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偽造

「どうだ?」

「ん? まぁ……」


 タツタツこと達樹たつきが配信したひとりかくれんぼの動画に関しての感想を聞かれうまく言葉が出なかった。

 色々と複雑な気持ちだったが、一言で済ますのであれば――。


「まぁ、怖かったよ」


 率直な感想ではあった。正直ここまでちゃんとした動画を上げてくるとは思っていなかった。と言うより、達樹の動画をちゃんと見たのは今まで一本だけだった。よくあるコーラにメントスを入れて一気飲みするという定番のあれだったが、寒気がするほど面白くなかったのでそれ以来見ていなかった。

 言っても動画配信を続けて半年程。続けていればそれなりのものが出来るようになるのだなと思った。まぁ、そんな事は俺にとってはどうでもいい事なのだが。


「だろ!? いやーあれはいけるな。うんいけるいける」


 達樹は満足気に何度も笑顔で頷いた。


「いやまぁ待てよ」

「あ? 何だよ?」


 動画の出来はいい。それより気になる事があった。


「お前さ、あれどこまでが本当なんだ?」


 要はあれがヤラセかどうかだ。やんややんやと騒ぎ立てる奴がいたりもするが、大半の視聴者にとってそこまで重要な事ではないだろう。楽しめればいいと言った程度だろう。だが俺は違う。それでは困るのだ。


「くくく……道秀はどう思うんだよ」


 試すかのような達樹の態度に心底苛つく。その態度が答えを物語っているようでそれが更に感情を煽られる。


「出来過ぎている、と思う。つまりあれはヤラセだ」


 そう言い放つと達樹はじーっと俺の目を見たまま動かない。どこかのクイズ番組の司会者がこんな反応をしてた記憶があるが、真似のつもりなのだろうか。だとすれば本当に面白くない男だ。

 くんっと達樹が急に下を向いた。そして少しして満面の笑みと共に顔を上げた。


「せーかーーーい!」


 言いながらパチパチパチと動画の最初の挨拶の時のように拍手をする。


「なかなかよく出来てただろ」

「よく出来過ぎなんだって」


 がっかりした。あれが本物だったらと興奮した自分が心底恥ずかしい。


「まぁ本当に怖かったけどな、やってる時は。そりゃでもそんな何の仕込みもなくうまくいくわけねえよ」

「……だよな」


 興醒めだが、確かに彼の言う通りそんなにうまくいくわけがないというのも納得だ。興醒めついでにヤラセの内容を聞き出した。内容を聞けば、全てが納得というか、それなら全て可能だろうという所だった。

 しかし、納得は言っても全く心は落ち着かなかった。聞くんじゃなかったとさえ思った。


「なあ、達樹」


 自然と口が動いていた。

 何の考えもない。脳より身体が先に動くような感覚だった。

 訝しげにこちらを見る達樹に対して、俺の口は勝手に動いていた。


「面白い事思い付いた」


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