十・勇者の住処
「新しい称号ですね!!それでは…帰りましょう!主様…!」
新たな仲間と力を手に入れた俺は”アガリア“に帰還する──────────
んん……?そういえば帰るってどうやって?俺は馬車の荷に隠れて乗り込んでここまで来たわけで…歩いて帰るのか…?まぁ馬車で数十分だったから無理では無いのか…
「主様…もしかしてですけど今、”どうやって帰るの“とか思ってませんでしたか……!!!」
「えぇ?なに、心読めるの?怖いんですけど…」
「私ともなると主の考えくらい瞬時に分かるものなのです!!」
「えぇ…そうなの…?それで…何か手段はあるの?」
「勿論です!!私を誰だとお思いですか?《覇帝竜・アマリリス=レシュノルティア》なのですよ!!」
そう自信満々に言いながら、リリスは背中から翼を生やした。認めたくは無いがその姿は…天使のように美しかった。いや、堕天使か?
「へ、へぇ見事だね。」
「それでは…!!」
リリスはそう言うと両手を広げた。ん?どういう……ってまさかお姫様抱っこをしようとしているのでは…!?んな馬鹿な……俺は男だぞ…そんなんされたら…俺の羞恥心が火を噴くぞ……!!落ち着け、何とかして変えてもらおう。
「あ…あのぉリリスさん?出来れば…他の乗り方がいいかな…なんて…」
「もしかして…恥ずかしいのですか?主様。」
「んな…!?」
「あぁ〜そういう事ですか。うぶですねぇ主様!アハハッ可愛いですぞ主様!!」
んん…コイツもう一回封印し直してやろうか……此処ぞとばかりに俺を小馬鹿にしやがって…
恥ずかしいのはほんとなんだけど///
「それなら、私の背に乗って下さい…!」
「ありがとう…助かるよ!」
俺はリリスの背にしがみついた。
「しっかり捕まっててくださいね!行きますよー!」
リリスはそう言うとそれ高くまで羽ばたいた。俺は高所恐怖症だし、絶叫系も苦手だから不安が強かった。だがその不安は杞憂だった。
凄い…初めて空を飛んだ…まるで鳥になったようだ……!
「あははッ!これが…空を飛ぶ感覚…!なんて気持ちいいんだ……!!」
俺はあまりの気持ちよさに張り詰めていた気が抜けた。やっと…アガリアに帰れるのか。とても長く感じる一日だった。神宮寺達は無事だろうか…
リリスの口振りからすると死暗竜は倒され、勇者達は生きているそうだ。
そういえば…リリスと一緒に神殿に戻ったら…流石にまずくないか…?
「ねぇリリス……俺は神殿に帰るにしても、リリスは何処に住むの……?」
「私は主様と同部屋でもいいんですけどね…!でも、残念ながら神殿には厄介な力を持つ者がいます。そヤツらに正体を勘づかれるのは避けたい...なので今日は洞窟に潜り、力を取り戻すリハビリをしようかと!」
「え、今から…!?洞窟に潜るって…眠る時はどうするの?」
「我は竜ですぞ!私は洞窟を住処にしていることが多かったのでノウハウには自信があります!それに我の寝床を襲うものなどこの世に居ないでしょう…!ってあれ?主様…??」
””うわぁぁぁー!!“
「落ちるぅぅー!まてまてまて…ちょっと待ってなんで!?」
俺は向かいから来た鳥と見事に衝突し、上空三千メートルから地面に向かって真っ逆さまに落ちてしまった。
「なんであんなところに鳥が居るんだよー!?やばいやばい死ぬぅー!!」
ただでさえ高い所無理で、絶叫マシーンにすら乗れないのに!!
だんだんと地面が近づいてくる……
ちょっと待て……流石にこの高さから落ちたら…死ぬよな??おいおいこんなマヌケな死に方は無いぞ…!?やばい…地面までもう数百メートルも無い…これは死────
「“ヒナタ様ー!!!”」
間一髪のところでリリスは俺を拾い上げてくれた…
「ご無事ですか、ヒナタ様!!」
「うぅ…リリス……ありがとうぅ……うぅ…じぬかとおもっだよぉぅ…うぅぅ…」
俺は情けなくも泣いてしまった。でも…仕方がないことだ…怖いものは怖いんだから……
「ごんどから…うぅ…命綱つけといでぐれよヒクッ…」
「い…命綱...?私をなんだとお思いで……?」
そんなこんなで俺達は再びアガリアに向かう。
「見えてきました...!アガリアの街です!!二百年前とは見違える程、活気ある街になりましたね。」
俺達は人の気配がないアガリアの外れに着陸した。幻想の森から十分も経って居ないか…空の旅は快適だな!
