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『ハンドメイド・ジュリ』は今日も大変賑やかです 〜元OLはものづくりで異世界を生き延びます!〜  作者: 斎藤 はるき


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4 * ブルさんたちの骨

本日一話更新です。

 



 ギルドのイラッとする要求を? 退けてから数日して。魔法付与がなんだ! 花や金属パーツ入れると付与できない?! しらんわそんなの!! と、怒り心頭だった私もすでに平常運転。いちいち気にしていられない。やることがたくさんあるからね。


 ところで。

 相変わらず忙しいんですが、私は食べることが好きでこちらの世界でも美味しいと聞くと進んでそれが置いてある店に行ったりして。特に肉質といい旨味といい、和牛そっくりなブラックホーンブルを筆頭にブル系のお肉には目がない。


「おおっ! 久しぶりの和牛!!」

 ハルトがマイケルと遊びに来てくれた。ブラックホーンブルの肉を持って。そして最近私たちが和牛と連呼するせいでグレイや周囲の人たちも『わぎゅう』って言うようになってしまったのには苦笑。

 いやぁ、美味しいのよ。ホントに。

 しかもこのクノーマス領にも生息する魔物だから比較的安価で手に入る。日本だと百グラムが平気で千円越えるようなものが、こちらは外国産の特価肉並みに安い感覚で買える時がある。

 ただ、ククマット地区では発生しない上に少し離れたところにあるダンジョンに入らないと入手出来ないんだよねぇ。


 なので、この周辺だと入手は若干不安定。肉屋に行っても買えない日が続いたりする。でもハルトが時々こうして持ってきてくれるからありがたい。この男が和牛ことブル系の肉好きなので。

 フィンとライアスも好きだからね、喜んでるよ。

 そしてこのブルさん、牙があるんだけどその牙は武具の素材になるとかで売れるんだよね。冒険者の必需品である小型ナイフになるとかで、錆びない軽いで重宝されるとか。

 でも骨はそういうのに向かなくて、出汁を取ったらおわり。この出汁が美味しいんだまた。牛骨スープですよ。


 そしてこの骨、実は乾燥させると脱臭効果があるからと、みんなこの骨取っておく。焼いて乾燥させてそして家庭ごみの生ゴミに一緒にポイって入れておく。そうすると臭わないわけよ。便利ね。

 で、基本我が家はフィンがご飯を用意する。

 え、私? 出来なくはないけど元々料理はレベル低い。しかもこの異世界に来て見たことない食材多いから、さらにレベルは低くなり。

 なので簡単なもの以外は人任せです。おいしく作れる人につくってもらうべきでしょ。


 料理をしない。だからその骨の脱臭力の実感ってあまりなかったし興味も惹かれることはなかったよ。だって単なる白い骨だしね。


 でも、ハルトが久しぶりにブル系の肉を持ってきて、大発見をすることに。


「はー!! 食った!!」

「やっぱり美味しいな、ブラックホーンの肉は」

 ハルトとマイケルも一緒に今日は肉三昧の昼御飯。贅沢にこちらのバーベキューにあたる外の竈で好きな肉を串に刺して好きな味付けでかぶりつく食べ方があるからそれで食べた。

