十三・規格外の勇者
「やっぱり...裏になにかいるってこと...?」
「えぇ…それも恐らく...大きな”何か“が...
まぁ主様なら何も問題は無いですから気にしなくても良いかと!」
俺が過ごした異世界での初めてのデートはそれはもう楽しく...沢山の経験をすることが出来た。だが、何故か心のざわめきは強くなる一方だった──
翌日の早朝、俺達は王都アスタロトに旅立つため館の庭に集合していた。同行人としてネチェルさんと道案内のギルソンさんという人も一緒に行くことになった。なんだかギルソンさんは貧弱で気が弱そうな人だ。
「えぇ...それでは...出発しますよ...」
俺達は馬車四台、一台当たり七人程で王都に向けて出発した。勇者一行はまとまって最前列の馬車に乗っていた。どうせならもしもの為に戦力を分散してバラけたら良いのに...
数時間程経った時...昼休憩で途中の町・オリアスで足を止めた。
「えぇ...それでは……これから...一時間、この町でお昼休憩と...致します...時間になりましたら...ここ、噴水の目の前に集合して...ください...すいません...」
なんで謝るんだ?何はともあれお昼ご飯か〜三時間くらい馬車で揺すられてたからな〜変な疲労感が...
「ヒナタ!どっか飯行こうぜ...!」
「あぁ!勿論!お腹ペコペコだよ〜」
俺は紫苑と食事処に向かうことになった。
一方その頃勇者達は────────
「お腹空いた〜みんなで美味しい所、食べに行こうよ!」
朱里の一言で豹牙以外の勇者五人は一緒に行動していた。近場を探し、歩き回るが何処も昼時で満席だった。
「くぅ〜ここもいっぱいか〜お腹と背中がくっ付いちゃうよー」
「もう少しだよ朱里ちゃん!きっともう少ししたら美味しいお店がある筈だよ!」
朱里の弱音に未来はフォローする。しかし、お腹を空かしていたのは全員同じだった。
「でも...流石に相手無さ過ぎないか?というか...本当にこの先に店なんかあるのか?だんだん人気が無くなってきたけど...おい朱里!道案内合ってるんだよな?」
「え、なに?私の案内が間違ってるとでも...?」
「あぁそう言ったんだよ方向音痴女!」
「なによ!初めての街なんだから仕方ないでしょ!?」
「まあまあ駿も二階堂さんも落ち着いて!喧嘩をしても余計な体力を使うだけだよ…」
蓮は二人を宥める。すると、朱里は何かを考えるように黙り込む。
「そういえば……私達、同じパーティーの仲間なのに苗字で呼びあってるよね。駿は腐れ縁で昔から知り合いだから名前呼びだけど...」
「そういえばそうだね...」
「いっその事名前呼びにしたら団結力はもっと深まるんじゃないかしら!」
朱里は名案を出したかのように満面の笑みを浮かべていた。
「それもそうだね...じゃあ...そうしよう!じゃあ...改めて...駿!朱里!和真!未来!ここには居ないけれど豹牙!これからも宜しく...!!」
勇者達の絆は更に深まっていく。...そんな会話に気を取られている間にとあるお店の前に辿り着いていた。
「なにここ!凄く...いい香り...!」
「ほんとだ!ここにしよう!」
そうして勇者達は店に入っていく。店の中はシャレた喫茶店のような雰囲気で落ち着く空間だった。満席では無いが客は多く、隠れた名店のようだった。
その頃 ─────────
「ねぇ...紫苑..お店全部満席なんだけど...入れる所無いのー?」
俺達は店を探して十五分...なんの進歩もなくただ...歩いていた。
それにしても...何処も満席って人多すぎだろ...うぅ...お腹空いた...
「なんだ...この町...店に入れないとか旅人に不親切すぎんだろ!」
「落ち着け紫苑...まぁ...俺達が出遅れたっていうのもあると思うけど...にしても栄えてるね...」
このままのペースなら店に入れずに集合の時間になってしまう...なんてこったい...だんだん...人数が減って来た?結構歩いて来てしまったのだろうか...一本道を真っ直ぐ来ただけだから帰る時迷子にならなければいいけど...
「クンックン...なんだ!?なんかいい匂いがするぞヒナタ!」
ほんとだ...この香りは...シチュー?やばい...この匂いは犯罪級だ!!!
「よし!ここにしよう!!」
俺達はやっとお店を見つけた。外から見るに席は空いてそうだ!
