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『ハンドメイド・ジュリ』は今日も大変賑やかです 〜元OLはものづくりで異世界を生き延びます!〜  作者: 斎藤 はるき


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6 * 男性には恥ずかしい?

 


 色々、色々くどくど説明されたので、要約するわ。

 まず、一番安いといっても非常食を二本付ける時点で破格。これは使わずに取っておくことも出来るから。まして山クラゲは麻痺性の攻撃をしてくるけど速く動けないし単調な動きしかしないし、何より防御力がめっちゃ弱いとかで、『見習い』でもこれを倒せないなら冒険者辞めろと即時勧告されるような魔物だそう。なので非常食二本は多すぎる、せいぜい一本だと。

 そして、山クラゲの発生は密集して大量発生する傾向があるから一匹見つければ一時間で百匹は近辺ウロウロするだけで遭遇出来るんだって。だからバケツ一杯の魔石なんて一日で集められると。なので今まで価値のなかった山クラゲなのでバケツ三杯なら十リクル出してもいいかな、くらいだと。

 そして。

 この内容で別報酬は絶対にダメだって。

 そうしてしまうと他の低価格素材の採取依頼の価格破壊が起こってしまう可能性があるから。捨てる素材を買い取る為に非常食と別報酬なんて付けたら他の素材の価格をあげないと誰もやらなくなってしまうそう。


 でも安すぎない? って思うでしょ。

「そもそも『見習い』は武具すら持っていない子供でも登録出来るランクだ、この時期に冒険者の基礎を習得する意味がある。お金を稼ぐというより、冒険者として最低限の生き延びるための知恵を付ける期間だ、この時期に簡単に金が手に入ったらもっと稼げるだろうとすぐに無茶な依頼に手を出して死ぬことになる」


 ……なるほど。

「『駆け出し』もそう変わらない。『挑戦者』との隔たりは実は大きくて、『駆け出し』は地道に正確に依頼をこなすことに慣れる訓練の意味がある。『見習い』で基本的な知識を得たり野宿や持ち物の手入れを実践で覚える期間、『駆け出し』で依頼をこなせるようになりギルドとの信頼構築と人間関係の拡大をしてそれを活用していく。これを手抜きして力任せで『挑戦者』になった者の大半がトラブルを起こしたり依頼の失敗を重ねる。その率がとにかく高い。だから中級への昇格は難しいんだ」


 難しい世界だよねぇ。

「今回の素材は弱い魔物、私なら非常食は付けない。だが、確実に集めるため、そして試験的であるため、その二つがあるから好条件だということを全面に推して依頼することで周りは文句を言わないだろう。特殊依頼という申請ができるからそうした方がいい。先のことを考えると……報酬や条件の見直しは必須だ、せいぜい数回が限度、あとは普通の依頼でいい」

「なんか、初級に厳しくない?」

「厳しいな、当然。冒険者は死と隣合わせだ、下積みが長く苦労が多くても、それを耐えて乗り越えなければ、生き延びる確率は低くなる。誰でもなれるからこそ最初の制限をかけてふるい落とす必要があるんだ、命の尊さを自覚できない、自分を管理出来ない人間に冒険者になられてもギルドだってその始末に迷惑なだけだろう」


 なるほどねぇ、と納得。

 なので、条件のことはグレイに任せることにした。

 ついでに、『アシッドウッド』の樹液を一回だけ、そして黒かじり貝様、色付きスライム様も『捕獲依頼』することに。なかなか手に入らないから!!

「色付きスライム様と黒かじり貝様は多少高くてもいいからね!! 捕獲優先でね!!」

「はいはい」

 冒険者さんたちがどう反応するか様子をみますかね。










 なんてのんびり構えてみたんだけど。

「初めましてジュリです」

「俺はエンザ、よろしくな」

 侯爵家が遠出する際に護衛をお願いする冒険者パーティーさんの一つと何故か四日後に会うことに。

 ワイルド系イケメンであるエンザさんをリーダーとする冒険者パーティーは五人組で全員中級の『熟練者』。あと少しの依頼や魔物討伐の実績を積めばパーティーで上級の試験が受けられるというめっちゃ実力のある人たち。

 で、なぜ私がその人と会っているかというと。


 なんと、あの山クラゲの魔石はこのエンザさんパーティーの女性剣士さんが提案したものなんだって。『色は綺麗じゃない? 使えないかしら?』と。今度貴族からの招待で夜会にいく護衛依頼でちょうど侯爵家でエイジェリン様たちと打ち合わせに来ていたエンザさんにグレイが『ジュリが興味を持っている。試験的に依頼をすることになった』って伝えたら。

 こんなことに。

 こんなこととは。

「ギルドを通さず、俺を保証人にしてオレが面倒見てる若いやつらに直接依頼してくれねぇか。若いやつらの身元も保証するから」

 ってことでした。

 私としては、はて? そんなこと出来るの? と思ったわけ。だって冒険者はギルドに登録していて、管理は全てギルド。そういうのってまずくない? って。でもこれがそうでもないらしい。

「中級の、『熟練者』になると俺のように直接ギルドを通さず依頼を受けられる資格が与えられる。それと同時に、初級の指導も受け持つ資格も与えられるんだ、ギルドに通ってわざわざ金を払って基礎を習う必要もないし実践方式で色々学ぶこともできる、筆記試験が必要になってくる『挑戦者』への確実かつ安全な道筋も経験からアドバイスしてやれるんだよ」