 その時に肉を丁寧に削いで骨をいつものようにライアスが釜戸に豪快に突っ込んだ。

 大きすぎる骨は出汁をとるのに砕くか大きな鍋が必要だから出汁を取らずにそのまま脱臭材にするため火で焼いて乾燥させてしまう。


「しかし便利よね。確かに生ゴミの臭いで気になったことないもん」

 私の言葉にマイケルが笑う。

「元の世界ではここまで脱臭効果のあるものなんてなかったからね。それが魔物の骨で出来るから不思議だよ」

 ちなみにこの焼いた骨、粘土にならないかな? と試しに粉にして水を加えてみたけど、残念ながらそううまい話はない。そもそも粉にする手間が大変すぎて諦めたわ。


 後片付けを皆で済ませて、フィンがお茶を入れてくれることになって、私は野菜のくずを生ゴミを捨てる場所へ。

 家のそばに穴を掘ってそこに捨てて、ある程度溜まるとそこに土を被せて自然界へ返す。

「ん?」

 本当に臭いがしないな、なんて感心して、蓋がわりの板を退けてみると。

「……乾燥してる?」

 久しぶりに野菜くずを捨てに来たけど、そういえばこんなに臭いがしないのって不思議よね、と思った。

 そして、よくみると乾燥してる。

 土に穴を掘って、そしてそこに捨ててるのよ、湿ってるものじゃない? 土は普通の土なのよ? なのに、昨日捨てたであろう野菜が見るからに乾燥してる。しかも、骨が触れてる部分の土も周囲より色が薄くなっていて乾燥しているようにも見える。

「あれ? もしかして、この骨で乾燥してる?」

 骨はまとめて焼いておくから毎日捨てるときにいっしょに投入してて、結構な数がこの中にもある。よくみると、うん、確かにこれは乾燥してないか?

「ええ? ちょっとすごいんじゃない?」

「おい、なに生ゴミ見つめて楽しそうにしてんだよ?」

 ハルトとマイケルがライアスに頼まれたのかな? 大量の薪を小屋から家の台所の裏庭まで運んでて、どうやらずっと生ゴミを見てる私が気になったらしい。

「ああ、ホントに乾燥してるね。これは僕も知らなかったな」

「そうだよね、やっぱり乾燥してるよねこれ」

「なぁ、昨日入れてこうなんだろ? 乾燥速度めっちゃスゴくね?」

 私の隣で、ハルトとマイケルも今知ったようで感心してる。


 ……乾燥。


「おおっ?!」

 へんな声、出たよ。歓喜の声。

「乾燥剤!!」











 ここに来て、身近なものから非常に便利なものを発見です。

「乾燥? ああ、そういえば乾燥するかもな」

 ってライアスは全然その重要さをわかってない!!

 この世界では乾燥っていえば吊るしておく、風属性魔法で乾かす、それだけ。保存食材も乾いたら瓶に入れておくだけなの。

 まあ、そんなものか。魔法とかでなんとかなっちゃう世界だしね、と思いつつ私は一人歓喜。

「へえぇ、保存食に一緒に? それで日持ちがもっとするのかい?」

「たぶんね。乾燥させても水分含んだら保存期間短くなるでしょ、これいっしょに入れておけば今までよりちゃんと乾燥して日持ちするよ、きっと」

 フィンもなるほどと感心してる。

 おそらく、脱臭効果もあるけど、それよりもこの乾燥の速さが臭わせない要因じゃない? 生ゴミって、水分含んでると臭いやすいし。生ゴミ処理機、元の世界のおばあちゃん家にあったけど、あれって乾燥させるんだよね、それで水分奪うと臭いも減って量も減って便利だっておばあちゃんが愛用してた。


 これ、使える。


「なるほどねぇ!!」

 私は早速庭の花を摘んで、焼いて乾燥させ適度に砕いたブルの骨を敷き詰めた缶に均等に間隔をあけて並べる。そして蓋をして、ひたすら待つ。

 ドライフラワーって徐々にその水分奪うからどうしても色の変色が起こる。この世界の花はびっくりするくらいドライにしても発色いいけど、それでも変色は避けられないわけね。

 前にドライフラワーを発色よくする方法として粒状のシリカに埋めちゃうといいって知人に聞いて、友だちの結婚式でもらった生花が綺麗だったから試してみてかなりいい感じにドライフラワーができたのを思い出した。

 でも、このブルの骨。

 なんか、乾燥材より優れものの気配がするわよ。


 だって、昨日一緒に捨てた生ゴミがほぼ乾燥してるんだよ? 周囲の土に含まれる水分の影響もあるはずなのにそれを感じさせない乾燥力があるんじゃないかと。


 と、期待を込めつつ、我慢できずに二時間後。

 開けてみた。

 乾燥してた!!

