8/15
愛
彩夏は可愛くて大人しくて理想的な女性だ。一人の人間を強く真っ直ぐ愛する事が出来る素晴らしい女性だ。でも、世の中ではそれを”メンヘラ”だなんて言葉で片づけ忌避する。信じられない。何故だ。何故理解してやらない。
「あの女めんどくせえんだよなぁ」
彩夏も彩夏だ。何故こんな男と付き合ったんだ。そんなめんどくさい女にお前はどれだけ支えられていると思ってるんだ。
彩夏と俺は中学の同級生だった。
今と変わらず真面目で素直な可愛い女の子だった。思えばあの頃から俺は彼女の事が好きだった。だが奥手な自分はずっと何も出来ずに年月を重ねてしまった。
そんな彩夏と再会したのは、大学で達樹と出会ったのがきっかけだった。
当時達樹が働いていたコンビニのバイトで一緒になり、そこから付き合いが始まったらしい。彼女がいる事は早い段階で知っていたが、一緒に取った写メを見た時は驚きを隠せなかった。
――綺麗だ。
思わず見惚れた。成長した彼女は更にその見た目に磨きがかかっていた。
しかし次の瞬間に襲ってきたのはそんな可憐な彼女がこんなゲス野郎と付き合っているという事実だった。
悔しさ、苛立ち、怒り、情けなさ、いろんな感情が渦巻いた。
もっと自分が積極的に動いていれば、こんな現実は塗り替えられていたのかもしれないのに。
