本番 素材①
「さあ、今回行うのは……ひとり、かくれんぼー!」
誰もいない部屋でタツタツは小さく拍手をする。
「少し前に流行って今更って思われるかもしれませんが、あえて今回これをやっていこうと思います。さて、ひとりかくれんぼはかなり危険な降霊術とされております。なのでいつもはふざけた企画をやっておりますが、今回は真面目にやっていきたいと思います」
挨拶を終え、ひとりかくれんぼの準備物の説明を始める。
「まずはぬいぐるみですね。かわいいくまちゃんでちゅねー。そして次に米、爪、髪の毛、体液、赤い糸。これは全てこのくまちゃんの中に入れるものになります。ああーかわいそうだけど、せっっぷく!」
くまの腹を開き、用意したものを詰め込んでいく。
「さあ、ぬいぐるみの準備が出来たところで次は塩水ですね。これは隠れる場所に用意しておく、と言う事でクローゼットの中にこれを置きましょう」
クローゼットにコップを置く。
「時刻はまもなく午前三時になろうかという所です。いよいよ始まりの時です」
これは嘘だ。今はまだ夜の七時だが、針を勧めた時計を画面に映す。
こんな事に何の意味があるのかは自分でも分かっていない。
俺はぬいぐるみを持って浴槽へと向かった。
「最初の鬼はさーちゃんだから。最初の鬼はさーちゃんだから。最初の鬼はさーちゃんだから」
そう唱えながら浴槽の中にぬぐるみを入れた。
「よし、これでオッケー。では、電気を消します」
パチッという音と共に部屋は真っ暗になる
ガチャッ。
「ん? おい」
ふいにトイレのドアが開く音がした。
「何やってんだよ。段取りとちがっ……」
瞬間頭に強烈な衝撃が走った。
「なっ……え……?」
ごっ。ごっ。
暗闇からの唐突な襲撃に反応出来ず、気が付けば俺は意識を失っていた。




