔力の建物の中に人らしからぬ何かが居るらしい。
ここはリリスに任せた方がいいよね…でも、リリスのことだ…何かしでかして皆に注目されたら嫌だな…
俺は友達に見つからないようにリリスの元へ向かった。数分後、廃村の裏門に辿り着いた。
「なんか…不気味だなぁ…錆び付いてるし!はやくお暇したい……」
廃村を更に進んでいく。一人で歩いていると夜中の静けさや廃村に流れる不気味な風に異常に反応してしまう。
「主様…!!おはやい到着でしたね!」
「うわっ!びっくりした……」
突然、空から現れたリリスに俺は尻もちをついてしまった…
俺はリリスに怪しい人では無い何かの居る建物に案内をしてもらった。
「ここ…か…如何にもって感じだな…」
そこは…教会だった。今にでも崩れそうで腐食が進んでいた。俺は決死の想いで教会の戸を開けた。
「あの…失礼します…」
リリスの言う通り、教会の真ん中に何かの影があった。恐る恐る近づいてみる…
「これは…魔法陣…?」
「ええ…その様ですね…どうやら死行進団、禁忌とされる魔術を使用したようです…穢らわしい…」
「禁忌……?いったい…何を?」
「人の魂を対価に奴を呼び出したのです…
恐らく…およそ二十人。
二十人の生贄を捧げて“悪魔”を召喚したのです。」
「悪魔…!?それじゃあ…あれって……」
人では無い何かの正体は生きた人を犠牲にし、召喚した悪魔だった。その姿は黒灰色でまさに羽を生やし、おぞましい姿をしていた。
「ええ…悪魔です。ただ…悪魔の中では弱い部類の【下位悪魔】ですが…今はまだ眠っているようですね。」
リリスの話によると召喚された悪魔は全体の悪魔の中では弱い【下位悪魔】だけど、【下位悪魔】の中では強い部類らしい…今の勇者達じゃ、歯が立たないレベルらしい…
勇者で勝てないって結構やばくない…?
もちろん、リリスなら一瞬で片付けられるそうだ。
「どうやら…ヒナタ様の魔力を感じて、目覚めるようですね!」
どうしてだろう…リリスがはしゃいでいるように見える。
下位悪魔は目を覚まして俺達の方を見ていた。
「主様…私が片付けましょうか?」
リリスなら問題無く悪魔を倒せるだろう…だけど加減が出来ないからな…こんな所で派手に暴れられたら神宮寺達に気づかれて面倒なことになる…
「いや、俺がやる…リリスは見守っててくれ。」
俺が悪魔の方に近づくとリリスは教会に簡易結界を張った。周囲に気づかれないようにということらしい。
「さてと……下位悪魔がどれ程の脅威なのか…教えてもらうぞ。」
”グォォォォオ!!“
言葉は交わせないみたいだな…
下位悪魔は鬼の形相で俺に突進してきた。
「ならまずは…力を抑えて…
࿓《絶炎焔》࿓!」
“ドギャァンン”
俺はリリスの時よりも力を抑えて炎を放った。
“グルルルルッ”
無傷…!?コイツ…炎に耐性があるのか…悪魔の名は伊達じゃないか…
「なら次は…… ࿓《闇縛永鎖》࿓…っておい…危な─────」
まじかよ…鎖を全部避けて接近してくるだと……!?油断してた…危うく大怪我するとこだった…ってまだ攻撃の嵐を浴びせてくるんですけど……!!?
「オイッ!…ちょっ…まて…って!!危なッ!!一旦落ちつけぇぇ!!!」
”ドォォンン“
俺は悪魔の攻撃を全て避けきりつい思わず反撃をしてしまって吹っ飛ばしてしまった…というかよく全部避けれたな…自分が怖い……
「お…おーい…大丈夫ですか?」
さっきよりも明らかにふらついている…打撃は効果あるのか……
「(前々から思っていたが…主様のあの力はなんだ……?人間の力を超越し過ぎている…)
流石は主様…!!しかし、そ奴はまだ戦意があるようです…圧倒的な力量の差だというのに…身の程知らずめ……!!」
「まぁまぁ…落ち着きなよ…」
““ゴゴゴゴォォオゴゴォ””
「え…!何あれ……」
下位悪魔は頭上に黒い波動のようなものを創り出した。なんだあれ…魔法か…?
「主様…!あれは重力を操っているようです。」
重力…?つまりあれに触れればぺちゃんこって訳か…
その重力の塊は俺に目掛けて飛んできた。
「触れるのはまずいか…なら相殺してやる!
༄《焉怒雷》༄…!!」
俺は右手から焉怒雷を発動した。どうやら俺の方が一枚上手だったのか、俺の雷が衝突した瞬間に重力の塊は消滅し、ついでに悪魔ごと貫いた…なんて恐ろしい…力…
「ん…?まだ生きているのか…ゴキブリ並だな。」
”ゴルルルルァャァァバ!!!!“
な…なんだ!?突然悪魔から魔力が溢れてる…?それに…だんだんと膨らんでる…?
「ふふっどうやら主様に敵わないと知って自爆をするつもりでしょう」
「じ…自爆…!?なんで笑っていられるのさ……まぁいいや…だいたい分かったよ、下位悪魔の力。
悪いけど…自爆はさせないよ…これで終わりだ。
༄《焉怒雷》༄」
“ズズドドォンン”
俺は奴に気づく暇を与えない程の速度で移動し、奴の腹部に触れて雷を放った。
その後…俺達はすぐにその場から逃げ去った。
そして…今に至る─────
ゴルディーは教会の戸を開けると言葉を詰まらせた。教会の中は血の跡がそこら中に飛び散って居た。
そして...教会の中心には... 悪魔らしき生物の死体が転がっていた。
「馬鹿なァ...……この世に暗黒を齎す……
””悪魔““だぞォ……...……!!!」
「こ…これは…悪魔なのか…?」
悪魔の胸元には何かに焼き突かれたような大きな穴が空いていた。ゴルディーにとって下位悪魔は切り札だったのだ。その切り札が何者かに始末されてしまい、ゴルディーは絶望しその場に座り込んでしまう。
その後…戦意消失したゴルディー率いる死行進団を全員縄で縛り捕縛した勇者達…
「だけど…いったい誰が…その悪魔を倒したの…?」
朱里が蓮に不安そうに尋ねた。
「分からない……でも…コレだけは分かる…
“悪魔を倒した人”は化け物だ……!!」