 乾燥させた花独特の細かいシワが寄った、水分奪って僅かに縮んだ花が!!


 なんだこの乾燥の速さ。

 すごい速さで水分奪ってるよ。

 色の変色も普通に乾燥させるより抑えられてるよぉ!



 これは作品に使うドライフラワーも押し花も質が上がる!!


「くふっくふふふふふ」

 この骨。ブル様。大きいままでも、粉にしても、使い道はありますねぇ!!!










『焼いたブル系骨買い取りする。大量の場合のみ要相談』

 お店の前にこの看板を置くとお店の前で警備をしてくれている若い自警団の二人が首を傾げた。

「これ、買い取るようなものじゃないと思うんっすけど」

「本気っすか? ジュリさん」

「本気! 乾燥剤だよ乾燥剤!! 非常に優秀な素材なんだから」

「「……はぁ」」

 ってものすっっっっごい疑問符飛びまくりの顔された。

 乾燥剤の大切さ分かんないの?!

 ……ごめん、わかんないか。使わないもんね。

「これ、オレが持ってきてもオッケーすか?」

「おう、持ってきなさい、二キロ三リクルで買うから」

「おっ?! まじで?! じゃあ俺も!!」

「ただしちゃんと焼いて乾燥したやつね。すぐ使える状態であることが条件よ、ブル系ならなんでもいいよ」

「そんなんでいいならいつでも持ってくるっす!」

「ブルの骨なんて皆家にあるしな」

「家で使う分まで持ってこないでよ?」

 なんだか二人は『小銭稼ぎ』したいらしい。二人とも彼女いるんだよね、うちのお店の格安パーツプレゼントしたら凄い喜ばれたって言ってた。今度は金貯めてちゃんとチェーンの付いた擬似レジンのネックレスとかイヤリングをセットで買いたいって言ってたなぁ。いいぞ、頑張れ若者よ。


 武具、日用品にならない素材の買い取り。


 これもこの領地で、スライム様やかじり貝様のように今後はもっと当たり前に売買されるようになれば皆が収入を得るチャンスになるよね。

 この事も後でグレイと侯爵様たちに相談かな。

 その前にそれだけの素材を扱える人が増えないとダメだけどね!! 随時 《ハンドメイド・ジュリ》の従業員は募集することは変わらない。


「ちなみに、ブル様の内臓って食べたことがないんだけど食べれないの?」

 私の質問にハルトが乾いた笑い。

「俺もこの世界に来た当初、肉が食えるなら内臓もいけるだろ、って思ったんだけどな。これがまったく食えない」

「そんなに美味しくないの?」

「いや、腹下す。どんなに加熱しても」

「あ、それダメなやつだ」

「そう、ダメなやつ」

「ホルモン焼き食べたいなぁなんてこの前思ったから」

「わかる。俺もそう思ったよ、でも諦めた」


 どんなに優秀な素材が取れる魔物でもやっぱり駄目なものは駄目、という部分もあるらしい。勉強になった。


度々登場する魔物食材のブル様ですが、この骨のお話しは当初違うものでした。

牛骨灰を配合して作られる磁器メーカーがあるのを知っていたので、それをヒントに粘土素材にする予定でしたが、今後出てくる予定の魔物素材の使い道を変更することになりそうだったのでこちらを変えた経緯があります。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  乾燥剤、冒険者や軍人さんのブーツの中敷きや野菜チップを作るのに便利そうだなと思いました。  その昔、可愛い中敷きを初めて見た時の沸き立つ気持ちを忘れられません。  湿気のこもりがちな部…
[一言] 焼く(乾燥させる)とものっそい乾燥剤になるって事は元々めっちゃ水分を含んでたって事なんかしら…… だとすると性質次第だけど粉末を土壌の保水材とかにも使えそうな予感?
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