漫才「ロープウェイ」
ほのぼのとした感じで流れていくお話になりました。静かな漫才です。よろしくお願いします。
友人A「東京タワーとスカイツリーを、ロープウェイでつなげることになったんだってさ。知ってたか?」
友人B「いや、それは初耳だな。上空で行き来出来るようになるってことかい?」
友人A「そうなんだよ。いい話だろ」
友人B「降りずに移動できるようになるのかあ。便利になるね」
友人A「ほんと、ありがたい話だよ」
友人B「いい機会だから昇ることにしよう」
友人A「え? まだ昇ってなかったのかよ」
友人B「どっちに昇ろうかなあと毎日迷っているうちに、今日まで来てしまったんだよね」
友人A「高いところ好きのお前がまだだったとは驚きだなあ」
友人B「面目ない」
友人A「でもまあ、悩みはこれで解消だな」
友人B「東京タワーに昇って、ロープウェイでスカイツリーに移動しながら東京の街を眺めるなんて、すごいことだね」
友人A「夜になったら、さっきまで居た東京タワーのライトアップ姿を見ることができるんだぜ」
友人B「おつなもんだねえ」
友人A「楽しみだなあ」
友人B「せっかくだから、他の高層ビルともつなげて欲しいな。いろんな東京を眺めてみたいや」
友人A「それも検討しているらしいよ」
友人B「新宿や渋谷は高層ビルが多いからなあ。どこになるんだろう」
友人A「そりゃ一番高いビルだろう」
友人B「だったら建て増し競争になるね」
友人A「上に乗っけて伸ばしていくっていうのかよ。それって、きりがなくないか?」
友人B「しまいには、スカイツリーを追い越しちゃったりして」
友人A「ある程度の高さのビルだったら、全部つなげてあげようよ」
友人B「タワーマンションの住人にしても、大歓迎な話だろうからねえ」
友人A「屋上から駅ビルに行けるってことになれば、通勤通学にも使えるしな」
友人B「高い建物同士の巨大ネットワークかあ」
友人A「そうそう、建物ではないけれども、いずれは富士山ともつながるんだってよ」
友人B「それも助かるなあ」
友人A「登山がラクチンになるぜ」
友人B「今まで随分と苦労をさせられて来たからなあ」
友人A「好きで登っているくせにと言われそうだけど、しんどいものはしんどいものなんだよな」
友人B「ハイキング気分ではしゃいじゃって、登りでエネルギーを使い果たして、頂上でへとへとになっている人っているもんね」
友人A「登山の最中にだるまさんがころんだは、やめておいた方がいいんだよ」
友人B「はないちもんめもね。だいいち、男ばっかりでやろうという気持ちが僕にはわからない」
友人A「そうなんだよ。降りる労力のことを考えて登ってきていない人の実に多いこと」
友人B「あと、五時間も歌うんじゃないよ。負けじとこっちも歌ってしまうから疲れちゃうんだよね」
友人A「ヤッホ~も五時間やるんじゃない。疲れるに決まっているだろう。自分もたまにやってしまうけど」
友人B「頂上はゴールじゃなくて折り返し地点だということを、つい忘れて登ってしまうんだろうね」
友人A「もう降りるのは無理だって言って、頂上に住んじゃってる人もいるもんな」
友人B「かくいう僕も、他人のことはあんまり言えないんだけどね」
友人A「なんでまた」
友人B「ヘリコプターで降ろしてもらったことがあってさ」
友人A「それはずいぶんと目立っただろう」
友人B「恥ずかしいもんだからさあ、操縦服を貸してもらって、乗組員のふりをしていたよ。笑ってくれ」
友人A「実をいうとさあ、俺もお前のことを笑えないんだよなあ」
友人B「なんかあったのかい?」
友人A「嫁さんにおんぶされて降りてきたことがあったんだよ」
友人B「うへえ」
友人A「エレベーターかエスカレーターがあれば君をこんな目に合わせずに済んだのにって、背中でずっと言っていたのを思い出したよ。あの時の願いがこういった形で叶うことになるとは、感慨深いものがあるなあ」
友人B「俺たちのような、体力無しの高いところ好きにとっては、いい時代がくるということだな。疲れないで登り降りができるようになるわけだからさ。毎日でも富士山に登山できるね」
友人A「登山っていうくらいなんだから、登るときくらいは自力で行ったほうがいいんじゃないのか?」
友人B「楽したいな」
友人A「君の肩書はなんだっけ?」
友人B「まあ、登山家を名乗っているわけだから、やっぱり登っておこうかな」
友人A「夜のうちに登ってさ。ご来光を浴びてから、ロープウエイで降りてくるんだよ」
友人B「富士山からスカイツリーを経由して東京タワーへ」
友人A「近隣の駅ビルに連結させれば、そのまま通勤できるという寸法だ」
友人B「風景も変わっていきそうだなあ」
友人A「電線の地中化が進んでいる昨今だからね、ロープウェイがその代わりを担うことになるってわけだよ」
読んでくださり、ありがとうございました。