「そうなんですね、それ確かに効率的ですよね。格上の冒険者を見ながら実践出来るし、助言も貰えたら覚える速さは違うでしょうね」

「そう、そうなんだよ。そこでだ、ジュリさんが依頼したいっていう内容、全部俺のパーティーに依頼してくれねぇかな」

「……えーっと、上級にまもなく昇格する人が受けるような依頼じゃないですけど? 本当に安いですよ、報酬」

「ジュリ、エンザの下には冒険者になりたいと志願してくる若者が多いんだ、今も十人近く面倒を見ている。特殊な依頼をどうこなすか教えるいい機会なんだよ」


 面倒見のよいエンザさん、そしてそんな彼をリーダーとして慕う仲間たち。当然評判は良いわけで。受けた依頼は責任もって全うするその信頼の高さは侯爵家が必ず護衛に指名依頼することからもよくわかる。

 そういう評判は、冒険者を目指す若者なら情報を集める上で耳にするだろう。

 ギルドはある程度規模大きい町や地区じゃないとないので、地方の若者ならギルドで基礎を学ぶのも大変。だから冒険者パーティーに弟子入りして雑用を受けもちつつ基本を学ぶ人は多いみたい。

 今、エンザさんの所に一組、昇格したらパーティーを組みたいという四人の若者と、個人で基礎を学びたいと頼ってきた人たちが雑用を受け持って色々勉強中なのだとか。

 しかし、まもなく上級になれるし信頼の厚い人気のエンザさんパーティー。そうそう彼らの為だけに時間をさいて指導するわけにもいかない。でもだからといって危険な討伐の経験なし、マナーやしきたりも身に付いていない、そんな彼らを失敗の許されないような依頼にまでいちいち連れて歩くわけにもいかない。

 そういう悩みもあるのかとちょっと勉強になりました。


 なので私に相談してきたわけで。

「簡単なものでも依頼は依頼、ちゃんと責任もって請け負うことや、弱くても魔物にはそれぞれ特性があるだろ? その危険性を教えることも出来るし、素材の扱いや廃棄する部位の処理の仕方もその場で経験出来る。素材採取依頼は勉強になることが多いんだよ、いずれ成長して個人依頼を受けられるようになったときのギルドへの納品や各種手続きの勉強も出来るしな。ただ、安いし日数もどれくらいかかるか分からない分受けるのに躊躇うことが多いことは聞いてるか?」

「ええ、事前に用意しておくべきものに初級はお金をかけられないっていう根本的な問題ですよね」

「そう。だから俺に依頼してくれねぇか。今回責任もってジュリさんの欲しいものを必要数俺のパーティーで必ず確保する。その代わり実際の討伐と採取は若いやつらにやらせることで勉強させる分の日数を長めに貰いたいのと、足りない分は俺らが後日用意するから二回に分けての納品にさせてもらいたい」

「え、私は全然それで問題ないです。むしろ決まった量を必ず入れて貰えるのと二回に分けてくださると置き場の確保とか素材の状態確認に時間がもらえるので助かります。というか、本当に価格そのままでいいんですかね? 確実にこなして下さるなら今回は特別にかなり色を付けてもいいんですが」

 と、言ったらですね。

 エンザさんが妙な顔をしまして、グレイが片眉あげて。


「え? なんです?」

「えー、っと、その色の部分、グレイセル様からも言われたんだけどな、その、な、実は色を付けるんじゃなく、ちょっとしたお願いが」

「うぅん?」

 あ、へんな声でた。

 いや、だって大柄な強面の男性がモジモジしてるというか、照れているというか。ちょっと気持ちわる……ごほごほ、面白いんだもん。

「店を、見たいらしい」

「へ? 店って、《ハンドメイド・ジュリ》?」

「そう」

 グレイは呆れた顔して頷いたけど、なんで?

「エンザたちは男三人、女二人のパーティーで、実は女二人はすでに店に何度か来ているらしい」

「えっ?! そうなの?!」

「ああ。あまりにも自慢されるし三人も奥さんや恋人にせがまれて、買いに行きたいそうだ」

「……普通に来店してくれて構わないですけど?」

 きょとんとしながら彼に視線をむけると、エンザさんが顔を真っ赤にしたからちょっとビビった。

「恥ずかしいそうだ」

「うん?」

「あのキラキラした、いい匂いのする店に入るのがどうしても躊躇うんだそうだ」


 あー……。

 なるほど。

 ちょっと考える。


「じゃあ、色をつける代わりに……日時は指定させてもらいますが夜中に特別にエンザさんパーティーの為に貸し切りでお店開きますよ」

「なに! 本当か!!」

 大柄なエンザさんが身をのりだして来た。迫力あるー。

「はい、そんなことで良ければ。……て、もしかして、男性はそういう人多いんですかね? うちのお店男性も結構来るので全然気にしたことなかったんですけど」

「多い、多いぞ。まして俺のように体格のいい男や厳つい男は特に。それに今までああいう店はなかった。入るのにはかなり勇気がいる」


 おっと、意外なところでお金の匂いがしてきたぞぉ (笑)。



ブクマ&評価ありがとうございます。

そして誤字報告もありがとうございます。気をつけているつもりでも、結構間違っているなぁとしみじみ実感しています。

読者様に助けられつつの執筆になってしまっていますがこれからもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
今時はもうラ〇ダーでもスイーツ男子的なアレとかだったりしますが、二枚目の若者はともかくおじさんだとスイパラは抵抗感がある人と気にしない人に分かれるみたいですね。上司とその知人がそんな話してました。
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