『いらっしゃいませ〜』
無事に入ることが出来た!!これは運がいい!
んん?あれって……
「げッ………………」
勇者一行じゃあぁぁん!!?何故ここに!?まじかよ...気づかれないようにしよ...
俺の目先の席には楽しそうにくつろぐ勇者達の姿があった。どうやら...向こうはこっちに気づいてないようだ。俺達は勇者達とは少し離れた席に着いた。離れたと言ってもこっちからは向こうの席丸見えだ。
「おい...紫苑...向こうの席に勇者達が居るぞ...」
「ほんとだ!こんな所で七瀬さんに会えるなんて……これは...運命!!」
「シーッ!!」
俺達は気づかれないよう...小さな声で会話をした。すると勇者達の声が聞こえてくる。
「未来には感謝しか無いよ...!あの時、キミが居なかったら駿はどうなってたか分からない...」
「そんなことないよ...私なんかまだまだ...」
あれ...神宮寺って大抵の女子には苗字だよな?中でも良くなったか?
「おい…………ヒナタ...今、神宮寺...!七瀬さんのこと呼び捨てにしなかったか……!!?」
「だから大きな声だすなって!!」
紫苑の奴...顔が怖いぞ...
さっさとご飯を食べてトンズラさせて貰おう。
俺達は数分でご飯を食べ終え会計に向かった。その時、不意に勇者達の会話が耳に入った。
「──────昨日何処か出掛けてたの?」
二階堂さんが七瀬さんに問いかけていた。昨日って俺達と出掛けてたよな。
「き、昨日は…………ん!?」
今...目が合ったか?やばいはやく店から出ないと!
「どうしたの?」
「い、いや!何でも─────」
ふう……危ない危ない。あと少しでバレるところだった。隠れる必要無いんだけどね。
昼食を食べ終えた俺達はすぐに集合場所の噴水に向かった。
時間になり、全員が戻ってきて再び王都に向けて馬車を出した。
五時間後───────
辺りは日が落ち始めていた。こう...ずっと馬車に揺られているとお尻の感覚が無くなっていく...軽い拷問だよこれ...
““と...とまれェ!!!”“
なんだ!?この声、ギルソンさんか?
突然、最前の馬車に乗っていたギルソンさんが声を荒らげる。どういうことだ...どうやら勇者達は馬車から降りているらしい...
「皆は馬車の中から出ないで……!!」
神宮寺が俺達に指示を出す...
何が起こっている?クラスの連中が騒いでいる。
俺は馬車から身を出し、外を眺める。
「魔獣か...?」
外に居たのは...いや、馬車を取り囲んでいたのは無数の狼型の魔獣だった。十匹は居るか?
「なぜ...こんな所に“飢暴狼”が...本来ここには生息しない筈なのに……!!」
ネチェルさんは怯えているようだった。飢暴狼か...その名の通り、凶暴そうだ!!どうやら...神宮寺達が戦うようだ...お手並み拝見とさせて貰おう!
「来い……!|《衝破斬》《しょうはざん》!!」
あれは...共通能力か...?にしては強力だな。神宮寺はバッサバッサと飢暴狼を切り倒していく。神宮寺だけじゃない。他のパーティーの全員が魔法や能力を駆使して呆気なく倒していく。
流石は勇者...チート性能は変わってない...か。
ちょっと...勇者の性能...見てみるか。
࿓《鑑定眼》࿓!!
なになに……なんだあれ!?獅子王の身体から紅いオーラが溢れていた。
あのオーラの大きさだと...40万前後!?確か前の時は20万くらいだったよな…獅子王だけじゃない……勇者パーティー全員が元の魔力の倍になってる!?それに能力も増えている...まだ転移して来て一週間程度だってのに...これが...勇者の力の一端...中でもヤバイのは……神宮寺か.....
【神宮寺 蓮】
༄《果敢英傑》༄ ༄《全精霊護》༄
༄《至高勇者》༄ ༄《悪斬神力》༄
࿓《炎剣》࿓ ࿓《光荒煉》࿓
《衝破斬》 《闇属性耐性》 《腐食耐性》
《身体回復》 《魔力感知》 《光属性加護》
能力も増えてる……そして...神宮寺の身体から大きな神々しいオーラが溢れ出ている……あの大きさは...
魔力...……”100万“を超えてる!!!
この成長速度……規格外過ぎる...
これが、チート主人公か……!!




