十二・異世界デート
【陰キャ三人衆】に学校のヒロイン。そして人気な女子二人の異色な組み合わせの”デート“という名目の荷物運びが今始まろうとしていた────
俺達はアガリアにある、甘味処に来ていた。何故こんな所に来たかというと女子達、主に三浦さんがスイーツを食べたいと言ったからだ。俺も甘いものは嫌いじゃない。寧ろ好きな方だ。席順は勿論、男子と女子で別れて向かい合っていた。
「お待たせしました〜」
「凄い!!」
店員が運んで来たのはパンケーキのようなものにクリームやフルーツの乗ったいかにも“映える”要素全開の食べ物だった。
「異世界でもこんなデザートが食べれるなんて...夢みたい!」
七瀬さんがはしゃいで居た。彼女も甘いものが好きなのだろうか?まぁでも確かに美味しそうだ...これを食べれるってだけでも来た甲斐が有るもんだ!
女子達が談笑してる中、横から紫苑が小さな声で囁いてきた。
「おいひなた!お前、三人の中だと誰狙いだ?」
「誰狙いって...そもそもいないし、聞かれたらどうするんだよ!」
「またまた〜五郎はどうだ?」
「フッ愚問だな...もちろん、七瀬さん一筋さ!!」
「七瀬さんは高嶺の花過ぎんだろ!」
なんの会話をしているんだ...全く。女子達が地獄耳だったらどうするんだ!
「なんの話してるのー?」
すると三浦さんが男子の卑猥なる会話を遮断した。
「あっは...は...いや!大したことじゃあ無いよ!」
紫苑の奴...焦ってやがる...いい気味だ!
「ほんと〜?盛り上がってそうだったから。そうだ!七瀬さん!昨日の死暗竜との戦いの話...聞かせてよ!」
「あ!それ俺も聞きたかった!」
三浦さんと紫苑が七瀬さんに頼んだ。七瀬さんは若干、戸惑ってはいたが話を始めた。彼女は昨日の出来事の全てを教えてくれた。
なるほどね...俺がリリスと会っている間にそんな事があったのか。っていうか封印解かれた時ってそんな衝撃があったの!?そういえばアガリアや王都でも地震が起きたってネチェルさんが言ってたっけ...
「私は.....何も出来なかった...
こんな自分の無力差に嫌気がさす.....」
「そうかな.....七瀬さんはちゃんと自分の責務を全うしていたと思うよ!七瀬さんの治療魔術が無かったら他の仲間や冒険者たちは命を落としていたかもしれない...な、なんて、ごめん偉そうに言って!」
「佐藤くん.......ううん、ありがとう...!」
七瀬さんはだいぶ参っているようだった。
俺は余計なことを言ってしまっただろうか...
その後俺は、女子達が服を見たいというので服屋さんに荷物係として着いていった。
「どうかなっ!未来ちゃん!この服〜似合う?」
「姫麗ちゃんとっても似合ってるよ!お人形さんみたい!」
「えっへへ///」
「違うよ七瀬さん。お人形さんみたいじゃなくて赤ちゃんみたい、だよ!」
「オォイ...四多……この腐れ陰キャ……!!」
なんだ?また紫信と河合さんが喧嘩してる...
仲良しか!!
“――主様のスケベ〜――”
――なっ!?この声はリリスか?どうしたの急に――
――今...女子の着替え姿を見ていいなぁって思ったでしょう!――
――何を馬鹿な...――
良いと思ったのは否定しないけど!!
――見たいなら私がありとあらゆる所を魅せてあげますのに...――
――ありとあらゆる!?じゃなくて!!後でお土産買っていくから許してくれ!また連絡する!――
どうやらリリスは嫉妬...?をしていたらしい。
ていうかリリスは今どこに居るんだ……もしかして観られてる?
そんなこんなで服屋をでた俺達は珍しいものが沢山並んでいる市場にやって来た。そこで買い物をしていたら気が付いたら日が暮れていた。夕方四時くらいだろうか。
「そろそろ...邸に戻ろうか!」
その三浦の一言で俺達は帰路に着く。もちろん、荷物は全て俺達が持っている!!!
「いやぁ〜今日は楽しかったな!ひなたも俺に感謝しろよぉ〜」
「楽しかったけど……
お前にだけは感謝したくなイィ」
────────””オィ...嬢ちゃんたち...““
「あれ...?七瀬さん達は?」
おかしい...男子達の後ろに歩いていた女子全員が居なくなっていた。
「迷子か……?」
「どうだろ……二人は此処で待ってて!ちょっと探してくる!」
俺は荷物を二人に預け、今来た方向に走っていく。
おかしい……あの三人が何も言わずに居なくなるなんて...何か事件に巻き込まれたのか?そうだ...
――リリス!いるか!――
――はい、ヒナタ様。たった今三人の行方を探索しているところです!――
――仕事がはやくて助かるよ!――
――見つけました...!どうやら...複数の男共と揉めているようです。蹴散らしましょうか?――
――男と揉めてる...?いや、いい!場所を教えてくれ...俺が行く...!――
俺はリリスの案内通りに道を進んだ。
裏路地……いかにも危険な香りがプンプンするな。見つけた……三人は無事か!なんだあの...チンピラみたいな奴らは……
女子達を取り囲むように怪しげなチンピラらしき男三人組が居た。
これって...よくあるチンピラに絡まれてるヒロインを勇者が救う“イベント”ってやつだよな...いいのか...?俺が遭遇してしまって...
