十四・死行進団
「はぁ...終わったか…!」
飢暴狼を呆気なく倒してしまった勇者達。時間にしてわずか数秒の出来事だった。流石に強いな...まるで相手になって無かった。
――“主様!”――
――ん!?リリスか!どうかした?――
――どうやら、今の魔獣共は故意に何者かの仕業による襲撃だと考えられます――
何者かの仕業...狙いは勇者か?ってやっぱりリリスも着いてきてたんだ...
どうやらリリスは木々の上から俺達を監視していたらしい。
――そっか...この周辺に怪しい奴らが居ないか探索してくれ!――
ここは山道...日も暮れ初めている...今新たに襲撃でもされたらひとたまりもないぞ...夜になったら魔獣もでる...はやくここから抜けないと!!
「流石は勇者様... 飢暴狼を一瞬で...!!」
「いえ、大したことはありませんでした。」
「し...し...しかしおかしいですよ...
こ...この周辺に飢暴狼は生息していないはず...」
ネチェルさんとギルソンさんは考えるように黙り込んでしまった。
「な...なにはともあれ...はやく...こ...このや...山から抜け出しましょう!」
俺達は再び王都に向けて全速力で馬車を走らせた。
まずいな...もう辺りは暗い。今襲撃でもされたら...
““ドギャァンン””
なんだ!?爆発...!?一番後ろの馬車が攻撃されたのか……?
「今度はなんだ……!!みんな...!!無事か……!?」
神宮寺達が前から駆けつけて来た。馬車が一台横転して炎が上がっている……
「何者だ……!!」
燃える馬車の周辺には複数の怪しげな男達が立っていた。
「我々はぁ……”死行進団“!!ここで貴様ら勇者には死んでもらう……!!」
“デスパレード”?なんだそれ...穏やかな名前じゃないな...
「死行進団...その馬車に乗っていた人達はどこだ!!」
神宮寺はかなり焦っているようだった。それも無理は無い。横転している馬車に乗っていた奴らの姿が何処にも無い……
「まぁ落ち着け……勇者よ。安心しろ、アイツらには利用価値がある。殺しはしない...だが……」
「よくも……!!!」
「分かっているよな...?貴様らの出方次第で、奴らを誤って殺してしまうかもな..ヒヒッ」
こいつらは精々八人程度...神宮寺一人でも十分戦えるレベルだ。でも下手に手を出せば囚われた奴らの身が危険にさらされる。厄介だな...
「我々も馬鹿じゃない...!!ここにいる全員で勇者に挑んでも返り討ちに合うだけだろう...!」
「ふざけるな...!!人質を解放しろ!」
「断る...!!少し...遊ぼうか勇者諸君。ここより西に少し離れた場所に、古びた廃墟がある。我々はそこで待つ...タイムリミットは...一時間。それまでに仲間を取り戻しに来るがいい。もしも……一時間を過ぎた場合は...分かっているな...クククッ...」
そう言い残し奴らは姿を闇に隠した。
「クッ……油断した...!!皆を危険な目に...すまない!!!」
「蓮のせいじゃないだろ...!」
”そうだよ!“ “皆を助けよう”
”ぶっ倒そう!“
「みんな………………!!そうだね、挫けてる暇は無い...!助けに行こう...!!!」
助けに行くのは勿論勇者一行だけで他の人は馬車の周りで待機ということになった。死行進団のレベルなら神宮寺達でも問題は無いと思うが...わざわざ罠に誘い込む真似...少し心配だな...
「よし...!みんなを助けに行こう!!」
神宮寺達は攫われた友人を救う為に西にある廃墟へと向かって行った。
─────それから数分後
勇者達は廃墟の見える地点まで到達していた。
「あそこに...皆が……!!!」
蓮は不安そうな表情で廃墟を見つめた。
「思っていたよりも広い...
元々は村だったのかしら...」
そこは今は人の寄り付くことの無い寂れた廃村だった。勇者達は廃村の門を潜り中に入る。
「ゴーストタウンってやつか...気味が悪いな...」
「駿ビビってんの?」
辺りの建物は今にでも崩れてきそうな程、劣化が進んでいた。
“ミシミシ...”
「みんな!止まって…!!」
蓮は何かに気づき、足を止めた。すると、勇者一行を囲むように死行進団が姿を現す。
「随分...はやい到着ですね……罠にまんまと掛かりに来るとは...度胸だけは認めてあげましょう...」
「囚われてる僕の友達を解放しろ……!!」
勇者と死行進団の硬直状態は続いた。すると...ある大男がやってくる。
”テメェか.....勇者ってのは“
「ん...お前は.....!?」
「オレは...死行進団の頭首をやっている...
