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『ハンドメイド・ジュリ』は今日も大変賑やかです 〜元OLはものづくりで異世界を生き延びます!〜  作者: 斎藤 はるき


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ホワイトデー・スペシャル ◇ハルトはサプライズが好き?◇

イベント物の単話です。緩いお話、本編とは繋がっていないこと、この二つをご了承ください。


本日は二話更新しています。先に本編を更新済みです、ご注意ください。



そしてハルトの彼女、初登場回です。

 ホワイトデー。

 男にとっては億劫なイベント。と思ってる奴は多いと思う。

 貰ったチョコより高いものを返さないと後で何を言われるか分かったものじゃない。元の世界で、中学時代に明らかに義理のチョコだってのを貰って、それに対してキャンディのホワイトデー用にラッピングされたのを返したら『あ、うん、ありがとう』って微妙な顔して受け取ったクラスの女子の顔が忘れられない。あれは一体何だった? 後で家族に聞けば『あんたのこと好きだったんじゃないの?』とか言われたけど、それはない。だって俺の友達が全く同じものをもらってたから。

 さらにその後、もう少し高いのくれると思った、ってことなんだろうなぁと結論に至ったわけだけど。


 彼女でもないのに、なんで高いものでお返しをしなければならないんだよ? 自分で買えよ。


 と、言ったらクラスの女子に袋叩きにされるのが確実だから言わなかったよ。












「ああ、たまにいるよね、お返しは高いもの貰うのが当たり前って子。うちの学校にもいたよ、お返しの品評会してる子がいて、その子のクラスは皆ドン引きしてた」

「怖いよ、品評会って」

「いやぁ、いろんな子がいるからねぇ。手作りの微妙なクッキーを配った子が『お返し少なかったぁ』って残念がってたし、逆に徳用袋のお菓子をばらまいた子が同じ金額分のうま○棒を貰ってビニル袋パンパンにして『量がハンパない!』って笑ってたりしたし」

 ジュリの情報で、色んな女がいると分かって一安心したものの。


 この世界で初のバレンタインをもらったわけで。

 しかも彼女から。

 美味しいチョコレートケーキを (既製品だけども)。

『大好きだよ』の一言付きで。


 お返しはちゃんとしたい。

 義理じゃないし!!

 本命だし!

 驚かせたいね!


「……へえ、ハルトってもしかしてサプライズ好き?」


 ん? ジュリ、なんだその微妙な目付きは。文句あるか?!


「いや、ほら、十人十色なわけよ。この世界も。サプライズ好きな彼女ならいいけど、私みたいな性格は、サプライズされても困ると思う場合もあるから。その辺大丈夫? 話聞くかぎり性格良さげな彼女みたいだし、手紙のやり取りさせてもらってるからこの人イイ人だなぁって感じてはいるけど、その辺は確認すべきじゃない? しかもホワイトデーの知識が今までなかったんだからその気持ちが伝わらない可能性があるよ」


 ……。

 マジか。


「私か? ジュリに聞いたよ、何がいいか」

「お前こそサプライズ好きそうだけど」

「バレンタイン自体がこの世界になかったんだし、当然ホワイトデーについてもなにも知識がないわけだ、だから聞くのが間違いないしジュリはむしろそれを喜んでいたよ『何にしようかな!』って」

「……で、何をお返しするんだよ?」

「ご飯」

「あ?」

「手当たり次第に美味しいものを食べたいというから、クノーマス家で食事会をすることにした。ジュリが『ビュッフェ』と言ってたかな? それがしたいと。似たようなことは立食パーティーや母の茶会でやっているからそれをジュリのためにやろうと思っている」

「物じゃないのかよ?!」

「欲しいと言うものをあげたいじゃないか? そしてこちらが選んで『微妙』と判断されるのは忍びない」

「う……」

「宝石でも良かったんだ、ジュリの話だとそういうお返しも多かったようだし。ただ、ジュリはピアス以外はほとんど身につけないし、私が選ぶようなものは気が引けると言っていたから止めたんだよ」

「……そっか」

「お前は? 意気揚々と勢いで宝石の一つでも買いそうな気がするが?」

「うっ」

「買ったのか?」

「まだ」

「……本人に聞いたらどうだ?」

「でもさぁ! それじゃあさぁ! サプライズじゃないだろぉ?! びっくりさせたいじゃん」

「ああ、なるほど」

「は?」

「ジュリが言っていたよ、『ハルトはサプライズがしたいみたいだけど、失敗しそうな気がする』って。私も今のお前をみて確信した」

 グレイが真顔でいい放った。

「失敗する、その勢いは。止めておけ初回の失敗は後に響くぞ?」


 ダメ出しされた。しかも異世界人に。あ、今は俺もこの世界の人間だった。











 悩んだよ。まじで悩んだよ。

 言われて見れば、俺の彼女もそんなに高い宝石は身につけない。前に贈ったペンダントも結構な値段したせいか、普段使いというわけじゃなく俺と出掛けるときにしか使わない。

 となると、宝石、アクセサリーは無しだ。

 ……じゃあ、なんだよ?!