俺は気づかれないように聞き耳を立てた。
「オィ...嬢ちゃん達可愛いなァ!」
「辞めてください...!あなた達...何をしているのか分かっているんですか……!!?」
七瀬さんが必死に抵抗している。河合さんは怯えて座り込んでしまっているようだ。その河合さんを囲むようにして三浦さんが立っていた。
でも...なんでだ...?七瀬さん程の力を持っていたらチンピラ如き敵では無いのに……もしかして...思っている以上に奴らは強いのか?見てみるか...
࿓《鑑定眼》࿓!!
鑑定眼・名前だけ聞くと便利そうな能力だが、実は使い所は限られてくる。鑑定眼で分かるのは対象の名前・保有能力や効果・魔力の可視化...つまり相手のオーラの大きさが魔力の強さということになる。数値化した魔力量は分からないのだ。そして、何よりリリスみたいな”格上“の存在には通用しない。あくまで同等か格下レベルの人にしか効果は無いのだ。
なになに...名前はザドキ=フランシス......大して強そうな能力は持っていないな。魔力は...なんだあれ...ちっちゃ!うーん...およそ五万前後か...?元腕利きの冒険者ってところか...
このザドキって奴がリーダーみたいだな...他のふたりはただの雑魚か...
「なァ嬢ちゃん達...大人しくしといた方が身のためだぜェ...アンタら勇者の仲間ナンだろォ……?」
「辞めてください...!!(おかしい……魔力が...力が出ない……)」
七瀬さんの様子がおかしいな...
「ヒッヒッヒ……アンタ...顔がいいから高値で売れるぜ...」
あまり目立ちたくは無いが...事情が事情だ。助けるか...それに...彼奴らを見てると……
“全く...反吐が出る……”
「あ...あの...辞めた方がいいと思いますよ...彼女達...怯えてますし...」
「誰だァ...?テメェ...」
「佐藤君……...!!」
「僕は……彼女達の友達で…
既に自警団の人達呼んであるんで...退散してくれませんかね...?」
「余計な事をしてくれたじゃねぇか...餓鬼ィー!!」
「危ない...!!佐藤君……...!!!」
”ドン“
・・・ん?俺はザドキのストレートパンチを顔面に直撃させていた。だがしかし...あまりの弱さに、反応一つとれなかった。いや...弱すぎだろぉ!まるで蚊に刺されたみたいな感覚だよ!これじゃあ不自然すぎるだろ!
「佐藤...くん...?」
「ん!?ガ...餓鬼!う...上手く交わしたよォだなぁ!」
無理あるだろ...顔面に直撃してんだから。
”ザドキサン!俺達も加勢します!“
“糞ガキー!”
雑魚二人か...
ザドキの手下共は突進するように殴りかかってきたので怪しまれない程度の身のこなしで避けたら足をくじらせ自滅していった。
「テメェ...よくも俺の手下共を……!!」
「いや……あはは...
勝手に自爆していきましたよ...?」
「舐めるなよォ...!黒魔法!
【奉闇───────」
「(させるか!魔法はまずい!魔法を怪しまれずに防ぐなんて不可能だ!ここは先手必勝!体育の授業で習った……)一本背負い投げぇ!!」
”ドガァ“
それは見事なものだった...あまりの出来の良さに俺でさえ驚いた...ザドキは意識を失っていた。
これも相当...怪しくない……?
「佐藤くん...凄い...!」
「やるじゃん……佐藤くん!」
「怖かったよォ…ありがどお...ざどうぐん...グシュ」
どうやら...怪しまれては居ないようだ。今度から気をつけないとな……
「みんな無事で良かったよ!怪我は無い?」
「うん...ごめんね皆...」
突然、七瀬さんが謝ってきた。
「私が付いていたのに...」
「確かに...七瀬さんならあんな奴ら簡単に倒せるんじゃあ...(魔力や能力は明らかに七瀬さんに武があるはず...)」
「それが...どうしてか、その人に触れられた瞬間に魔力が吸い取られるように無くなっていったの...」
吸い取られるように.....それって……
俺はザドキの持ち物を漁る。
すると...ほんの少しだけ蒼色になっている魔石を見つけた。
これって...俺が今身につけているのと同じ...リリスを封印していた封印石の欠片!なるほど...これで七瀬さんの魔力を吸い取ったのか...このことを皆に言ったら…なんで知ってるのってなるよな...
「きっと...魔力を封じるアイテムか何かを持っていたんだよ!」
「そう...なのかな...」
「そうだよ!気にしないで未来ちゃん!未来ちゃんが居てくれたから私も三浦ちゃんも無事だったんだから!」
「うん...ありがと!」
俺達はその後紫信達と合流し、屋敷に戻った。
そしてここは俺の部屋の中...そこで俺はリリスと会話をしていた。
「だけど...まさか早速、封印石を活用してる奴が居るなんてね…」
「あの石の希少価値は凄まじいですからね...それに奴ら...単独って訳では無いでしょう。」
「やっぱり...裏になにかいるってこと...?」
「えぇ…それも恐らく...大きな”何か“が...
まぁ主様なら何も問題は無いですから気にしなくても良いかと!」
俺が過ごした異世界での初めてのデートはそれはもう楽しく...沢山の経験をすることが出来た。だが、何故か心のざわめきは強くなる一方だった──