ゴルディーだ...!!よく来たな...!!ハハッ」
「おい蓮!アイツ...強いぞ……しかもなんだあのガタイ...銅像かよ...!」
ゴルディーの殺気を感じた蓮は全身に力を込める。
「お前が頭だって言うなら話ははやい...僕の友達を解放してくれ...!!」
「ハハッ断る。そんなに取り戻したきゃオレを倒してみろ...オレ達の狙いは……
“お前らなんだからよぉぉ!!!”」
突如、蓮に飛び掛ってくるゴルディー。蓮は間一髪交わすが頬に擦り傷が出来てしまった。
「みんな!ゴルディーは僕が引き受ける!他は頼む……!!」
そう言い残し蓮はゴルディーと共に離れていく。
「そんじゃあ...朱里と和真は囚われた奴らを探してくれ!コイツらは俺達で対処する!」
駿と未来、そして豹牙は残り手下共と戦闘を始める。朱里と和真は村の家の隅から隅まで探索していた。
そして...蓮はゴルディーを相手に苦戦していた。
「ハッどうしたァ!?勇者の力ってのはそんなもんか...!!?」
「クッ!(剣を素手で受け止めた!?)」
「オォラァ!!こんなもんか!!!?」
蓮は軽々投げ飛ばされてしまう。
「(なんだ...力が上手く出ない...)本気でいくぞ!
࿓《炎剣》࿓!!!」
神帝剣は炎に包まれる。
蓮が剣を振ると炎の斬撃が飛び出す。
「危ねッ!!ハハッいい技持ってんじゃねえかァ!!」
「これで...剣を受け止められない!!
〖炎天落〗!!!」
蓮は炎に包まれた神帝剣を地面に向かって叩きつける。その炎の衝撃はゴルディーに迫っていく。堪らず避けるゴルディーだがその炎は追尾していく。
「あちちッ!!ハハッ...ハァ...ハァ...やるじゃねえか...!!テメェと戦うと燃えてくるな.....!!
”火傷しちまいそうだ!!!“」
一方その頃...朱里と和真は怪しげな地下室に続く扉を見つけていた。二人は音を立てずに中に入っていく。
「ここは...牢屋...?」
「あぁ...そのようだな。恐らくここに監禁されている可能性が高い。」
二人は更に奥に進んでいく。するとある牢屋の前で死行進団の一員だと思われる見張り番が居た。その牢屋には囚われた友人達が拘束されていた。
「見つけた...!!ここは私が!」
朱里は矢を見張り番に向けて放ち気絶させた。その男が持っていた牢屋の鍵を使って囚われていた友人達を助け出す。
「良かった!!みんな怪我は無いようね!」
”ありがとう...“
無事に助けだすことができた二人は安全な場所まで皆を誘導していく。
その頃...豹牙達は……
「なんだァ...?この程度じゃァ退屈しのぎにもなりやしねェ。つまらねェなァ……」
死行進団の団員を一人残らず蹴散らしていた。その光景はどちらが悪役か分からないほど残酷だった。そして...蓮とゴルディーの死闘は続いていた。
「ハァ...ハァ...おかしい……この疲れ方...普通じゃない...!!」
「どうしたァ?随分へばってるじゃねェか...
ハハッ教えてるやるよ...テメェがどうして...いつもより動きが悪いのか...!!」
ゴルディーは両手の幸を前に出した。そこには薄葵い魔石が埋め込まれていた。それは終末の龍を封印していた封印石の欠片だった。
「この石は...魔力や生命力を奪い取る力を持つ...!つまりオレがテメェを殴れば殴る程テメェの魔力も体力も無くなるって訳だ!!」
「力を...奪い取る...!?それなら、君の身体もそれに耐えられないだろう!!」
「ハハッ残念ながらコイツはある方による加工が施されている...!石の効力が俺にだけ反応しないようにな!!」
「そんなことが出来るのか...」
ゴルディーの追撃が蓮を苦しめる。封印石に触れどんどんと衰弱していってしまう。
「このまま受け続ける訳にはいかない!一気に決める……!!いくぞ……!!
〖炎狭切〗……!!!」
剣に纏われる炎が鞭の形になりゴルディーを襲う...ゴルディーは避けきることは出来ずに深手を負った。
「野郎……まだまだァ……!!!」
「いいや、これで終わりだ...
〖《衝撃斬》・炎纏〗!!!うぉぉぉオ!!!!」
「チキショ───────」
ゴルディーは蓮の攻撃に耐えきれず、吹き飛んでしまう。しかし、まだ意識はあるようだった。瀕死に近い状態のゴルディーは再び立ち上がる...
「ハァ...ハァ...オ...オレが...テメェには...勝てねぇことくらい...分かってたさ...ハハッ...ハァ...だが……テメェらは“終わり”だぜ...誰にも、“奴”は止められない...!!!ハッハッハ!!」
ゴルディーは地面に這いずりながら何処かに向かった。堪らず蓮もその後を追う...すると、村の端に位置する...教会らしき場所に辿り着く。
「ハハッ...後悔しても遅いぞ...!!もう誰にも止められねェ!!出てこ……なッ……!!?」
ゴルディーは教会の戸を開けると言葉を詰まらせた。教会の中は血の跡がそこら中に飛び散って居た。
そして...教会の中心には...
「馬鹿なァ...……この世に暗黒を齎す……
””悪魔““だぞォ……...……!!!」
悪魔らしき生物の死体が転がっていた─────