「さてと…俺は一旦神殿に戻るけど…リリスは…」
「私の事はお気になさらず!早速リハビリしてきます!」
リリスは意気揚々と飛び出して行った。久々の娑婆が嬉しかったのだろう。俺もはやく帰らないと…絶対今までどこいってたか聞かれるよな…言い訳考えとこ…
それから数十分…俺は神殿に辿り着いた。大広間に入ろうとしたら何やら中が騒がしかった。
「(勇者達一足先に帰ってきていたのか…)」
大広間では神宮寺と七瀬さん、伊集院がみんなに何かを説明していた。この中に堂々とは入っていけないな…
俺は大広間のドアの横から聞き耳を立てた。
途切れ途切れに聞こえたが…どうやら神宮寺達は終末の龍の封印が解かれたことをみんなに話していたらしい…
やっぱり……封印壊したの…結構やばいことだよな。俺ってバレたらどうしよう……
神宮寺達の話がひと段落したので、俺はさりげなく大広間に入った。どうやら…誰にも怪しまれていないみたいだ!
「お、ひなた…お前今までどこに居たんだ…?」
コソコソ声で話しかけて来たのは、小林だった。
「え……と、さっきどうやら落し物をしちゃって…ずっと探してたんだ…!」
パッと現れた小林に同様してしまい適当なことを言ってしまった……それでも一応納得したみたいでそれ以上の言及は無かった。
夕食が終わり、入浴も済ませた俺はベッドにダイブする。俺の部屋は六人部屋で二段ベットが三つある。ここは神殿の使っていなかった部屋で…ちゃんとした家が準備出来るまでの仮の部屋だ。
俺は今日一日のあまりの疲労に抗えず、気絶するように眠りに入った。
翌日、朝早くにネチェルさんの集合がかかった。ネチェルさんは俺達に”着いてきて“と言い何処かに向かった。
「さぁ…着きましたよ!!皆様…!!」
「”こ、これは!?“」
「えぇ、遅くなってしまい申し訳ございません!本日よりこの邸が勇者様方の住まいでございます…!」
俺達の目の前にあったのはとんでもなく広い豪邸だった。噴水付きの緑溢れる庭…赤い絨毯が敷き詰められたまるで高級ホテルのような室内…一人一つ用意された豪華な部屋。これには驚きを隠せずには居られなかった。
「す…凄い…!こんな豪邸…僕達が使っていいんですか?」
「勿論でございます!何かあれば使用人も雇っていますので気兼ねなく御相談ください…!!」
”ありがとうございます!“
ネチェルさんに一同全員で感謝の言葉を述べた。
早速…!自分の部屋を見にでも行こうかな!!この邸はひとつに繋がってはいるが西館は男子・東館は女子の部屋に別れていた。よぉし…俺の部屋はいったいどんな豪華な部屋なんだ...!?扉を開けるぞ……
「おぉぉ!ぉぉ…お?あれ……あまり...豪華では無い?いや普通の宿よりはよっぽど豪華なんだけど…期待し過ぎた…?いやぁ……」
さっきみた部屋は明らかに俺の部屋より豪華だったような…ん?さっきの部屋って…確か伊集院の部屋だったような…もしかして、勇者の部屋と俺達の部屋って……内装違う……?絶対そうだ!!だって伊集院の部屋のベッド、キラキラに輝いてたもん!!それに比べて俺のベッドは何処にでもある白シーツって!まぁ確かに…勇者のおかげでここに住めるようなものか…気にしない、気にしない。
「“随分と質素な部屋ですね”」
「そうなんだよ…外装と内装が合ってないという────って!リリスさん!?なんでここに!?」
ビックリした……突然、部屋の中にリリスが現れた。
「なんでって…主様の居場所くらい把握しておくのが出来る配下というものですよ…!!」
「そういう事じゃなくて……ていうか誰か来たらどうするの!?知らない女性と二人きりとか…説明つかないよ!」
「まぁ大丈夫ですよ主様。いざとなれば永眠せてしまえばいいのです。それより、主様!洞窟で良い物が手に入りましたぞ……!」
リリスはそう言うと俺の持っていた魔力を抑える封印石を貸して欲しいと頼んできた。
「出来ました…!!」
「おぉ!これは!」
リリスの手の中には封印石出できたペンダントがあった。
「洞窟で闇蜘蛛に出会いましてね…そ奴から糸を採取してきました!闇蜘蛛の糸は頑丈で耐久性が普通の糸と段違いなのです!ペンダントを首から吊り下げておけば封印石を無くすなんてこともなくなりますしね!」
俺はペンダントを襟の下に隠すように首からかけた。
───────── そして場所は変わり、ここはどこか暗い空間……そこには何者かの奇妙な笑い声が響いていた。
「“クックク…〈勇者の召喚〉、〈覇帝竜の復活〉…そして、招集される魔王達…随分ときな臭くなってきましたね……ククッ…シトリー、通信は?」
「はい。たった今、繋がりました。」
そう言うと謎の男は机に置いてある水晶に手を取る。すると水晶には魔族らしき女性の姿が映し出される。
「状況はどうだ…カイラナ。」
<今のところ問題は無い。ですが宜しいのか?本当にやっちゃいますよ...?皆殺し……!!!>
「相変わらず言葉遣いがなっていないな…カイラナよ。まぁいい。そろそろ始めようじゃないか……私の力を…人間共に教えてやろうではないか!」
<フフッ久しぶりに暴れられるッ!!人間共に植え付けてやりますよ!貴方様の……【魔王】バフォメット様の恐怖を……!!!>




