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最低
「またお金貸したの?」
「うん……」
「ダメだって言っただろ」
「ごめん……」
「ごめんって……」
分かってるんだ。ずっと分かってる。秀君が言いたい事も自分の状況も。
「頼むよ。もうやめてくれよ」
ぎゅっと温かい両腕が私を包み込む。でもそこに心地よさも幸せもない。むしろあるのは罪悪感と嫌悪感だ。だがこの腕を振り払う事も出来ない。
最低だ。心底。
「俺ならもっと、君を大事に出来る」
分かってる。きっとそうなんだろう。
達樹は本当に自分勝手だし、世間的に見てもろくな男ではないのだろう。
でも、だからこそ見捨てられない。私だから横にいてあげられる。私以外に彼の傍にずっといてあげられる女の子なんてきっといない。
「ありがとう」
返事とも返答ともつかない曖昧な言葉で、私は彼の言葉を濁した。




