表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

願い

「今日夜会おうよ」


 一度身体を許してしまってから、秀君は目に見えて態度が変わった。これまでは穏やかで優しかった顔が嘘のように、自分の感情を剥き出しにするようになっていた。


 いや違う。


「なぁ、俺がいいよな。俺の方がいいよな」


 これが本当の秀君だったんだ。


「ずっと好きだったんだよ。ずっとずっと」


 彼が激しく昂るほど、私の温度は冷えていく一方だった。

 

「うん、好き」


 私が悪いのだ。最悪なのはいつだって私だ。

 中学の頃から私の事を好きだと彼は言った。驚いた。まさかこんな所で繋がるとは思っていなかった。正直、中学の頃の彼の印象はまるでなかった。なにせ一言も喋ったこともなかったからだ。

 運命だとも彼は言った。だとしたら何てひどい運命だ。

 どうしようもない私を好きになったどうしようもない秀君。

 彼に抱かれれば抱かれるほど、達樹の事を思い出す。

 

 ああ、きっとそうだ。

 私は愛される事が下手くそなんだ。

 達樹みたいにないがしろにされるぐらいが身の丈に合ってるのだ。

 深く深く愛される程に私の心は黒く淀み吐き気を催した。


 ――消えたい。

 

 もう、全部を消して消えたい。

 それは深淵の中で芽生えた、切なる願いだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