 花か?!

 この世界だとプレゼントとして当たり前過ぎる花か?!

 いや、クッキーはどうだ?!

 ……だめだ、捻りがない。

 キャンディ?

 嫌な思い出があるから却下。


 ……あ。あるじゃん。いいのが。ものすごくいいのが。










 俺のサプライズ。

 それは彼女を 《ハンドメイド・ジュリ》に連れて行くことだ!!

「初めまして! ジュリです!」

「初めまして! ルフィナです!」

「なんか初めて会った気がしない!」

「ホントにそう!」

 テンションMAXの二人をニコニコ眺めるのは俺とグレイ。

「ようやく連れてきたな、ジュリがよく会いたいと言っていたんだよ」

「地元じゃ人気のお針子だからさ、タイミング合わなくて。ルフィナも来たがってたんだ、ちょうど良かったよ」

 いやぁ、我ながらよく思い付いた。と、グレイに言ったら

「一番最初に思い付かないか? マイケルはすぐにジュリに聞いていたぞ? ホワイトデーの頃に出る新作はないか、と」

「正直に言おう、テンパってた」

「だろうな」

 グレイがすげえ呆れた顔をした。腹立つ。


「わぁぁぁ、どうしよう。何にしよう」

 彼女、ルフィナが可愛い……。

 ああ、可愛い。

 俺の彼女まじで可愛い。

「んー、これ! これにするわ!」


 ん?


「え? それ?」

「え? だめ?」

 ルフィナが手にしたのはシュシュ三個。

 え? ネックレスは? ブレスレットは? イヤリングは? ハーバリウムにコースター、ブローチ、ベルトだってあるのに?!

「この三つ可愛い、髪を結んでから付けるんでしょ? レースも付いててお洒落!」

 いやいやいや、シュシュなんてルフィナ作る気になれば作れるじゃん?! 得意分野じゃん?! って言ったらさぁ。

「……だって、他のは一通り全部ハルトが買ってくれたじゃない」

「あ」


「ハルトってバカなの?」

 ジュリ、頼むから物凄い真顔で言わないでくれ。

「連れてきたら持ってないものに目がいく可能性を考えなかったの?」

「でもさ、でもさ! こういう所に連れてきたらアクセサリー買うと思うだろ?!」

「あんたねぇ、その概念が元々この世界になかったこと忘れたの?」

「あ」

「やっぱりバカだわ」

 撃沈。


 あのあと、他には?! って聞いたんだけど。

「それよりジュリと話がしたい」

 って、俺は放置。

 なんでだよ。


「私の持ってる布のサンプル貸すよ、使えそうな柄いくつかあるから」

「助かるぅ、自分でアイデア出すのは限界があるから」

「シュシュの他に、硬貨袋に向いてる厚手の物があるといいかなぁ? 」

「厚手……それならブックバンドにも使えるよね?」

「うん、使えると思うよ。現物見せてもらっていい? 厚みと手触りとか参考にしたいから」

「後で見本貸すよ、あ、糸も綺麗な色とか変わった素材のものがあればおしえて」

「いいよ、糸のサンプルも適当に見繕って持ってくるね」

 気づけば二人で会話に華を咲かせるというより仕事モードになってて。

 俺、本当に放置されてる。寂しい。

「お前のお返しは成功か? 失敗か?」

「……わからん」


「え? お返しだったの?!」

 ルフィナがめっちゃびっくりしてる。

「ちょっと待って? ハルト、ここに連れてくる時にちゃんと言ったの? ホワイトデーのお返しだよって。この世界にバレンタインとホワイトデーはないから一から十までちゃんと説明が必要なこと分かってたよね?」


 ……。

 ………。

 言ってない。だってサプライズ。


「バカじゃないの?! 真性のバカがここにいたわ!!」

 ジュリにキレられた。

「サプライズって理解してもらってない時点で失敗だからね? いくら私とルフィナが手紙でやり取りしてても分からないことは分からないんだからね? それよりもっと根本的なこと言うわね、ハルトはサプライズ向いてない」


 来年。

 来年こそは!!

 サプライズで彼女を喜ばせてみせる!!











「失敗する未来しか想像出来ないな」

 うるさいよ、グレイ。


昔、サプライズが大失敗に終わった知人がいました。それをふと思いだし書いた話です。


オチもなくただただハルトがバカだと連呼されるお話になってしまいました。






イベント話はこんな感じで今後も緩めのものばかりになると思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  つい先日の事ですが、海外のプロポーズ動画を見ました。記念撮影をするカップル、おもむろに長身の女性が跪いて指輪のケースを差し出し、驚く男性。そしてその男性も跪いて指輪のケースを差し出したの…
[一言] サプライズが好きな女性って、あんまり聞かないし身近にいません。大抵はする方の独りよがりで、される方のいたたまれなさに気がつかないんですよね。 喜ぶと思う根拠は、本当にどこからやって来るんでし…
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